著者
佐原 久美子 福井 誠 坂本 治美 土井 登紀子 吉岡 昌美 岡本 好史 松本 侯 松山 美和 河野 文昭 日野出 大輔
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.106-114, 2022 (Released:2022-05-15)
参考文献数
25

本研究の目的は,口腔状態と後期高齢者の要介護状態や死亡など健康への悪影響の発生との関連を調べることである.対象者295名は,後期高齢者歯科健診プログラムに参加した75歳の徳島市の住民である.各対象者から得られたアンケート調査と歯科健診結果をベースラインデータとして使用し,さらに要介護状態または死亡(要介護等)の発生状況を縦断的分析のアウトカムとして口腔状態との関連性について調べた. ベースライン時で要介護状態であった20名を除いて,275名の対象者を5年間追跡した結果,18.9%にその後の要介護等発生が認められた.Kaplan-Meier分析により「固いものが食べにくくなった」「中程度/多量のプラーク・食渣の沈着」「現在歯数20歯未満」の項目該当者は非該当者と比較して,要介護等の累積発生率が有意に増加した.Cox比例ハザード分析により「固いものが食べにくくなった」「中程度/多量のプラーク・食渣の沈着」「義歯等の使用ができていない」「CPI = 2(深い歯周ポケット)」は,要介護等発生と有意に関連していることが明らかとなった. これらの結果は,「固いものが食べにくくなった」というオーラルフレイルに関連する症状が,後期高齢者の要介護等発生の予測因子となりうることを示唆している.また,口腔衛生状態不良,歯周状態の不良および義歯不使用は,高齢者の健康への悪影響と関連がある.
著者
坂本 治美 日野出 大輔 武川 香織 真杉 幸江 高橋 侑子 十川 悠香 森山 聡美 土井 登紀子 中江 弘美 横山 正明 玉谷 香奈子 吉岡 昌美 河野 文昭
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.322-327, 2016 (Released:2016-06-10)
参考文献数
25

近年,妊娠期の歯周病予防は周産期の重要な課題とされているが,日本における歯周病と低体重児出産や早産との関連性を示す報告は少ない.本研究の目的は観察研究により妊娠期の歯周状態と低体重児出産との関連性について調査することである.徳島大学病院の妊婦歯科健康診査受診者190名のうち,年齢バイアスの考慮から対象年齢を25~34歳とし,出産時の状況が確認できない者,多胎妊娠および喫煙中の者を除外した85名について,歯周状態と妊娠期の生活習慣や口腔保健に関する知識および低体重児出産との関連性について分析を行った.その結果,口腔内に気になる症状があると答えた者は61名(71.8%),CPI=3(4 mm以上の歯周ポケットを有する)の者は29名(34.1%),CPI=4の者は0名であった.また,対象者をCPI=3の群と,CPI=0, 1, 2の群とに分けてχ2 検定を行った結果,低体重児出産の項目,およびアンケート調査では,「歯周病に関する知識」,「食べ物の好みの変化」の項目について有意な関連性が認められた.さらに,ロジスティック回帰分析の結果,低体重児出産との有意な関連項目としてCPI=3(OR=6.62,95%CI=1.32–33.36,p=0.02)および口腔内の気になる症状(OR=5.67,95%CI=1.17–27.49,p=0.03)が認められた.以上の結果より,わが国においても,妊婦の歯周状態が低体重児出産のリスクとして関連することが確認できた.本研究結果は,歯科医療従事者による妊婦への歯科保健指導の際の要点として重要であると考えられる.
著者
渋谷 莉加 岡澤 悠衣 日野出 大輔 土井 登紀子 中江 弘美 玉谷 香奈子 吉岡 昌美 米津 隆仁
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.475-480, 2016 (Released:2016-12-08)
参考文献数
11

本研究の目的は,徳島市内在住の幼児に対するフッ化物配合歯磨剤利用とその口腔保健行動を調査することである.3~6歳児の保護者を対象として2010年では140名,2013年では116名へアンケート調査を行った.歯磨剤を「使わない」幼児は2010年調査の27.9%と比較して,2013年調査では12.1%と低い割合となった.2013年調査では歯磨剤利用者におけるフッ化物配合歯磨剤の利用率は100%となり,2010年調査の値と比較して歯磨剤使用後の洗口回数は有意に減少した(p<0.05).以上のように,2010年と2013年調査の比較による幼児のフッ化物配合歯磨剤使用状況において好ましい変化が認められた.しかし,依然として多数回の洗口を行う幼児も多く存在するなどの課題も明らかとなった.
著者
吉岡 昌美 中江 弘美 篠原 千尋 十川 悠香 福井 誠 日野出 大輔 中野 雅徳
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.16-24, 2023-04-30 (Released:2023-09-10)
参考文献数
13

