著者
衛藤 幹子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度のイギリス調査では、12の女性団体を調査した。イギリスの女性団体の多くは、大きく2つの包括組織(NCWGBとNAOW)に統合される一方、女性の意見を政府の女性政策に反映させるという役割を担う「全国女性委員会(Women's National Commission, WNC)」が全組織を束ねている。イギリスにおける女性政策の形成過程では、個々の女性団体の提案は、NCWGBとNAOWから、WNCに渡され、WNCが取りまとめて、政府に提起するという政策形成の行程が確立していた。平成16年度のデンマーク調査は、(1)EUおよび北欧5力国との協力関係、(2)デンマーク政府と女性団体との関係、(3)デンマークにおける代表的な女性団体の実態の3つのレベルで実施した。デンマークのジェンダー関連政策の形成において女性組織の意見は政府政策の中に反映されていたが、それは女性団体の一方的な圧力行動の結果ではなく、デンマーク政府がこうした非政府団体の意見を求め、それを政策に取り入れようとしているからであった。平成17年度のスウェーデン調査では、ストックホルム大学のドゥルデ・ダレループ教授のもとで、(1)政策決定における女性団体の影響力、(2)スウェーデンにおける代表的な女性組織の実態、(3)クオータ・プロジェクトの活動調査と学術交流を行なった。国家の主導の所謂「上からのフェミニズム」という通説に反して、現実にはスウェーデンの女性団体は大きな政治過程において強い影響力を行使していた。ジェンダー平等局は、非政府・非営利女性活動組織との対話の場を定期的に設定していた。平成18年度は、(1)9月17日に実施されたスウェーデン総選挙に初登場したフェミニスト政党の選挙キャンペーンの観察と(2)フィンランドにおける女性団体と政党との関係を調査した。スウェーデンでは、フェミニスト政党の選挙運動に参加し、スウェーデンの女性たちが世界のトップ・レベルにあるスウェーデンの男女平等政策に必ずしも満足しておらず、真の平等を求めて政党が結成されたこと、すなわち「上から」の国家主導の変革と同時に、「下から」の女性たちのエンパワーメントが不可欠であることが明らかになった。また、フィンランドの女性運動は、よく組織化され、すべての女性団体の頂点には、NYTKISという政治家一研究者一活動家の連携組織が結成され、女性の声が政治に直結する仕組みがあることがわかった。
著者
衛藤 幹子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、日本における女性の政治的過少代表(女性議員が少ない状態)の要因を、国際比較の文脈から分析することを目的に、文献調査、国内調査(関係者へのインタヴュー、アンケート)および海外現地調査(クオータ制度)を実施した。その結果、日本女性の過少代表の原因は、選挙制度、政党の態度、政治文化、クオータ制度の有無などから多面的に説明できるが、政治に対する女性の意識や行動が最も重要な要因であることが明らかにされた。