- 著者
-
藤原 奈津美
- 出版者
- 徳島大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
高齢者や有病者などの易感染性宿主は、口腔細菌による誤嚥性肺炎の発症リスクが高く重症化しやすい。さらに口腔環境が不衛生になりやすく、日和見感染菌の検出率も高い。緑膿菌の病原因子の一つである、ピオシアニンは、誤嚥性肺炎の病態確立に極めて重要な病原因子であることから、「不衛生な口腔環境下において口腔細菌がピオシアニン産生を促進させ、誤嚥性肺炎の重篤化をもたらす」可能性が考えられる。本年度は、口腔細菌の情報伝達物質や分泌蛋白を含む培養上清を緑膿菌に作用させて、非接触系でのピオシアニン産生促進効果について解析した。Streptococcus mutansなどの口腔レンサ球菌、Porphyromonas gingivalis, Fusobacterum nucleatumなどの歯周病原因菌、日和見感染の原因菌となる、Candida albicans, Staphylococcus aureusなどの口腔細菌の培養上清を添加した条件下で緑膿菌を培養し、ピオシアニンの産生量を測定した。その結果、F. nucleatumの培養上清を添加するとピオシアニン産生量が増加することを確認した。ピオシアニンとは異なる病原因子のピオベルジンにおいても同様の条件下で産生量を検討したが、産生促進の影響は示されなかった。F. nucleatumに着目し、F. nucleatum subspeciesや臨床分離株を用いてピオシアニン産生量の違いを確認した。ピオシアニン産生促進効果を発揮する物質をスクリーニングするために、F. nucleatum培養上清を熱処理しピオシアニン産生量を測定したところ、産生量が減少した。よって、ピオシアニン産生を促進する物質は、F. nucleatumの代謝産物中の、熱に対して不安定なタンパクである可能性が示された。