著者
宮城 良浩 金城 達也 狩俣 弘幸 下地 英明 西巻 正
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.7, pp.1915-1918, 2014 (Released:2015-01-31)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

症例は20歳,男性.0歳時,髄膜瘤に対する手術の際に,脳室腹腔シャント(VPシャント)を造設.8歳時に水頭症発症し,シャント入れ替えが施行されていた.3カ月前より右前胸部シャント挿入創に肉芽形成を認め,1カ月前に同部位から排膿を認めるようになり,シャント感染が疑われた.シャント抜去術が予定されたが,術前腹部CTでチューブの腸管内迷入所見を指摘.腹部に圧痛はなく,腹膜刺激症状はみられなかった.腹腔鏡による腹腔内観察では,チューブ先端が横行結腸内へ迷入していたため,小開腹にてチューブを抜去し腸管を修復した.術後抗生剤投与により前胸部創感染は改善し,今後は経過観察し,水頭症が出現した場合にシャント再造設を予定することとなった.VPシャントチューブの消化管穿通はまれな合併症であるが,本症例では診断および治療に腹腔鏡下手術が有用であった.
著者
新垣 淳也 荒木 靖三 野明 俊裕 的野 敬子 鍋山 健太郎 岩谷 泰江 岩本 一亜 小篠 洋之 佐藤 郷子 高野 正博 佐村 博範 西巻 正
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.310-316, 2014 (Released:2014-04-30)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

目的:毛巣洞に対する当院で行ったV-Y plastyの手技と成績について報告する.対象と方法:2006年から2012年までの毛巣洞手術症例14例を対象とし,V-Y plastyの手術治療経験についてretrospectiveに検討した.結果:平均年齢31.5歳(16~48歳),全例男性.平均体重75.5kg(63.4~92kg),BMI 26.0kg/m2で,25kg/m2以上の症例は8例(57.1%)であった.病悩期間は平均15.5ヵ月(3日~5年),平均手術時間45.3分,術後合併症は6例(42.9%)のうち,創感染5例,創部不良肉芽形成1例であった.皮弁壊死など重篤な合併症はなかった.術後再発症例は認めていない.考察:病巣切除,一期的創閉鎖,V-Y plastyは,手術手技が容易で再発が少なく安全性が高いことより容認できる手術術式である.今後症例を蓄積しながら慎重な経過観察が必要である.
著者
西垣 大志 金城 達也 伊禮 靖苗 西巻 正
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.78, no.8, pp.1855-1858, 2017

63歳,男性.前医にてS状結腸癌穿孔,腹膜播種の診断でS状結腸切除,小腸部分切除,横行結腸人工肛門造設術を施行.化学療法目的に当院紹介となり,外来化学療法中であった.傍ストマヘルニアを伴うストマ脱を認め,腹痛を繰り返すようになったため,ストマ修復およびヘルニア修復術を施行した.<BR>術前まで血清CEA値は504ng/mlと高値を示していたが,術後に10ng/mlと著明な低下を認めた.また,精査では約4.5cm大の播種巣1箇所のみであったため,ストマ脱手術の3カ月後に播種巣切除術を施行した.術後再発なく経過している.<BR>本症例のCEA高値の機序はストマ脱腸炎による可能性が示唆された.<BR>今回,腹膜播種を伴う進行下行結腸癌術後に発症した傍ストマヘルニアおよびストマ脱に対する手術後,著明なCEA値の低下を認めたため,播種に対する根治術が可能であった症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告した.
著者
上里 安範 砂川 宏樹 西巻 正
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.372-378, 2017
被引用文献数
1

