著者
佐藤 至 西川 裕夫 齋藤 憲光 金 一和 大網 一則 津田 修治
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第32回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.75, 2005 (Released:2005-06-08)

【目 的】パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)は合成樹脂原料,撥水剤,コーティング剤など,様々な用途に使用されている。これらは極めて安定性が高いために環境中に長期間残留し,人や多くの野生動物においても蓄積が確認されているが,その毒性については十分な情報が得られていない。このため本研究ではマウスなどの実験動物とゾウリムシを用いてPFOSおよびPFOAの神経毒性について検討した。【方 法】8〜9週齢のWistar系雄ラットまたはICR系雄マウスにPFOSまたはPFOAを経口投与し,一般症状を観察するとともに超音波刺激に対する反応を観察した。また,ゾウリムシをPFOSまたはPFOAを含む種々の溶液に入れ,遊泳行動の変化を観察することにより毒性評価を行った。【結 果】PFOSおよびPFOAのマウスおよびラットに対する致死量は約500 mg/kgであった。これ以下の投与量では一時的な体重の減少または増加の抑制が認められたが,その他の一般症状に著変は見られなかった。しかし,PFOSはマウスで125 mg/kg以上,ラットでは250 mg/kg以上で超音波刺激による強直性痙攣を誘発した。PFOSによる痙攣は超音波刺激2時間前にジアゼパムまたはニフェジピンを投与しても抑制されなかった。一方PFOSおよびPFOAはゾウリムシに対して後退遊泳を誘発し,膜電位あるいは細胞内カルシウムに対する影響が示唆された。後退遊泳誘発作用はPFOAよりもPFOSの方が強かった。ジアゼパムおよび数種のCa2+チャンネルブロッカーは高カリウムによる後退遊泳は抑制したが,PFOSによる後退遊泳は抑制しなかった。また低カルシウム溶液中ではPFOSによる後退遊泳が増強された。以上の結果からPFOSは細胞外カルシウムの取り込みによらずに神経毒性を示す可能性が示唆された。
著者
Rafiqul Islam Promsuk Jutabha Arthit Chairoungdua 平田 拓 安西 尚彦 金井 好克 遠藤 仁
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第32回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.36, 2005 (Released:2005-06-08)

アミノ酸輸送系B0は、中性アミノ酸の経上皮輸送を担当するトランスポーターであり、小腸及び腎近位尿細管の管腔側膜に存在するNa+依存性トランスポーターである。水俣病の起因物質であるメチル水銀は、生体内においてシステインと非酵素的に容易に反応し、メチオニンと類似構造をもつ化合物を生成するため、アミノ酸トランスポーターを介して吸収され、血液組織関門を通過すると考えられている。われわれはすでに、輸送系Lアミノ酸トランスポーターLAT1及びLAT2が、血液・脳関門、胎盤関門に存在し、メチル水銀輸送を媒介することを明らかにした。本研究は、メチル水銀の腸管吸収の分子機序を明らかにするために、最近同定された輸送系B0トランスポーターB0AT1をアフリカツメガエル卵母細胞に発現させ、メチル水銀輸送活性を検討した。B0AT1によるロイシンの取り込みは、メチル水銀-システイン抱合体により濃度依存的に抑制され、そのIC50値はアミノ酸輸送のKm値に比して有意に低く、B0AT1はメチル水銀-システイン抱合体を高親和性に受け入れることが明らかとなった。B0AT1によるメチル水銀-システイン抱合体輸送を確認する目的で、アフリカツメガエル卵母細胞に発現させたB0AT1において、14C-メチル水銀の輸送活性を測定した。その結果、14C-メチル水銀単独では輸送されないが、システイン存在下で14C-メチル水銀がB0AT1によって輸送されることが示された。このシステイン存在下でのメチル水銀のB0AT1を介する輸送は、B0を抑制するインヒビターであるBCH(2-aminobicyclo-(2,2,1)-heptane-2-carboxylic acid)により有意に抑制され、システイン存在下での14C-メチル水銀のB0AT1を介する輸送が確認された。本研究によりメチル水銀がシステイン抱合体としてB0AT1を介して小腸から吸収されることが示唆された。
著者
吉川 理恵 藤川 真章 山本 利憲 堀井 郁夫
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第32回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.43, 2005 (Released:2005-06-08)

