著者
西山嘉寛
出版者
岡山県林業試験場
雑誌
研究報告 (ISSN:03888509)
巻号頁・発行日
no.18, pp.33-66, 2002-03
被引用文献数
1

西山嘉寛・阿部剛俊:長伐期施業に対応する森林管理技術一高齢林内における下層植生の現存量の推定と林分収穫予想表の作成一岡山県林試研報18:33~66,2002本研究は、岡山県内のスギ、ヒノキ高齢林について、林内に下層植生を定着させるために必要な要因を明らかにするとともに、林齢10~150年までの林分収穫予想表を作成することを目的に行った。この研究から、以下の点が明らかになった。(1)淋齢と上層樹高の関係は、スギ、ヒノキともにミッチャーリッヒ式(Mitscherlich式)を当てはめた場合、最も相関が高かった。(2)上層樹高とha当たりの立木密度との関係は、スギ、ヒノキともに変形ゴンベルツ式(Gompertz式)を当てはめた場合、最も相関が高かった。(3)淋齢75~92年生のスギ13林分において、木本類と草本類を合わせた全下層植生の現存量と相関が高かった要因は、相対照度(決定係数R2=0.900**)、ha当たり樹冠投影面積合計(相関係数R=-0.919**)、ha当たり胸高断面積合計(R2=0.814**)、ha当たり立木密度(R2=0.717**)であった。(4)同林分の場合、全下層植生の植被率と相関が高かった要因は、相対照度(R=0.913**)、ha当たり樹冠投景多面積合計(R=-0.896**)、ha当たり胸高断面積合計(R2=0.778**)、ha当たり立木密度(R2=0.736**)であった。(5)林齢70~109年生のヒノキ17林分において、全下層植生の現存量と相関が高かった要因は、平均胸高直径(R2=0.737**)、ha当たり立木密度(R2=0.669**)、平均樹冠直径(R2=0.662**)であった。(6)胴林分の場合、全下層植生の植被率と相関が高かった要因は、平均胸高直径(R=0.770**)、ha当たり立木密度(R=-0.732**)、平均樹冠直径(R=0.706**)であった。(7)ha当たり立木密度と平均樹冠直径の関係は、林齢75~92年生のスギ林では一次式(R=-0.783**)、林齢70~109年生のヒノキ林では指数式(R2=O.881**)を当てはめた場合、長も相関が高かった。(8)林齢75~92年生のスギ林、林齢70~109年生のヒノキ林ともに、下層植生の木本類、草本類及び両者を合わせた全下層植生の現存量と植被率の間にはいずれも一次式による相関が認められた。(9)スギの場合、ha当たり立木密度と相対照度の関係はべき乗式が成り立った(R2=0.842**)。(10)立木欝度がha当たり500本未満に低下した場合、スギ林では下層植生の木本類、草本類、ヒノキでは木本類の現存量が指数的に増加していた。(11)収量比数(Ry)をスギで0.5程度、ヒノキで0.6程度に抑えれぱ、全下層植生の植被率を70%以上期待できる。(12)高齢級のスギ16林分、ヒノキ14林分に出現した下層植物は210種類であったが、このうち木本類はヒノキ林に、草本類とシダ類はスギ林にやや多い傾向がみられた。(13)ヒノキ14林分に偏って出現した木本類は、ヒサカキ、イヌツゲ、ヤブコウジ、コシアプラ等であった。(14)スギ16林分に偏って出現した草本類は、ヘクソカズラ、チヂミザサ、ミヤマカンスゲ、シダ類はリョウメンシダ、ミゾシダ、ジュウモンジシダ等であった。
著者
西山 嘉寛
出版者
岡山県農林水産総合センター森林研究所
巻号頁・発行日
no.32, pp.1-18, 2016 (Released:2017-05-17)

列状間伐後5~7年経過したヒノキ人工林32林分について,林床の下層植生量(木本類植生量,全植生量),植被率(木本類植被率,全植被率),植生高をそれぞれ目的変数,斜面勾配,伐開幅,残存幅,残存木の平均樹高,ササ類の有無を説明変数とし,数量化I類分析を行った結果,いずれも1%水準で有意な予測モデルを求めることができた。このモデルを用いて,列状間伐について,異なる伐採方法での全植被率,木本類植被率の推移をそれぞれ予測すると,ともに4残3伐が最も高い数値が得られたが,現状の伐採率を考慮すると,4残2伐(伐開幅約5.2m)が現実的であると想定された。一方で,2残1伐の場合は,全植被率及び木本類植被率は伐採幅が2伐以上の場合に比べ,明らかに低下していた。また斜面勾配が35度以上に達すると,全植被率及び木本類植被率とともに,急落傾向が認められたことから,このような斜面では,土留め工等の対策を講じる必要があると考えられる。岡山県北部一帯では,ササ類の定着が顕著なエリアとそうでないエリアに区分され,前者では,ササ類,後者では木本類の侵入・定着を基本とした下層植生の管理が第一と考えられる。下層に定着した木本類のうち,樹高が1.2m以上で,かつ高木層を形成する樹種は5種しか認められなかった。木本類の植被率を70%以上期待するためには,30本/m2,樹高1.2m以上の個体に限っては5本/m2程度それぞれ定着する必要があることことが示唆された。
著者
西山 嘉寛
出版者
岡山県農林水産総合センター森林研究所
雑誌
研究報告 (ISSN:03888509)
巻号頁・発行日
no.27, pp.91-97, 2011

列状間伐及び定性間伐を実施することにより,木本類及び草本類の種数及び個体数の増加,植被率の上昇が確認された。林床の植被率を70%以上確保するためには,早期の段階で,スギ・ヒノキの立木密度を600本程度まで下げる必要があることが示唆された。