著者
大隅 秀晃 江尻 宏泰 藤原 守 岸本 忠史
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

山脈の宇宙線トモグラフィーを得ることに成功すれば、掘削不可能な広い範囲の地質や地層に対する新しい情報(エネルギー損失係数の3次元分布dE/dX(p,A,Z)-つまり地層の密度と構成粒子の原子番号等の関数)が得られ、地質や地層の研究に応用できる。この方法を推し進めれば、宇宙線地学という新しい研究分野開拓の契機となる。この研究をめざして、紀伊半島中部にある山岳トンネル(大塔天辻トンネル、地下約470m(最大)、長さ約5km)内から、そのトンネルを覆う山脈の宇宙線(μ粒子)トモグラフィー(山脈の断層写真)を得るために以下の検出器開発と実験研究をおこなった。1.宇宙線(μ粒子)の方向・強度を測定するためプラスチックシンチレーターホドスコープ(1m×1m)、データ取り込み回路の開発をおこなった。開発したプラスチックホドスコープは、位置分解能と検出効率とコストパフォーマンスを考慮した設計で、シンチレータとウエーブレングスシフタ-を組み合わせて少ない光電子増倍管で、大面積を覆う設計となっている。2.大塔天辻トンネルの地層に対する資料調査を行なった。建設時に地質調査が詳しくなされていることが判明し、地質、地質の境界、断層、破砕帯、風化帯等の資料が得られた。また各地点の弾性波速度の詳細な資料も得られた。したがって本研究で測定できるエネルギー損失係数の3次元分布との詳細な対比が可能となった。3.プラスチックシンチレーターホドスコープの地上(大阪大学理学部)でのデータ取り込みテストを行ない、設計で目標とした、予定通りの性能が得られた。また地上での宇宙線の3次元強度分布の測定を行ない、今まで発表されている、地上での宇宙線強度と矛盾のないことを確かめた。4.大塔天辻トンネルに持ち込み各点での宇宙線の強度および方向の精密測定については、その予備テストを行なったが、核物理センターの大塔コスモ実験室の建設のため、トンネル内への立ち入りが制限されたため、本格的な三次元分布の測定は次年度にひきつづき行なう予定になっている。
著者
田中 正義 藤原 守 郡 英輝 高松 邦彦
出版者
神戸常盤大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

超偏極^3Heガスを造影剤とした^3He-MRI(磁気共鳴イメージング)を目指して、極低温と、強磁場による強制偏極法(BFM : Brute Force Method)による超偏極^3Heガス生成法の開発を行った。今回BFMを用いたのは、従来のレーザー光ポンピング法では超偏極^3Heガスの収率が高々1〓/日程度しか期待できないが、BFMではその千倍の収率が期待できるからである。極低温(~10mK)を実現するのに、オランダ・ライデンクライオジェニクスから導入した^3He/^4He希釈冷凍機(DRS2500)を用い、17 Tの強磁場発生には超電導ソレノイドコイルを用いた。本研究では、BFMで生成された超偏極固体^3He生成用のポメランチュクセル、減偏極が起こらないように短時間で気化させる急速融解法を開発し、予備実験を行っている。