要介護高齢者の口腔機能低下やそれに伴う食形態の制限は,低栄養や免疫機能低下を通じて発熱や肺炎の発症リスクを上昇させると考えられる.本研究では,経口摂取が可能な施設入所要介護高齢者を対象に,「口腔ケア支援簡易版アセスメントシート」を用いた約1 年半のコホート調査を行い,その間の37.5℃以上の発熱とベースラインの口腔アセスメント結果との関連性について調べ,発熱発生に関連する要因を明らかにすることを目的とした.1 年間の発熱の有無が確定できた259 名を対象に分析した結果,1年間の発熱有無と主食形態,開口困難,舌の前突困難,飲み込みにくさ,口腔ケア自発性なし,開口保持困難,水分保持困難との間に有意な関連を認めた.さらに,観察期間を限定せずデータが得られた279 名を対象にこれらの項目と発熱発生との関連性について分析した結果,年齢,性別,BMI, 認知症自立度で調整しても開口困難,舌の前突困難,飲み込みにくさ,口腔ケア自発性なし,開口保持困難,水分保持困難との間に有意な関連性が認められた.また,年齢が高いほど,BMI が低いほど発熱リスクは高く,女性に比べて男性で発熱リスクが高いことも明らかとなった.以上のことから,開口,舌の前突,飲み込み,水分保持などに関する口腔機能の低下が,発熱リスクの予測因子となりうる可能性が示唆された.
著者
垣内 菜摘 湊 晶帆 岡澤 悠衣 大津 朱里 藤原 奈津美 日野出 大輔 伊賀 弘起
出版者
四国歯学会
雑誌
四国歯学会雑誌 (ISSN:09146091)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.49-53, 2014-06-30

We visited Helsinki Metropolia University of Applied Sciences from August 14th to 22nd as a short-term study abroad supported by Japan Student Services Organization (JASSO). We participated in the basic and clinical training of the oral hygiene course. Furthermore, we also visited the institution for elderly in Espoo and the orthopedic hospital in Helsinki. We reported the outline of the study abroad here.
著者
吉岡 昌美 本那 智昭 福井 誠 横山 正明 田部 慎一 玉谷 香奈子 横山 希実 増田 かなめ 日野出 大輔 中村 亮
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.552-558, 2005-10-30
参考文献数
15
被引用文献数
2

徳島県の山間部に位置するK村では, 平成5年度より村内の保育園, 幼稚園, 小中学校において週5回のフッ化物洗口と年度2回の歯科健康診断を実施している.本研究では, フッ化物洗口を開始してからの児童生徒のう蝕有病状況の経年的変化をまとめ, 特に, 小学校6年生での歯群別のう蝕有病状況について詳しく調べた.さらには, 小学校1年生での乳歯う蝕の状況, 歯の萌出状況と6年生での永久歯う蝕経験との間の関連性について調べた.以上の結果, フッ化物洗口開始後のう蝕有病状況の経年的変化において, 永久歯う蝕は小学校低学年で早期に減少傾向が現れ, 次いで高学年, 中学生へと移行していることがわかった.小学校6年生での歯群別のう蝕有病状況から, 第一大臼歯のう蝕有病率が大幅に抑制されたことが, 全体のう歯数低下につながっていることが示唆された.一方, フッ化物洗口開始後も小学校1年生での乳歯未処置う歯の本数や乳歯の現在歯数が小学校6年生でのDMFTと有意に関連することがわかった.このことは, 就学前からのフッ化物洗口は第一大臼歯のう蝕罹患を抑制するのに効果的なう蝕予防施策であるが, さらに永久歯う蝕の抑制効果を期待するためには, 乳歯う蝕を指標としたう蝕リスクの高い幼児への介入が必要であることが示唆された.
著者
吉岡 昌美 中村 亮 本那 智昭 福井 誠 横山 正明 田部 慎一 玉谷 香奈子 横山 希実 増田 かなめ 日野出 大輔
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.552-558, 2005
参考文献数
15
被引用文献数
2

徳島県の山間部に位置するK村では, 平成5年度より村内の保育園, 幼稚園, 小中学校において週5回のフッ化物洗口と年度2回の歯科健康診断を実施している.本研究では, フッ化物洗口を開始してからの児童生徒のう蝕有病状況の経年的変化をまとめ, 特に, 小学校6年生での歯群別のう蝕有病状況について詳しく調べた.さらには, 小学校1年生での乳歯う蝕の状況, 歯の萌出状況と6年生での永久歯う蝕経験との間の関連性について調べた.以上の結果, フッ化物洗口開始後のう蝕有病状況の経年的変化において, 永久歯う蝕は小学校低学年で早期に減少傾向が現れ, 次いで高学年, 中学生へと移行していることがわかった.小学校6年生での歯群別のう蝕有病状況から, 第一大臼歯のう蝕有病率が大幅に抑制されたことが, 全体のう歯数低下につながっていることが示唆された.一方, フッ化物洗口開始後も小学校1年生での乳歯未処置う歯の本数や乳歯の現在歯数が小学校6年生でのDMFTと有意に関連することがわかった.このことは, 就学前からのフッ化物洗口は第一大臼歯のう蝕罹患を抑制するのに効果的なう蝕予防施策であるが, さらに永久歯う蝕の抑制効果を期待するためには, 乳歯う蝕を指標としたう蝕リスクの高い幼児への介入が必要であることが示唆された.
著者
宮本 洋二 藤澤 健司 武知 正晃 桃田 幸弘 長山 勝 山内 英嗣 坂東 永一 日野出 大輔
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.436-445, 2002-12-31 (Released:2015-08-20)
参考文献数
43

