- 著者
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神崎 光子
藤原 千惠子
- 出版者
- 一般社団法人 日本女性心身医学会
- 雑誌
- 女性心身医学
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.2, pp.193-206, 2015
【目的】本研究は,初めて母親となる妊婦の抑うつ状態と育児自己効力感に家族機能が及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.【方法】初産婦502名を対象に妊娠中期,妊娠後期において,家族機能尺度(FFS),抑うつ尺度(SDS),育児自己効力感尺度(PSE)および属性(年齢,家族形態,収入満足度,夫のサポートへの満足度,産褥期の夫以外のサポートの有無,母体の産科的異常の有無,胎児異常の有無)からなる自記式質問紙を用いて横断的調査を行った.有効回答が得られた妊娠中期群151名,妊娠末期群159名,計310名を分析の対象とした.【結果】抑うつ状態が疑われる妊婦の割合は,妊娠中期で47.7%,妊娠後期で48.1%であった.パス解析の結果,育児自己効力感へは,「認知的抑うつ症状」から有意な負のパスが,また家族の「情緒的絆」,「外部との関係」からは有意な正のパスが見られた.また「認知的抑うつ症状」へは,家族の「情緒的絆」「役割と責任」「外部との関係」から有意な負のパスが見られ,「コミュニケーション」は,「情緒的絆」「役割と責任」「外部との関係」に有意な正のパスを出していた.このモデルの適合度は,CMIN/DF=.989,NFI=.989,CFI=1.000,AIC=76.876,RMSEA=.000であった.【考察】本研究の結果から,妊娠期において問題解決のための効果的な「コミュニケーション」を強化し,「役割と責任」を明確化することによって,「情緒的絆」と「外部との関係」は高まり,「認知的抑うつ症状」の軽減と育児自己効力感の促進につながることが明らかとなった.これらの結果は,妊娠早期から家族機能を高めることによって,家族がシステムとして初産婦の心理社会的変化に応じて対処することが可能となり,それによって初産婦の妊娠期の抑うつの予防や育児自己効力感の促進につながることを示唆するものと考えられた.