著者
三枝 道生 牧本 卓史
出版者
岡山県農林水産総合センター森林研究所
雑誌
研究報告 (ISSN:03888509)
巻号頁・発行日
no.28, pp.11-16, 2012

全国的に報告されているカシノナガキクイムシの穿孔を受けたブナ科樹木が枯死する被害が,2009年度に初めて岡山県においても確認された。これを受け,県内における拡大を防ぐために発生状況の調査及び昆虫病原性線虫による防除効果を検討した。伐倒燻蒸処理実施下における発生状況は発生数,発生範囲ともに拡大しているものの,初確認から3年経過した現在においても鳥取県境から4km以内に留まっている。一方,2年目以降で被害が集中して発生した箇所の周辺では,調査漏れとみられる前年枯死木が確認されたことから,初期防除における被害探索の重要性が改めて示唆された。
著者
牧本 卓史
出版者
岡山県農林水産総合センター森林研究所
巻号頁・発行日
no.27, pp.73-82, 2011 (Released:2013-10-08)

マツノマダラカミキリの捕食寄生者であるサビマダラオオホソカタムシを松くい虫の天敵防除資材として活用する方法を検討することを目的とした研究を行った。和気町のアカマツ林に約1haの試験地を設け,3年間継続的にサビマダラオオホソカタムシを放飼した時の放飼効果と被害の推移を調べた。その結果,周囲にマツノマダラカミキリの発生源となる被害マツ林が存在するこの試験地においては,試験期間を通じて被害率は10%前後で推移し,被害を低減させることはできなかった。しかし,サビマダラオオホソカタムシの放飼により当該林分からのマツノマダラカミキリの脱出数を抑制し,サビマダラオオホソカタムシを徐々に定着させることで,試験地内のマツノマダラカミキリの穿入数や脱出数が減少する傾向が認められた。一方で,マツ材線虫病による枯死率はほぼ横ばい状態が継続していることから,サビマダラオオホソカタムシを活用した松くい虫の防除には,本種による駆除効果をさらに向上させる技術を確立することと併せて,周辺マツ林からのマツノマダラカミキリの飛来数を抑制するための緩衝帯を設けること等,既存技術との複合的な利用技術を確立し,マツノマダラカミキリの生息数をさらに低減させる方策を検討する必要があると考えられた。
著者
西山 嘉寛
出版者
岡山県農林水産総合センター森林研究所
巻号頁・発行日
no.32, pp.1-18, 2016 (Released:2017-05-17)

列状間伐後5~7年経過したヒノキ人工林32林分について,林床の下層植生量(木本類植生量,全植生量),植被率(木本類植被率,全植被率),植生高をそれぞれ目的変数,斜面勾配,伐開幅,残存幅,残存木の平均樹高,ササ類の有無を説明変数とし,数量化I類分析を行った結果,いずれも1%水準で有意な予測モデルを求めることができた。このモデルを用いて,列状間伐について,異なる伐採方法での全植被率,木本類植被率の推移をそれぞれ予測すると,ともに4残3伐が最も高い数値が得られたが,現状の伐採率を考慮すると,4残2伐(伐開幅約5.2m)が現実的であると想定された。一方で,2残1伐の場合は,全植被率及び木本類植被率は伐採幅が2伐以上の場合に比べ,明らかに低下していた。また斜面勾配が35度以上に達すると,全植被率及び木本類植被率とともに,急落傾向が認められたことから,このような斜面では,土留め工等の対策を講じる必要があると考えられる。岡山県北部一帯では,ササ類の定着が顕著なエリアとそうでないエリアに区分され,前者では,ササ類,後者では木本類の侵入・定着を基本とした下層植生の管理が第一と考えられる。下層に定着した木本類のうち,樹高が1.2m以上で,かつ高木層を形成する樹種は5種しか認められなかった。木本類の植被率を70%以上期待するためには,30本/m2,樹高1.2m以上の個体に限っては5本/m2程度それぞれ定着する必要があることことが示唆された。
著者
西山 嘉寛
出版者
岡山県農林水産総合センター森林研究所
雑誌
研究報告 (ISSN:03888509)
巻号頁・発行日
no.27, pp.91-97, 2011

列状間伐及び定性間伐を実施することにより,木本類及び草本類の種数及び個体数の増加,植被率の上昇が確認された。林床の植被率を70%以上確保するためには,早期の段階で,スギ・ヒノキの立木密度を600本程度まで下げる必要があることが示唆された。