著者
宮前 珠子 藤原 瑞穂
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.533-539, 2001-12-15

「これまで質的研究は,人類学,歴史学,政治学領域のみで使われてきたが,最近ではそれ以外の,伝統的には“量的研究”の領域であった心理学や,社会学,教育学,行政学,そして都市工学においても使われてきている」1)(Bailey,2001,p.40)と言われ,多くの学問領域は「現象学的アプローチに近づいてきており,実験的アプローチからは離れつつあり,厳密さには多少欠けるがより現実的になっている」8)(Yerxa,1991,p.201)とも言われる.保健医療分野での質的研究の先駆けは,米国人社会学者GlaserとStrauss(1965)による「死のアウェアネス理論と看護」2)であり,ここで初めて使われたのがグラウンデッドセオリーアプローチであった.これを機に,看護領域では急速に質的研究が注目され広く行われるようになる.作業療法領域ではこれから遅れること十数年,1980年代はじめよりごく一部の研究者によって質的研究が行われ始め,1990年代に広くその適切性,重要性が認識され多くの研究が発表されるようになってきた.但しこれは米国のことであり,我が国ではそれから遅れること約10年,1990代の終わり頃になってようやく質的研究が注目されるようになり,学会発表でも見られるようになったばかりである. この小論は,1966年から2000年まで35年間のThe American Journal of Occupational Therapy(以下,AJOTと略す)における質的研究に関する文献を,MEDLINEで検索しまとめたものである.質的研究に関連する論文としては,「質的研究について述べた文献」と「質的研究方法を使った研究」の2つに分けることができる.