著者
藤田 恒夫 徳永 純一 三好 萬佐行
出版者
国際組織細胞学会
雑誌
Archivum histologicum japonicum (ISSN:00040681)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.99-113, 1970
被引用文献数
34

ラットとウサギの腎糸球体を走査電子鏡で観察し, 次の結果を得た.<br>1. タコ足細胞は迂曲する毛細血管のカーブの内がわに位置し, 数本の突起を放射状に毛細血管壁へ伸ばしている. 一次突起というべきこの突起の太いものは二次突起に, さらに時には三次突起に枝分れしてのち, シダの葉のような形で細長い終枝すなわち足突起を出す. 一次突起のうち若干の細いものは二次突起に枝分れすることなく, 直接に足突起を出す.<br>2. 同一の一次突起から出た二次突起が, あるいは別の一次突起の二次突起が吻合して, 細胞質の輪ができていることがある. また突起の一部が不規則に太くなっていることも多い.<br>3. 毛細血管壁に乗っている足突起は, 異なる細胞のものが交互に隣りあうよう配列している. 同一の細胞に由来する突起のかみあいは一度も見られなかった.<br>4. ラットでは二次突起の分れかたも足突起の出かたも, 直角方向を原則としている. しかしウサギではこれらが斜めの方向に出るのが普通で, またふたまた分岐が非常にしばしば見られる.<br>5. タコ足細胞の細胞体と突起の上面に, 長さの不定な微絨毛が散在する. これはウサギよりラットに多い. またラットのタコ足細胞のあるものには, 本態不明のつぼみ状ないし輪状の小突起が見られた.<br>6. 糸球体の毛細血管の内面に, 内皮細胞の孔が密に配列するのが見られた.
著者
藤田 恒夫 桑原 厚和 金澤 寛明 岩永 敏彦
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

1.腸の分泌に関係する細胞要素としては、消化管に広範囲に分布するEC細胞とVIP含有神経が最も重要である。二重染色の結果は、EC細胞とVIP神経が密接な位置関係にあることを示した。2.イヌの十二指腸を用いたin vivoの生理実験で、セロトニンとVIPは単独投与により、腸の分泌が亢進した。同時投与により、分泌は飛躍的に増大した。セロトニン投与により門脈中のVIP濃度が上昇することと考え併せると、下痢はEC細胞から分泌されたセロトニンが近傍のVIP神経に局所ホルモンとして作用しVIPの放出を招く結果、セロトニンとVIPの相乗効果により腸分泌が強く刺激された状態と理解される。3.PACAP(Pituitary Adenylate Cyclase-Activating Polypeptide)が腸上皮のイオン輸送を強く刺激することがわかった。PACAPによる塩素イオンの分泌亢進は、コリン作動性および非コリン作動性神経の刺激を介した間接作用である。PACAPにはVIP放出作用があることから、この分泌反応の最終信号物質はVIPであると思われる。4.セロトニンによる腸分泌に関する受容体のタイプを特異的な拮抗薬を用いて検討し、5-HT3と5-HT4であることを示した。5.黄色ブドウ球菌が産生する毒素であるStaphylococcal enterotoxin(SEA)は、激しい嘔吐を起こすことが知られている。本研究ではSEAの腸管内投与が下痢を起こすことを示し、この分泌反応にはEC細胞が関与する可能性を示した。