著者
上村 雅之
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.191-203, 2009 (Released:2019-10-01)

テレビ受像機でゲーム遊びが楽しめるテレビゲーム機が米国で誕生して半世紀の歳月が流れた。世界中の人々に親しまれている多くの遊び道具が永い歴史を刻んでいる中で、テレビゲームは最も新しい遊び道具の一つと位置づけることができる。第二次世界大戦後急速に普及した代表的な大衆向け商品、テレビ受像機と電卓(電子式卓上計算機)がテレビゲームの誕生と普及の鍵を握っていた事実 はテレビゲームの歴史を考える上で重要なポイントである。そして多くの大衆向け商品と同様にテレビゲームも又「ブーム」と呼ばれる急速な普及現象に支えられながら現在もなお、技術的な変貌を遂げつつある。本論文では第一部で世界初のテレビゲームブームに至るまでの歴史を概観する。又第二部では、現在のテレビゲーム産業の基礎を築いたとされているファミコン(正式名称ファミリーコンピュータ)の登場までの歴史とその設計思想の概要を紹介する。尚本論文は筆者がファミコンの開発に一技術者として参加した時に体験した様々な出来事を歴史的な流れとして理解する為の調査・研究を 基に執筆されたものである。
著者
川﨑 寧生
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.1-12, 2015 (Released:2019-10-01)

ビデオゲーム機が導入された喫茶店は1970年代末に起きたテーブル型ビデオゲーム機の流行に寄 与した功績以外あまり重要視されていなかった。本研究ではこの喫茶店が持っていた役割を改めて見直すため、この喫茶店の実態を文献資料と現存する喫茶店へのフィールド調査やインタビュー調査を用いて明らかにすることを目的とした。本研究では特に導入ゲーム機種とゲーム機の導入時期、利用方法、 ゲーム機を利用する客層の4つの点を中心に調査した。結論として、この喫茶店は、テーブル型ビデオゲーム機により1980年代の現代日本における会社員向けの短時間の余暇を提供する、新たな役割を作り出したことを明らかにした。
著者
三宅 陽一郎 水野 勇太 里井 大輝
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.1-12, 2020 (Released:2021-07-01)

デジタルゲームにおけるキャラクターの頭脳である「キャラクターAI」、パス検索など環境を認識する「ナビゲーションAI」と並んで、ゲームAIの柱の一つとなりつつある「メタAI」について、その概念の歴史的形成を探求する.メタAIはゲーム全体を動的にコントロールする人工知能である.「メタAI」という言葉が使われたのは2005年以降のことであるが、メタAI的なアイデアは80年代のゲーム開発の中からあり、現代ではその発展した形で生き続けている.また,2008年以降、メタAIとほぼ同じ意味でAI Directorがあり、現在はこの両者が混在している状態である.本論文では、これまでまとめられることのなかった両者の概念の形成と実装具体例を追いつつ、メタAIとAI Directorがカバーする領域と役割の差異を明確にし、現時点での定義を行う.メタAI、AI Directorの研究・開発の歴史的経緯と定義を提供することで、今後のメタAI、AI Directorの研究・開発の礎となることを目的とする.
著者
山根 信二
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.185-190, 2009

デジタルゲームの歴史研究において、技術革新を可能にした社会的技術的な環境への注目は重要である。この領域は研究者よりもジャーナリストがいち早く調査していた領域でもあるが、さらに今日では大学におけるゲーム研究にも歴史研究が取り入れられている。しかし研究目的に耐えるデジタ ルゲームの保存については十分な蓄積がなく、今後の課題となっている。そこで新たな担い手によるゲームの保存の戦略をとりあげ、現在の段階を位置づける。
著者
山根 信二
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.185-190, 2009 (Released:2019-10-01)

デジタルゲームの歴史研究において、技術革新を可能にした社会的技術的な環境への注目は重要である。この領域は研究者よりもジャーナリストがいち早く調査していた領域でもあるが、さらに今日では大学におけるゲーム研究にも歴史研究が取り入れられている。しかし研究目的に耐えるデジタ ルゲームの保存については十分な蓄積がなく、今後の課題となっている。そこで新たな担い手によるゲームの保存の戦略をとりあげ、現在の段階を位置づける。
著者
川﨑 寧生
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.1-12, 2015

