著者
林 裕樹 金城 達也 西垣 大志 宮城 良浩 中川 裕 高槻 光寿
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.293-301, 2021

<p>症例は26歳の女性で,妊娠を契機に径10 cm大の骨盤内腫瘍を指摘され,試験腹腔鏡検査にて後腹膜腫瘍の診断となった.囊胞成分のほかに充実成分を伴っており悪性疾患の可能性が示唆され,加療目的で当院紹介となった.腹部造影CTおよびMRIにて仙骨前面に多房性囊胞性腫瘍を認め,腫瘍背側には造影効果を有する小結節が存在した.腫瘍摘出術を施行し,病理組織学的診断では後腹膜成熟囊胞性奇形腫であり,小結節は神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor;以下,NETと略記)の診断であった.術後経過は良好で術後7日目に退院となった.成人発症の後腹膜成熟囊胞性奇形腫はまれな疾患であり,年齢とともに悪性化の頻度が高くなるとされている.悪性化すると予後不良であるため,早期手術が推奨されている.今回,我々は極めてまれなNETを併存した成人後腹膜成熟囊胞性奇形腫の1例を経験したので報告する.</p>
著者
西垣 大志 金城 達也 伊禮 靖苗 西巻 正
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.78, no.8, pp.1855-1858, 2017

63歳,男性.前医にてS状結腸癌穿孔,腹膜播種の診断でS状結腸切除,小腸部分切除,横行結腸人工肛門造設術を施行.化学療法目的に当院紹介となり,外来化学療法中であった.傍ストマヘルニアを伴うストマ脱を認め,腹痛を繰り返すようになったため,ストマ修復およびヘルニア修復術を施行した.<BR>術前まで血清CEA値は504ng/mlと高値を示していたが,術後に10ng/mlと著明な低下を認めた.また,精査では約4.5cm大の播種巣1箇所のみであったため,ストマ脱手術の3カ月後に播種巣切除術を施行した.術後再発なく経過している.<BR>本症例のCEA高値の機序はストマ脱腸炎による可能性が示唆された.<BR>今回,腹膜播種を伴う進行下行結腸癌術後に発症した傍ストマヘルニアおよびストマ脱に対する手術後,著明なCEA値の低下を認めたため,播種に対する根治術が可能であった症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告した.