著者
西村 優佑 今井 啓輔 濱中 正嗣 山﨑 英一 中ノ内 恒如 木村 雅喜
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.620-626, 2020 (Released:2020-09-29)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は血液透析中の72歳男性.後頭部の頭痛を急性発症し,同部に血管雑音が聴取された.頭部MRIで頭蓋内出血はなく,頭部MRAで左横静脈洞-S状静脈洞(transvers-sigmoid; T-S)にかけて異常信号をみとめた.入院後も頭痛は持続し,血管造影にて左T-S周囲のシャントはなかったが,左上肢内シャント部造影にて左腕頭静脈(brachiocephalic vein; BCV)・内頸静脈の閉塞と左T-Sへの頭蓋内静脈逆流をみとめた.内シャント肢側の左BCV閉塞に起因する頭蓋内圧亢進による頭痛と診断し同閉塞部位を血管拡張術で再開通した.術直後から頭蓋内静脈逆流は低減し頭痛も消失した.透析患者に急性発症する頭痛の原因としてBCV閉塞による頭蓋内静脈逆流も念頭に置くべきである.
著者
深沢 良輔 西村 優佑 武澤 秀理 藤井 明弘
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.757-760, 2021 (Released:2022-05-31)
参考文献数
9

16歳女性.発熱,頭痛が出現した2週間後より変動する意識障害,独語,従命不良が出現した.頭部MRIで異常なく,卵巣腫瘍の合併はなかった.経過から腫瘍非合併の抗n–methyl–D–aspartate(NMDA)受容体脳炎と考え,ステロイドパルス,単純血漿交換,免疫グロブリン静注療法,免疫抑制薬を併用した集学的免疫療法を実施した.最重症時は挿管,ICU管理が必要な状態まで増悪がみられたが,早期より各免疫療法を繰り返し行ったことで,意識障害の出現から2か月程度の経過で機能予後良好なレベルまで症状改善が得られた.抗NMDA受容体脳炎の長期予後調査で81%は24か月後の機能予後良好(modified Rankin Scale:mRS 0–2)と報告されたが,回復するまでに時間を要することが示されている.抗NMDA受容体脳炎において早期の積極的な集学的免疫療法が奏効する可能性が示唆された.