著者
衣斐 大祐
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学会年会要旨集 第96回日本薬理学会年会 (ISSN:24354953)
巻号頁・発行日
pp.4-B-S43-2, 2022 (Released:2022-12-26)

Serotonergic psychedelics such as psilocybin, the psychoactive substance found in the magic mushroom, have hallucinatory effect through stimulation of the cortical serotonin 5-HT2A receptor (5-HT2A). Recently, FDA has called psilocybin a 'breakthrough therapy' for severe depression. We have already demonstrated that 5-HT2A in the lateral septum (LS) plays a responsible role in antidepressant-like effect of psilocin, an active metabolite of psilocybin, whereas hallucinatory effect of psilocin was attributed to 5-HT2A stimulation in the visual cortex (V1) in mice. Here, we investigated the neural network responsible for antidepressant effect of psilocin. The histological study with anterograde and retrograde transports of adeno-associated viruses showed that 5-HT2A in LS abundantly expressed in GABAergic neurons, which projects to the dorsomedial hypothalamic nucleus (DM) in mice. Therefore, we investigated the functional role of 5-HT2A-positive LS-DM pathway in antidepressant effect by optogenetic and chemogenetic approaches. Selective inhibition of 5-HT2A-positive LS-DM pathway eliminated the antidepressant-like effect of psilocin in mice in forced-swim test as well as social defeat stress test. On the other hand, activation of the LS-DM pathway induced antidepressant-like effect in mice. Lastly, microinjection of bicuculline, an antagonist of GABAA receptor, into the DM diminished such effect of psilocin in mice. These suggest that 5-HT2A-positive LS-DM GABAergic network contributes to antidepressant effect of serotonergic psychedelics.
著者
衣斐 大祐
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

NMDA受容体拮抗薬のケタミンは、難治性うつ病にも治療効果を示すため米国ではすでに使われ始めている。一方、Psilocybinなどセロトニン5-HT2A受容体(以下、5-HT2A)刺激薬も即効性と持続性を有する抗うつ作用を示すことが報告された(Kyzar et al, Trends Pharmacol Sci 2017)。我々は既にケタミンの抗うつ作用が5-HT2Aを介していることを見出している。そこで本研究では、5-HT2Aを介する抗うつ作用に関わる神経回路および抗うつ関連分子を明らかにし、ケタミンの抗うつ作用における5-HT2Aの役割を明らかにすることを本研究の目的とする。
著者
衣斐 大祐
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.158, no.3, pp.229-232, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1

うつ病の約3~4割は,治療抵抗性うつ病とされている.治療抵抗性うつ病に対する治療薬として,NMDA型グルタミン酸受容体拮抗薬ケタミンの光学異性体「エスケタミン」が欧米の一部の国で使われ始めているが,抵抗性や副作用の点からその使用は制限されている.最近の臨床報告から,マジックマッシュルームに含まれる幻覚成分である「シロシビン」が治療抵抗性うつ病患者に対し,即効かつ持続的な治療効果を示すことが明らかとなった.その結果は,その後の臨床研究からも支持され,アメリカ食品医薬品局はシロシビンがうつ病の画期的治療薬に成り得ると発表した.さらに,シロシビンやリゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)などセロトニン作動性幻覚薬(精神展開薬,サイケデリック)が,うつ病のみならずアルコール依存症,不安障害,心的外傷後ストレス障害など様々な精神疾患に対しても効果を示すことが報告されている.このような,ここ数年のサイケデリックに対する関心の高まりは「サイケデリック ルネッサンス」と呼ばれている.興味深いことに,サイケデリックの精神疾患に対する治療効果は幻覚作用に関与するセロトニン5-HT2A受容体を介していないと考える研究者も存在する.一方,サイケデリックのセロトニン5-HT2A受容体刺激によって引き起こされる幻覚や神秘的な感覚が精神疾患治療に有用であるという考えも存在し,サイケデリックによる精神疾患の治療効果におけるセロトニン5-HT2A受容体の役割は詳しく分かっていない.本稿では,精神疾患の中でも「うつ病」を中心にサイケデリックの治療効果に関する最新の臨床および非臨床研究について概説し,セロトニン5-HT2A受容体の治療標的としての有用性についても考えたい.