著者
山下 万平 曽山 明彦 高槻 光寿 日髙 匡章 宮明 寿光 黒木 保 中尾 一彦 江口 晋
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.2, pp.325-331, 2015-02-05 (Released:2015-02-05)
参考文献数
30

症例は60代女性.C型肝硬変に対して生体肝移植,脾臓摘出術を施行.C型肝炎再発に対するインターフェロン療法中に発熱,下痢,嘔気が出現,ショックとなり脾摘後劇症型感染症と診断されたが,集中治療により救命した.脾摘後劇症型感染症は生命予後が不良であり,救命率の改善には予防の徹底,症状が軽度の段階から劇症化する可能性があることを念頭において,きわめて迅速に治療を開始することが必要である.
著者
森田 道 曽山 明彦 高槻 光寿 黒木 保 安倍 邦子 林 徳真吉 兼松 隆之 江口 晋
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.483-487, 2013 (Released:2013-08-25)
参考文献数
8
被引用文献数
5 7

59歳,女性.主訴はなし.検診目的の腹部超音波検査で肝腫瘤を指摘され当科紹介となった.腹部造影CTでは肝外側区域から肝外に突出する造影効果に乏しい腫瘤を認めた.肝腫瘍の他,肝胃間膜内発生の悪性リンパ腫や胃GIST,炎症性腫瘤との鑑別が困難であり,診断的意義も含め腹腔鏡下腫瘤摘出術を施行した.術中所見では腫瘤は肝胃間膜内に肝外側区域背側に接するように存在していた.腫瘤と接する肝外側区域を一部合併切除し腫瘤を摘出した.病理組織所見は変性壊死を中心とした好酸球性肉芽腫で,内部にアニサキス虫体を認め消化管外アニサキス症と診断した.アニサキス症の多くは消化管に発生し激烈な腹痛を特徴とするが,初回感染では本症例のように無症状で消化管壁を穿通し消化管外アニサキス症として発見される例の報告もある.発見契機としては,絞扼性イレウス,膵腫瘤などの報告があるが,肝腫瘤として発見された例は国内では5例と稀である.
著者
知念 徹 金城 達也 宮城 良浩 高槻 光寿
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.972-976, 2021

<p>53歳,女性.3年前から2カ月に一度,右下腹部の間欠的な疼痛を自覚したため近医産婦人科を受診.精査で卵巣腫瘍が疑われ,当院産婦人科へ紹介された.経膣超音波検査で子宮および両側付属器に明らかな病変を認めず,また腹部造影CTでは右骨盤内に小腸と接する造影効果を有する3.5cm大の類縁形腫瘤を認め,骨盤造影MRIではT1強調脂肪抑制像で内部不均一な高信号病変を認めた.PET-CTで同病変に異常集積を伴っていたため,小腸GIST疑いで当科へ紹介となった.腹腔鏡観察では腫瘤は類円形,表面平滑で可動性は良好であり,腫瘍径・腫瘍局在が画像診断と一致していたため,切除の方針とした.腫瘍周囲を剥離すると子宮円靱帯由来の腫瘍と判明し,腹腔鏡下に腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的検査では紡錘状の平滑筋細胞が錯綜する像を認め,腫瘍細胞はα-SMA陽性,Desmin陽性,DOG-1陰性であったため,子宮円靱帯平滑筋腫の診断であった.子宮円靱帯由来の平滑筋腫は稀であり,文献的考察を含め報告する.</p>
著者
林 裕樹 金城 達也 西垣 大志 宮城 良浩 中川 裕 高槻 光寿
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.293-301, 2021

<p>症例は26歳の女性で,妊娠を契機に径10 cm大の骨盤内腫瘍を指摘され,試験腹腔鏡検査にて後腹膜腫瘍の診断となった.囊胞成分のほかに充実成分を伴っており悪性疾患の可能性が示唆され,加療目的で当院紹介となった.腹部造影CTおよびMRIにて仙骨前面に多房性囊胞性腫瘍を認め,腫瘍背側には造影効果を有する小結節が存在した.腫瘍摘出術を施行し,病理組織学的診断では後腹膜成熟囊胞性奇形腫であり,小結節は神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor;以下,NETと略記)の診断であった.術後経過は良好で術後7日目に退院となった.成人発症の後腹膜成熟囊胞性奇形腫はまれな疾患であり,年齢とともに悪性化の頻度が高くなるとされている.悪性化すると予後不良であるため,早期手術が推奨されている.今回,我々は極めてまれなNETを併存した成人後腹膜成熟囊胞性奇形腫の1例を経験したので報告する.</p>