<p> 今回,我々は十二指腸粘膜内癌に対して腹腔鏡補助下膵温存十二指腸全摘術(laparoscopic assisted panceras preserving total duodenectomy;LAPPTD)を施行したので報告する.症例は64歳の男性で,上部内視鏡検査で十二指腸ファーター乳頭近傍に全周性の粘膜異常を認めた.生検では明らかな悪性所見は認めなかった.病変部位と範囲より外科的十二指腸全摘の方針とした.内視鏡所見より悪性だったとしても粘膜内癌であると思われ,リンパ節郭清は必要ないと判断した.5 portで手術を開始し,十二指腸受動,胃幽門および上部空腸切離を腹腔鏡下で行った後,上腹部に小開腹を置いて十二指腸摘出,胆管空腸吻合,膵管空腸吻合を施行した.手術時間は11時間10分,出血量は310 mlだった.術後の経過は概ね良好だった.病理結果はduodenal cancer,深達度はMだった.術後2年6か月現在無再発で経過している.</p>
著者
田本 秀輔 金城 達也 佐村 博範 金城 章吾 西巻 正
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.65-67, 2017

<p>症例は47歳,男性。2,3日前から右下腹部痛が続き,その後に嘔気,悪寒および冷汗が出現したため救急外来を受診した。受診時は右下腹部に限局した圧痛および反跳痛を認めたが,発熱は認めなかった。腹部造影CT検査で上行結腸近傍に脂肪織混濁を認め,上行結腸垂炎と診断した。抗生剤治療を開始し,外来通院加療で軽快した。原発性腹膜垂炎は多くが自然軽快する予後良好な疾患である。臨床経過や腹部所見より鑑別診断として急性虫垂炎や憩室炎があげられるが,原発性腹膜垂炎は特徴的な画像所見を示すことが多いため,急性腹症の診断の際に本疾患を念頭に置くことで手術を含め,不要な治療を回避することができる。今回われわれは,造影CT検査で診断し,保存的に加療し得た原発性上行結腸垂炎の1例を経験したので文献的考察を含め報告する。</p>
著者
石野 信一郎 白石 祐之 堤 真吾 西巻 正
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.111-117, 2015-02-01 (Released:2015-02-17)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

右房内進展を伴う肝細胞癌の切除は人工心肺下での開心術を要し,肝切除のみに比べ侵襲が高い.我々は右房内へ進展した肝細胞癌に対し肝切除先行total hepatic vascular exclusion(全肝血行遮断;以下,THVEと略記)を達成,開心術をせず原発巣と右房内腫瘍栓を摘出しえた症例を経験した.本術式は心房内進展を伴う進行肝細胞癌に対し,開心術併用と比較し低侵襲術式になると思われた.症例は69歳男性で,検診で異常を指摘された.CT で肝右葉に右房内に進展する腫瘍を認め当院紹介となり,肝細胞癌の診断で手術を行った.術式は肝脱転,肝静脈根部剥離,右グリソン処理の後肝切離を行い,肝右葉が右肝静脈のみで繋がる状態とした.肝右葉の牽引により腫瘍栓が右房外に出ることをエコーで確認し,THVEの後に右肝静脈根部を切開,腫瘍栓と肝右葉を一括で摘出した.術後74日目に退院した.術後2年間,無再発生存中である.
著者
片柳 憲雄 武藤 輝一 田中 乙雄 鈴木 力 藍沢 喜久雄 西巻 正 田中 陽一 武藤 一朗 武田 信夫 田中 申介 鈴木 茂 田中 典生 藪崎 裕 大森 克利 多田 哲也 鈴木 聡 大日方 一夫 曽我 淳
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.968-976, 1991-04-01
被引用文献数
18

1989年末までの22年間に経験した食道癌症例814例のうち,他臓器に重複癌のある64例(7.9%)を対象として,手術術式,治療成績を中心に検討した.同時性2臓器重複癌は37例,異時性2臓器重複癌では食道癌先行が10例,他臓器癌先行が11例あり,3臓器以上の重複癌も6例に認めた.同時性重複癌の重複臓器は胃が25例と圧倒的に多く,このうち16例は早期胃癌であった.胃癌合併例では,早期癌が胃管作製時の切除範囲に含まれる場合を除いて胃全摘,結腸による再建を原則とした.同時性重複癌の両癌切除例の5生率は34.6%であり,少なくとも一方が非切除であった症例に対して有意に(p<0.05)良好であった.さらに,食道癌治癒切除例の予後は,5生率58.3%とほぼ満足できる成績であった.治療成績向上のためには,重複癌の存在を念頭においた診断と,両癌の治癒切除を目指した積極的な手術が重要であると思われた.