- 著者
-
藤森 麻衣子
坂野 雄二
- 出版者
- 一般社団法人 日本認知・行動療法学会
- 雑誌
- 行動療法研究 (ISSN:09106529)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.2, pp.93-103, 2006-09-30 (Released:2019-04-06)
本研究の目的は、不安喚起場面、身体覚醒場面、安静場面を設定し、身体反応知覚と情動の関連性について検討することであった。対象者は、47名(男性12名、女性35名)の大学生であり、3つの課題(スピーチ課題、運動課題、安静課題)から成る実験に参加した。測定指標は、心拍数、皮膚伝導水準、スピーチ不安尺度、特性不安尺度、身体反応知覚尺度、主観的不安感、印象評定であり、予期不安期、スピーチ課題期、運動期、安静期に測定が行われた。スピーチ不安尺度の得点の高低によって、参加者はスピーチ不安高群とスピーチ不安低群に振り分けられ、群を実験参加者間要因、測定時期を実験参加者内要因とする分散分析が行われた。その結果、予期不安期、スピーチ期では実際の心拍と心拍の知覚、実際の皮膚伝導水準と皮膚伝導水準の知覚、および第三者による行動評定と自己評価とのずれが小さい一方で、運動期、安静期では実際の反応とその知覚のずれが大きいことが示唆された。本研究の結果から、これまで指摘されてきた不安と心拍の知覚の関連に加え、不安と皮膚伝導水準、行動評定との関連が示唆された。