ビデオゲーム機が導入された喫茶店は1970年代末に起きたテーブル型ビデオゲーム機の流行に寄 与した功績以外あまり重要視されていなかった。本研究ではこの喫茶店が持っていた役割を改めて見直すため、この喫茶店の実態を文献資料と現存する喫茶店へのフィールド調査やインタビュー調査を用いて明らかにすることを目的とした。本研究では特に導入ゲーム機種とゲーム機の導入時期、利用方法、 ゲーム機を利用する客層の4つの点を中心に調査した。結論として、この喫茶店は、テーブル型ビデオゲーム機により1980年代の現代日本における会社員向けの短時間の余暇を提供する、新たな役割を作り出したことを明らかにした。
著者
渋谷 明子 坂元 章 井堀 宣子 湯川 進太郎
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-12, 2011 (Released:2019-10-01)

591名の小学校高学年児童を対象にパネル研究を実施し、テレビゲームの暴力シーンへの接触時 間が長いと、 1 年後の攻撃性が高くなる傾向が男子でみられた。また、テレビゲームの世界を現実的だ と知覚していた男子の 1 年後の身体的攻撃が高くなった一方で、暴力シーンを見て虚しい気持ちになった男子の攻撃性は 1 年後に低くなる傾向も見られており、暴力シーンの見方によって、暴力シーンの長 期的影響が異なる可能性が示唆された。
著者
井堀 宣子 坂元 章 渋谷 明子 湯川 進太郎
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.34-43, 2008 (Released:2021-07-01)

テレビゲームが子どもに与える影響を調べるため、小学生を対象にしたパネル研究を実施した。 調査を2回実施し、子どものテレビゲーム使用量、シーン別接触量、ゲーム嗜好を測定するとともに、 攻撃行動、向社会的行動を測定した。交差遅れ効果モデルを用いて構造方程式モデル分析を行った結果、 男子において、平日のテレビゲーム使用量が多いほど、向社会的行動が抑制される傾向があった。また、 被調査者全体と男子において、向社会的シーンに接触する機会が多いほど、そして、非暴カゲーム嗜好が強いほど向社会的行動が促され、暴カゲーム嗜好が強いほど向社会的行動が抑制される傾向があった。
著者
福井 昌則 黒田 昌克 野村 新平 山下 義史 森山 潤
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-11, 2022 (Released:2023-09-24)

本研究の目的は,若者(高校生,大学生)のデジタルゲームに対するイメージ尺度を開発し,その信頼性と妥当性 を検討することである.予備調査として,デジタルゲーム開発を専門とする大学生 112 名に予備調査を行い,デジタルゲ ームに対するイメージを測定する項目として 115 項目を抽出した.その 115 項目を用いて,関西圏の高校生,大学生 360名を対象に調査を実施した.その結果,デジタルゲームに対するイメージとして,「個人的・社会的悪印象」,「特別体験・肯定的印象」,「スキル向上」,「広範的コミュニケーション」,「健康被害・依存誘発」,「思想的悪影響」,「運動不足」の 7因子(74 項目)が抽出された.
著者
Wade Alex 小山 友介
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.102-114, 2008 (Released:2021-07-01)

本論文の目的は、 ビデオゲーム制作に関する具体的議論の前段階となる省察を示すことにある。 ビデオゲーム産業がメジャーな娯楽メディアとして始まる段階からの歴史的概括を行い、当時から現在まで存続しているビデオゲーム開発手法が後に引き起こした成功と失敗を検証する。そこから得られた知見を、文化的に関連の深い理論モデルと関連づける。欧米の開発者、プログラマー、アーティスト、プロデューサーヘのインタビュー結果から、ビデオゲーム産業の現状を評価するとともに、現在のビデ オゲーム制作が持つ過去との関連性、問題点、類似性について分析する。最後に、将来のビデオゲーム制作についての私見を述べる。
著者
七邊 信重
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.171-183, 2009 (Released:2019-10-01)
被引用文献数
1 1