To clarify the effects of clinical factors on the failure (early failure) of osseointegration establishment of titanium implants, we statistically carried out a clinical examination on 373 fixtures of Brånemark implants. Fifteen fixtures (4.0%) failed to establish osseointegration before the fitting of superstructures. Results are summarized as follows: 1.Age and sex did not affect early failure. 2.Although there was no significant difference in the rate of early failure between the maxilla and the mandible, the prognosis of the maxilla, in women, was poorer than that of the mandible. No difference among regions in the maxilla or mandible was detected. 3.Variations of diameters and kinds of fixtures did not affect early failure. 4.In the length of fixture, the prognosis of 10 mm or less of the fixtures was poor, and the prognosis of fixtures of 13 mm or less was poorer in the maxilla. 5.The initial stability of fixtures at installation was deeply relevant to early failure. 6.The healing period between fixture installation and abutment connection did not affect early failure. 7.There was no significant difference in the rate of early failure between smokers and non smokers.
著者
日野出 大輔 嶋田 順子 小原 英司 寺井 浩 山崎 都美恵 和田 明人 佐川 肇 佐藤 誠 中村 亮
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.631-640, 1988 (Released:2010-10-27)
参考文献数
20
被引用文献数
10 2

The factors influencing the caries prevalence of children of three years of age were investigated using multivariant analysis.The number of subjects were 543 who received the 3-year-old dental examination at Naruto Community Health Center in Tokushima from July to December in 1987. The caries-decisive factors examined were“Order of birth”, “Guardian”, “Kind of feeding”, “Nursing in bed”, “Frequency of between-meal eating”, “Place of between-meal eating”, “Amount of sweet snacks”, “Frequency of tooth brushing”and“Brushing by whom”and these factors were asked by questionnaire to mothers of children. Quantification types I and II were used as analytical methods. The former was applied to analyze the factors which had an influence on the dmft number, and the latter to analyze the factors which had an influence on the onset of dental caries.The results were summarized as follows.1. The factors strongly related to caries onset were“Place of between-meal eating”, “Amount of sweet snacks”and“Nursing in bed”, in order.2. The factors strongly related to the number of dmft were“Guardian”, “Kind of feeding”and“Nursing in bed”, in that order. In“Guardian”, the category grandparents seemed to be a cariespromoting factor, and nursery school seemed to be an inhibitory factor.3. A significant relationship between habitual tooth-brushing and caries onset or the number of dmft was not observed in this study.
著者
宮本 洋二 藤澤 健司 福田 雅幸 湯浅 哲也 長山 勝 山内 英嗣 河野 文昭 日野出 大輔
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.292-301, 2005-06-30 (Released:2014-11-15)
参考文献数
30

The purpose of this study was to determine whether clinical success can be achieved with immediate loading in the edentulous maxilla and mandible with Brånemark implants (Nobel Biocare, Goteborg, Sweden) at one year after placement of the implants. The study sample consisted of 18 patients who were edentulous or about to lose all remaining teeth. A total of 118 fixtures were placed in 7 maxillae and 12 mandibles, including one bimaxillary patient. Ninety seven of the 118 fixtures were immediately loaded and 21 fixtures were submerged. Five to 7 fixtures (mean of 5.9 fixtures) supported the prostheses in the maxilla and 4 or 5 fixtures (mean of 4.7 fixtures) in the mandible. All fixtures immediately loaded were placed in the incisor and premolar regions of both maxilla and mandible. The mean lengths of the fixtures in the maxillae and mandibles were 14.8±1.8 mm and,15.6±2.6 mm, respectively.All of 41 immediate loading fixtures in the maxillae showed a placement torque of more than 35 Ncm. Although 5 of 56 fixtures in the mandibles showed a placement torque of 30 Ncm, remaining fixtures showed more than 35 Ncm. Provisional implant-supported fixed prostheses were fabricated in a laboratory from an impression and were placed on the next day after surgery. After a 4-to 7-month healing period, a definitive prosthesis was fabricated and placed. One implant, although still osseointegrated, was removed owing to bone resorption. In the patient, the provisional prosthesis was supported by 4 remaining fixtures;thus the cumulative survival rates for fixtures and prostheses were 99.0%and 100%, respectively, after one year. This clinical report suggests that immediate loading of implant-supported fixed prostheses in the edentulous maxilla and mandible can be a safe and successful treatment as long as patients are carefully and strictly selected.