著者
宮﨑 和 島岡 秀奉 山﨑 香織 西本 愛 森澤 豊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ab1328, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 肩関節の運動療法において,腱板機能不全の改善を目的とした運動課題や肩の主動作筋などの運動課題に関する知見は多く,臨床的にもこれらの筋の機能改善が重要視されている.しかし,肩関節疾患の患者に認められる肩関節運動変容として,いわゆる「肩の代償運動」でリーチ運動や挙上を行っている場合が多く,肩関節の機能的特性を考えると単一の筋群もしくは運動方向に対するトレーニングでは,挙上能力の改善に難渋する例もしばしば経験する.また腱板断裂術後患者では自動運動が許されるまでの間に修復腱板以外の健常な肩関節筋群が運動様式の変化とともに廃用に陥ることが予測され,その後の肩関節挙上,リーチ運動などの回復に長期間を要する.そこで今回われわれは,肩関節周囲筋の中でも体表にあり比較的表面筋電図の測定が容易な僧帽筋群に着目し,ADLおよびAPDLを考慮し立位における肩関節屈曲および外転運動における僧帽筋活動を健常者で検討したので報告する.【方法】 対象は健常男性7名(両肩14肢,平均年齢22.4±1.8歳)とし,被検筋は左右の肩関節の僧帽筋上部・中部・下部線維とした.測定は,両上肢を下垂し後頭隆起および臀部を壁に接触させた立位を開始肢位とし,運動課題は両側肩関節屈曲および外転位を30°,60°,90°の合計6パターンで各5秒間保持させ,各運動とも3回施行した.各運動課題中の筋活動は,NeuropackS1(日本光電製)にて導出し,得られた5秒間のEMG値のうち安定した3秒間の積分値を算出し,左右3回試行分の平均EMG積分値を個人のデータとした.統計学的処理として,屈曲および外転運動とも各筋の30°での平均EMG積分値を100%とし,平均EMG積分値の規格化を行った上で,7名(14肩)の各僧帽筋の線維毎に各運動課題における筋活動の相対的な変化を一元配置の分散分析にて比較した.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には事前に本研究の目的・方法と研究参加に関するリスクと個人情報の管理に関する被検者説明書を作成し十分な説明を行った上で,紙面にて同意を得た.【結果】 各筋の屈曲および外転30°での平均EMG積分値を100%とした場合,肩関節屈曲動作において,角度60°では僧帽筋上部線維は157%,中部線維111%,下部線維163%となり,90°では僧帽筋上部線維350%,中部線維114%,下部線維190%となり,僧帽筋上部および下部線維に屈曲角度の増加に伴う筋活動の増大がみられた(P<0.01).一方,肩関節外転運動においては,角度60°で僧帽筋上部線維239%,中部線維164%,下部線維96%となり,90°では僧帽筋上部線維568%,中部線維245%,下部線維117%となった.外転角度の増加ともない僧帽筋全線維に筋活動の増大がみられ,特に僧帽筋上部および中部線維にその変化が顕著であった(P<0.01).【考察】 肩関節屈曲運動では,肩甲上腕関節の動きに伴い肩甲骨は上方回旋する.肩甲骨の上方回旋は前鋸筋と僧帽筋上部・下部線維の共同した活動により出現する.過去の報告では,僧帽筋下部線維は起始を肩甲棘内側縁に持つため肩甲骨上方回旋の支点となる.また肩甲上腕関節を屈曲保持した場合,肩甲骨に前傾方向へのモーメントが発生し,この前傾モーメントを制動するのが僧帽筋下部線維であるとされる.本研究でも肩関節屈曲時に僧帽筋上部・下部線維の筋活動が増加しており,これら僧帽筋群の協調した筋活動により肩甲骨上方回旋が起こっていることが示唆され,立位時の肩関節屈曲時においても,僧帽筋下部線維が肩甲帯の安定性に機能すると推察された.一方,肩関節外転運動では肩甲骨に下方回旋モーメントが発生し,これを制御するために鎖骨外側・肩峰・肩甲棘上縁に付着する僧帽筋上部・中部線維が活動するとされ,本研究においても,肩関節外転時に僧帽筋上部・中部線維の筋活動が増加しており,立位時においてもこれらの僧帽筋群が協調して肩甲骨を内転方向に固定し,肩甲帯の安定性に機能することが推察された.【理学療法学研究としての意義】 本研究は,立位でのリーチ運動や空間保持における肩関節周囲筋の活動様式を確認する上で,重要な筋電図学的分析であると考える.また肩関節疾患患者の挙上運動における,いわゆる「肩の代償運動」の要因を検討する際に必要な知見であると考えられ,より効果的な理学療法プログラムの立案のために必要性の高い研究であると考える.
著者
道免 和文 千住 恵 西本 愛 重松 宏尚 山崎 文朗 入江 康司 石橋 大海
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.98, no.5, pp.564-568, 2001-05-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
15
被引用文献数
2

症例は68歳,女性.蛋白尿,浮腫を主訴に入院した.低補体血症,高IgM血症,クリオグロブリン血症を認め,腎生検で膜性増殖性糸球体腎炎の所見が得られた.同時に肝機能障害,HCV RNA血症を認め,組織学的に慢性活動性肝炎像を示した.クリオグロブリン血症,膜性増殖性糸球体腎炎をともなった慢性C型肝炎と診断し,インターフェロン療法を施行した.HCV RNAの陰性化と共に尿蛋白の著減,クリオグロブリン血症の改善がみられた.本症例はクリオグロブリン血症,膜性増殖性糸球体腎炎,慢性C型肝炎の相互の関連性を強く示唆する貴重な症例と考えられた.