本研究は、日本の同人・インディーズシーンにおけるゲーム制作の特徴と、これを持続的に可能にしている社会経済的条件、およびここから多様な表現が生み出されている要因を、質的データ分析によって解明することを試みたものである。インタビューデータのコード化の結果、同人・インディーズ のゲーム制作には、1志向性、2自律性、3柔軟性、4開発スピード、5ユーザーとの距離、6売上・ 収入において特徴があることが明らかになった。さらに、1数千本~1 万本程度の売り上げでペイライ ンを越えるビジネスユニットとエコシステムが形成されていること、2このエコシステムの中で、制作 者の個性を反映した尖った作品が持続的に開発されていることが示された。この結果は、日本における 持続的な小規模ゲーム開発の社会的・経済的可能性を示唆している。
著者
柳原 孝安
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.93-104, 2009 (Released:2021-07-01)

経験則に限づくアニメーション制作事例を元に、「アニメーション作業の軽減化」、及び「リアリティの再現」の視点からモーションキャプチャーの使用目的を明確にした。さらにモーションキャプチャーで得られた「リアリティの再現」を有効にしつつもデジタルゲーム特有の「デフォルメ」作業を行う必 要性と重要性についても解説を述べる。また、実機によるリアルタイム物理演算の使用についての難しさと可能性について現時点での解説を述べる。さらにフィンガーやフェイシャルアニメーションの効率化に対してはいかなる問題が介在するか、現状における問題点の洗い出しとその解消方法の可能性についても解説を述べていく。
著者
井上 明人
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.59-66, 2009

ゲームを理解させていくプロセスにこそ注目をしていくようなゲーム観やゲームデザイン観を「チュートリアリズム」と名付け、こうしたゲームデザイン観が1980年代前半の日本ゲーム市場の持つ歴史的な偶然性から発達してきた可能性について提示し、このようなゲームデザイン観の可能性と問題について素描した。
著者
柿崎 憲 中林 寿文
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.23-29, 2019 (Released:2021-07-01)

スマートフォンゲーム開発は、市場競争の激化とともに大規模化が進んでいるが開発期間は必ずしも 比例することはなく、開発はより困難になっている。投資回収には適切な製品品質が必須でありソフトウェア の信頼性評価は重要だが、スマートフォンゲーム開発における実践報告は多くはない。本稿ではスマートフ ォンゲーム開発で用いる信頼性評価指標が備える必要がある特徴を明らかにし、この特徴を備えた指標とし て信頼度成長曲線を用いた信頼性評価を実践した事例を報告する。
著者
フランク アンダース 七邊 信菫
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.126-136, 2008 (Released:2021-07-01)

シリアスゲームは楽しくて遊べるゲームであることとともに、娯楽以外の目的で使えることを目指す。このことはそのデザインプロセスに、面白くやりがいのある課題を提出する。それは、娯楽以外の目的を達成することと同時に、 そのデザインが楽しみや熱中をもたらすことをどのように確実にできるか、という課題である。教育用ゲーム(シリアスゲームの派生物)のゲームデザインは、トピック (訓練の目的) とゲームが使用される環境に左右される。私たちは、次の 3つのデザイン目標が同時に達成されるような実用的なデザイン手法を提案する。 その目標とは、(1) 人が夢中になるゲームを創ること、 (2) 訓練の目的に適切に役立つこと、 (3) ゲームを取り巻く訓練の文脈がデザインの決定に影響を与えること、である。本稿では、デザインの問題の分布範囲を調べ、いかに 3つのデザイン目標が相互依存しているか、そしてバランスのとれたデザインがどのようにこれら 3つのすべてを満足させるかを示す。たとえば、訓練の目的は、ルールと目標のわかりやすいデザインを妨げることがある。訓練の文脈は、課題を構成する方法やゲームによる学習が達成される過程に影響する。この方法を説明するため、「Foreign Ground」という訓練用シリアスゲームのデザインプロセスを紹介・議論する。