著者
福岡 勇樹 成田 琢磨 小川 正樹 佐藤 朗 寺田 幸弘 松田 亜希奈 保泉 学 梅津 香織 佐藤 雄大 石川 素子 細葉 美穂子 森井 宰 藤田 浩樹 山田 祐一郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.335-339, 2012-05-30
参考文献数
13

35歳,女性.多嚢胞性卵巣症候群,糖尿病あり.インスリン治療にてHbA1c(JDS)5 %台で経過.妊娠34週より口渇,多飲,約8 <i>l</i>/日の多尿が出現.午前中のみの飲水制限で,血清Na 138 mEq/<i>l</i>から144 mEq/<i>l</i>へと上昇,水制限後も血漿浸透圧293 mOsm/kg>尿浸透圧213 mOsm/kg,血漿アルギニン・バゾプレシン(AVP)0.9 pg/m<i>l</i>と上昇なく,中枢性尿崩症が疑われ入院,デスモプレシンの試験的点鼻投与にて尿量は約2 <i>l</i>/日に減少した.出産後はデスモプレシンを中止しても妊娠前の尿量に戻ったが,頭部MRIで下垂体後葉の高信号の低下を認め,高張食塩水負荷試験でAVP上昇が不十分であったことから,妊娠による胎盤バゾプレシナーゼ活性亢進によるAVP需要の増大を代償しきれず,部分型尿崩症が妊娠後期に顕在化した病態と考えられた.妊娠に尿崩症が合併する頻度は4~30万妊娠例に1例と稀な症例であり報告する.<br>
著者
藤田 浩樹 山田 祐一郎
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

GLP-1とその分解酵素DPP-4の腎臓内シグナル伝達系とこれらをターゲットとした糖尿病性腎症に対する治療の可能性について検討した。進行性糖尿病性腎症マウスモデルKK/Ta-Akitaを用いた研究から、DPP-4阻害によりその基質の一つであるSDF-1αの発現が腎臓の糸球体上皮細胞と遠位ネフロンで増加すること、この発現増加は尿中ナトリウム排泄を促進し糸球体高血圧の改善をもたらすこと、SDF-1αからのシグナル遮断による腎保護効果の消失が示された。DPP-4阻害は腎臓内での活性型GLP-1のレベルを高めることに加え、SDF-1αの発現増加を惹起することで腎保護に貢献する可能性が示唆された。