著者
藤原 正仁
出版者
日本アニメーション学会
雑誌
アニメーション研究 (ISSN:1347300X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.15-32, 2016-09-07 (Released:2023-02-18)
参考文献数
76

本研究の目的は、今 敏のライフストーリーの観点から、今 敏監督の人間像、今 敏監督作品の創造過程、そして、今 敏監督と今 敏監督作品との連関について明らかにすることである。本研究では、アニメーション作品、絵コンテ、日記、ブログ、ウェブサイト、エッセイ、音声解説、記事などの資料調査に基づく質的研究の方法論を採用した。その結果、今 敏は、仕事と仲間とともに、アニメーション監督という職業を通して、アイデンティティを確立させながら、自らを表現しようとしていることが明らかにされた。今 敏監督は、絵を描くことによって、想像力を拡張し、創造性に富んだ新しいアニメーションの表現に挑戦し続けた。彼のアイディアは、現実と対峙し、予期しない出来事や偶然の出会いが源泉となっている。とくに、平沢進の音楽と筒井康隆の小説の影響を受けており、これらの世界観は、今 敏監督のアニメーション作品に活かされている。さらに、今 敏監督は、日常生活の中での想像力を作品に反映している。本研究の結論として、今 敏は、自らの人生の意味を探求しながら、アニメーション作品の中に、彼自身の人生のテーマを表現し続けたことが明らかにされた。
著者
藤原 正仁
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.1-13, 2017 (Released:2019-10-01)

近年、デジタルゲームの開発・流通・プレイのありようが変化するなかで、その表現や倫理を めぐる問題は、国際的・文化的・社会的観点から重要になってきている。そこで、本稿は、CERO、 PEGI、IARCにおけるデジタルゲームのレーティングシステムの変遷に着目し、デジタル配信時代にお けるレーティングシステムの在り方について検討することを目的とした。その結果、CEROとPEGIの 審査基準の情報公開の在り方に相違がみられること、ゲームやアプリのデジタル配信などを背景として、 レーティングシステムの在り方が自己申告(Self-regulation systems)へと変化してきていること、新 しいゲーム技術の導入に対するレーティングシステムの適用について検討が求められていることが明ら かにされた。
著者
藤原 正仁
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-11, 2019 (Released:2021-07-01)

近年、デジタルゲームの技術の進展やゲームユーザーの年齢層の拡大により、ゲームの内容や表現が多様化している。本研究では、ゲーム開発者の職業倫理の規定要因を明らかにすることを目的として、11 名のゲーム開 発者に対して半構造化面接調査を行った。その結果、個人要因、組織要因、産業要因という 3 つのカテゴリーが導 出された。個人要因としては、(1)他者との相互作用、(2)社内のガイドライン共有、(3)制約の中での表現追求、(4) 国際展開の経験、(5)子どもとの関わり、(6)社会への眼差しという 6 つのサブカテゴリーが得られた。また、組織 要因としては、ゲーム会社(パブリッシャー)において、知的財産部、法務部、QA(品質保証)部によるゲームの 法や倫理に関するチェックが行われていることが把握された。そして、産業要因としては、プラットフォーマーの倫理規定と CERO 倫理規定に沿った倫理上のマネジメントが行われていることが明らかにされた。
著者
藤原 正仁
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.2-11, 2018-11-30 (Released:2019-06-17)
参考文献数
17

本稿では,台湾のゲームレーティングについて紹介し,他国・地域のレーティングシステムと比較しながら,その特徴を整理した.2011年,「デジタルゲームレーティング委員会」が発足し,ゲームのコンテンツに対して,業界団体や学者,保護者団体など,さまざまな意見が反映されるようになった.2012年,「コンピュータソフトウェアレーティング規制」から「ゲームソフトウェアレーティング管理規制」へ修整され,普遍級,保護級,輔導級,限制級の4区分から,普遍級,保護級,輔12級,輔15級,限制級の5区分に変更された.台湾のゲームレーティングでは,遊技測試員がゲームを実際にプレイして審査書類が作成されている.また,「ゲームソフト評価基準表」は,年齢別レーティングの根拠となる性,暴力と恐怖,麻薬,タバコとアルコール,不適切な言葉,恋愛,反社会性という項目について明文化され,Webサイトで公開されており,透明性と客観性がある程度担保されている.審査員は,学者,有識者,保護者団体,教師団体などのメンバーで構成されており,ゲーム業界と利害関係のない独立した組織として機能している.
著者
藤原 正仁 ロート マーティン
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.63-75, 2021-06-25 (Released:2021-06-30)
参考文献数
55

ドイツは欧州最大のゲーム市場である.ドイツではゲームが多くの人々にプレイされる一方で,子どものゲーム使用に関する保護者の懸念がある.ドイツには青少年保護に関する法律とゲームレーティングが存在するが,近年のゲームレーティングシステムについては明らかにされていない.そこで,本研究は,ゲームのデジタル配信を踏まえたドイツにおけるゲームレーティングシステムについて明らかにすることを目的とした.その結果,ドイツにおけるゲームレーティングシステムは,(1)関連法に基づき,エンターテインメントソフトウェア自主規制機関(Unterhaltungssoftware Selbstkontrolle: USK)によって運営される共同規制の形態を採っている,(2)USK諮問委員会によって審査基準が策定され,公開されている,(3)ナチス等の違憲組織のシンボルの使用について,社会的妥当性を考慮して検討されている,(4)USK.onlineとIARCにより,オンラインゲームやアプリのレーティングに対応している,(5)普及啓蒙を推進し,USKレーティングの透明性を高めていることが示された.また,連邦青少年有害メディア審査会(Bundesprüfstelle für jugendgefährdende Medien: BPjM)は,児童と少年の発達および教育に深刻な悪影響を及ぼす可能性のあるメディアを青少年有害メディアリストに掲載していることが把握された.
著者
藤原 正仁 ロート マーティン
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.19-31, 2021 (Released:2021-06-01)

欧州では、ゲーム市場の拡大や多様なプラットフォームの普及を背景として、多くの児童や青少年がゲームをプレイしているため、保護者へのゲームレーティング情報の提供が重要となっている。そこで、本研究は、全ヨーロッパゲーム情報(Pan European Game Information: PEGI)システムの構造と変容に焦点を当て、ヨーロッパにおけるゲームレーティングシステムの在り方について検討した。その結果、(1)PEGI システムの採用国が増加しているが、その法的地位は国ごとに異なり、「自主適用」、「自主規制」、「共同規制」の 3 つに分類される、(2)PEGI 質問票では、2018 年に質問の順番を年齢順からゲームの内容順に変更し、「ゲーム内購入」の質問とコンテンツディスクリプターを追加している、(3)PEGI S.A. は、2010 年から追加的消費者情報を公開し、ゲーム内容の情報を提供している、(4)特設ウェブサイトや PEGI アプリ、オンライン教材の提供を通じて、PEGI レーティングの普及啓蒙が図られていることが明らかにされた。