著者
衣笠 真理恵 古山 千佳子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.232-238, 2021-04-15 (Released:2021-04-15)
参考文献数
15

心不全,脳梗塞後遺症などを呈したA氏に,『音楽を楽しむ』作業の可能化を目指して介入した.可能化の背景にあった基盤やOTが用いた技能を,クライエント中心の可能化のカナダモデル(以下,CMCE)で考察した.A氏にとって『音楽を楽しむ』ことは,時間を超えた人とのつながりを感じ,生活の習慣を作り,痛みを忘れさせ,アイデンティティを保ち,生きている実感を与えていた.可能化の背景には,特に【クライエントの参加】,【可能性の見通し】が影響していた.それらを強化し促進するため,《適応》,《調整》,《コーチ》などの技能を用いたことで可能化に至った.CMCEを意識して関わることで,より作業療法の専門性を活かした介入につながる.
著者
衣笠 真理恵 吉川 ひろみ
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.564-571, 2023-10-15 (Released:2023-10-15)
参考文献数
27

脳卒中発症後3週から1年の作業遂行の質の推移について明らかにするため追跡調査を行った.遂行の質は発症後3週→1年の期間で統計上有意に向上していたが,一般的な機能回復曲線とは異なり上がり下がりを繰り返していた.個々のデータを見ると,心身機能が改善しても遂行の質が低下した者もあり,その逆もあった.6ヵ月→1年の期間は統計上有意な変化が見られなかったが,16名中6名の遂行の質が臨床上有意に向上しており,心身機能の低下した者が3名含まれていた.発症半年以降も遂行の質は改善するケースがあることが示唆された.遂行の質に着目することで,今まで捉えられなかったクライエントの変化を捉えることができる可能性がある.