著者
藤森 旭人
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.55-62, 2013-03

本論では対人援助職に内包される援助者のこころの在りようを出発点とし、心理療法の中でも無意識を扱う精神分析において、心理療法家が個人分析と呼ばれる精神分析を受けておく意義や必要性について考察した。その理解を促進させるために漫画「ホムンクルス」を用いた。「ホムンクルス」とは「こころの歪み」であり、主人公が他者の「ホムンクルス」を視覚化して見ることができるという設定になっている。この歪みは精神分析的作業の中では転移-逆転移として捉えられるものであり、他者の「ホムンクルス」と関わることで、精神的破綻をきたすまでが描かれている。対人援助者は、自分の傷つきを棚上げし、他者への援助によって自分自身を保とうとする傾向があることにも触れ、この傷つきや破綻を防ぐためにも、個人分析を受けておくことの必要性について論じた。そして、それは他者のことをよく考えられるこころの状態を作りだしておく作業でもあることを強調した。
著者
林 秀樹 武井 祐子 藤森 旭人 竹内 いつ子 保野 孝弘
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-11, 2016

本論文では,非定型うつ病に関する研究の動向を調べ,その背景について検討した.まず,非定型うつ病に関する文献数の推移を概観したところ,非定型うつ病に関する研究が増加傾向にあることが 明らかになった.そして,この推移には,非定型うつ病が DSM で記載されたことが影響を与えてい ると推察された.また,非定型うつ病の定義や診断基準に関する研究の増加も影響を与えていると考 えられた.次に,各文献のキーワードを整理したところ,これまで主に取り上げられてきたキーワー ドは,非定型うつ病や抑うつ障害,双極性障害,薬物療法,診断,治療であることが明らかになった. そのため,これらのキーワードについて,文献の内容を吟味し,非定型うつ病との関連等について確 認した.その結果,近年では,類似する様々な症状との関連についての検討のみならず,より細やか な検討(詳細な病態など)が進められていることが明らかになった.さらに,非定型うつ病の治療に 関する研究としては,薬物療法に関心が向けられていることが明らかになった.