著者
見上 彪 前田 健 堀本 泰介 宮沢 孝幸 辻本 元 遠矢 幸伸 望月 雅美 時吉 幸男 藤川 勇治
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は猫に対する安全性、経済性、有効性全てに優れる多価リコンビナント生ワクチンを開発・実用化することである。以下の成績が得られた。1.我々は猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)のチミジキナーゼ(TK)遺伝子欠損株(C7301dlTK)の弱毒化とそのTK遺伝子欠損部位に猫カリシウイルス(FCV)のカプシド前駆体遺伝子を挿入した組換えFHV-1(C7301dlTK-Cap)の作出に成功した。C7301dlTK-Capを猫にワクチンとして接種した後にFHV-1とFCVの強毒株で攻撃したところ、猫は両ウイルスによる発病から免れた。しかし、FCVに対する免疫応答は弱かった。2.そこで、更なる改良を加えるために、FCVカプシド前駆体遺伝子の上流にFHV-1の推定gCプロモーターを添えた改良型組換えFHV-1(dlTK(gCp)-Cap)を作出した。培養細胞におけるdlTK(gCp)-Capのウイルス増殖能はC7301dlTKとC7301dlTK-Capのそれと同じであった。dlTK(gCp)-CapによるFCV免疫抗原の強力な発現は関節蛍光体法及び酵素抗体法にて観察された。加えてdlTK(gCp)-Capをワクチンとして接種した猫は、C7301dlTK-Cap接種猫と比較した場合、FCV強毒株の攻撃に対してその発症がより効果的に抑えられた。3.猫免疫不全ウイルス(FIV)のコア蛋白(Gag)をコードする遺伝子をFHV-1のTK遺伝子欠損部位に挿入したC7301ddlTK-gagを作出し、In vitroでその増殖性や抗原の発現を検討した。この2価ワクチンは挿入した外来遺伝子の発現産物が他の蛋白と融合することなく、自然の状態で発現するように改良されたリコンビナントワクチンである。培養細胞での増殖性は親株であるC7301とほぼ同じであり、イムノブロット解析により、C7301ddlTK-gagは前駆体Gagを発現していた。