近年医薬品開発における安全性評価は、多種類の化合物を短期間に評価することが求められており、in vivoの毒性を反映するin vitroスクリーニング系の確立が必要とされている。前回,医薬品開発において問題視される肝毒性を標的とし、肝細胞における毒作用のスクリーニング系確立のためのbiomarker探索を目的として、初代培養肝細胞のプロテオミクス解析を行ない,ミトコンドリアに存在する代謝関連タンパク質や酸化ストレス関連タンパク質の変動を認めたことを報告した。今回,肝毒性を惹起することで知られている各種化合物の単回投与ラット肝細胞を用いて酸化ストレス関連タンパク質の免疫組織学的検出を試み,in vitro プロテオミクス解析の結果とin vivo病理組織学的および免疫組織学的検索結果を比較することによりin vitroおよびin vivo肝毒性の発現の相違を比較検討した。その結果,投与後24時間において,アセトアミノフェンおよびテトラサイクリン投与肝において,化合物に特徴的な肝毒性を再現することができた。また,全ての群において発現の増減が共通する酸化ストレス関連タンパクはみられなかったが,いずれの化合物を投与した肝細胞においても投与後6時間より何らかの酸化ストレス関連タンパクの増加を認めた。これらの酸化ストレス関連タンパク質はミトコンドリア呼吸の調整に関連して動くことが知られており,形態学的変化は軽微であっても,細胞の機能低下が起こっていることが明らかになった。
著者
早瀬 環 山本 淑子 山本 啓一
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第32回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.121, 2005 (Released:2005-06-08)

我々はこれまで、濫用薬物であるコカイン(COC)やメタンフェタミン(MA)の不安惹起作用について、マウスにおける高架式十字迷路法などの方法によって調べてきた。COCやMAによる不安症状は、他の原因による不安症状同様、ベンゾジアゼピン受容体やセロトニン受容体などの受容体と関係があるといわれ、様々な抗不安薬による抑制効果が検討されてきたが、最近カンナビノイド(CB)受容体との関係が示唆されている。特にanandamide(AEA)など内因性CB受容体作用薬(内因性CB)は抗不安作用など様々な治療効果を示すことが証明されている。本研究ではCOC及びMAによる不安症状に対する内因性CBの影響を調べ、他の抗不安薬との比較を試みた。【方法】雄ICRマウスでCOC及びMAの不安惹起作用に対するベンゾジアゼピン受容体(diazepamなど)、セロトニン受容体(ketanserin、ondansetronなど)などに関係のある抗不安薬、及び内因性CBであるAEA、2-arachidonylglycerol、N-arachidonyldopamine(NADA)、noladin ether、virodhamine(VD)の影響を高架式十字迷路法(壁のあるenclosed armへの嗜好性の変化)によって調べた。【結果と考察】高架式十字迷路法では、COC 30mg/kg又はMA 4mg/kgの急性投与群(腹腔内投与)、及びCOC 15 mg/kg又はMA 2mg/kgの慢性投与群(7日間の投与)の両方で、3日間以上の不安症状(壁のないopen armへの移動回数の減少、壁のあるclosed armへの移動回数の増加、open armでの滞在時間の減少、open armに最初に移動するまでの時間の延長、すくみ緊張姿勢の増加など)の継続が認められたが、(最終)投与40分後では、急性投与群のみで著明な不安症状が認められた。抗不安薬については、投与40分後では、diazepam(5mg/kg)、chlormethiazole(10mg/kg)、ketanserin(5mg/kg)、ondansetron(0.01mg/kg)、及びCB受容体に対して部分antagonistとしても作用するVD以外の内因性CBの抗不安作用(上記の評価値の回復)が急性投与群で認められたが、投与3日後では、内因性CBのみに急性投与群と慢性投与群の両群での抗不安作用が認められ、作用の継続性とCOCやMAの退薬症状に対する効果の可能性が示唆された。また内因性CBなどの効果がCOC群とMA群の両群で認められることが示された。