著者
谷内 通 部家 司 西川 未来汰
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PJ-001, 2021 (Released:2022-03-30)

本研究はイシガメとクサガメの鏡に対する反応を検討した。実験1では,長方形の実験箱内の1つの壁に並んで設置した鏡と灰色の板に対して,カメが頭を向けたあるいは触れた時間を測定した。鏡と灰色板の左右位置は試行毎に交替した。8匹のカメは,灰色の板よりも鏡に対して有意に長く反応した。実験2では,灰色の実験箱の1面のみ透明な壁を設置し,透明な壁の先に同種他個体のカメが置かれた条件,透明な壁の先に何も置かれない条件,または透明な壁の前に灰色の板を設置する条件のいずれかと隣接する鏡に対する反応を比較した。カメは灰色の壁よりも鏡に対して有意に長く反応したことから実験1の結果が再現された。しかしながら,他個体の有無にかかわらず透明な壁と鏡に対する反応に有意な違いは認められなかった。本研究の結果は,カメが鏡に反応することを示した初めての知見である。しかし,本研究の結果からは,カメが鏡に反応したのは鏡の中に自己や同種他個体等を認識したからではなく,鏡の中に奥行きを認識し,おそらく実験箱から脱出することを目的として,鏡の向こう側へ行こうとしたからであることが示唆された。