著者
深沢 良輔 西村 優佑 武澤 秀理 藤井 明弘
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.757-760, 2021 (Released:2022-05-31)
参考文献数
9

16歳女性.発熱,頭痛が出現した2週間後より変動する意識障害,独語,従命不良が出現した.頭部MRIで異常なく,卵巣腫瘍の合併はなかった.経過から腫瘍非合併の抗n–methyl–D–aspartate(NMDA)受容体脳炎と考え,ステロイドパルス,単純血漿交換,免疫グロブリン静注療法,免疫抑制薬を併用した集学的免疫療法を実施した.最重症時は挿管,ICU管理が必要な状態まで増悪がみられたが,早期より各免疫療法を繰り返し行ったことで,意識障害の出現から2か月程度の経過で機能予後良好なレベルまで症状改善が得られた.抗NMDA受容体脳炎の長期予後調査で81%は24か月後の機能予後良好(modified Rankin Scale:mRS 0–2)と報告されたが,回復するまでに時間を要することが示されている.抗NMDA受容体脳炎において早期の積極的な集学的免疫療法が奏効する可能性が示唆された.
著者
後藤 幸大 岡 英輝 横矢 重臣 橋本 洋一 越後 整 塩見 直人 武澤 秀理 田邑 愛子 藤井 明弘 日野 明彦
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.357-361, 2018 (Released:2018-09-25)
参考文献数
9

頭痛・頸部痛など解離に伴う痛みで発症した椎骨動脈解離は比較的予後良好とされるが,その中にくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage: SAH)を来し予後不良となる例がある.いずれの例がSAH を来すのか予め把握するのは困難だが,痛みで発症した椎骨動脈解離を初診時に確実に診断することが重要である.当院初診時に診断に至らず,SAH を発症し再受診した4 例を検討し報告する.4 例は年齢層,頭痛や頸部痛が中等度以上かつ悪化すること,時間外に救急外来を受診していることが一致していた.再診後は速やかに血管内治療を行い,退院時mRS 0 が2 例,mRS 4 が2 例だった.日常診療において上記のような患者に遭遇した場合,椎骨動脈解離を念頭にbasi-parallel anatomical scanning を含めた頭部MRI/MRA,頭部造影CT を考慮すべきである.SAH を来し再受診した場合,速やかな治療で予後良好となる可能性がある.
著者
小谷 紗稀 深沢 良輔 武澤 秀理 馬場 正道 曽根 淳 藤井 明弘
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.194-199, 2021 (Released:2021-03-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2

症例は70代の男性3例.主訴は全例歩行障害だった.全例に縮瞳と四肢・体幹失調を認め,mini-mental state examinationは2例,frontal assessment batteryは全例で低下していた.頭部MRIで白質脳症所見と小脳萎縮,拡散強調画像で皮髄境界の高信号を認めたが,2例は経過観察となっていた.全例,皮膚生検で抗ユビキチン抗体と抗p62抗体陽性の核内封入体,遺伝子検査でNOTCH2NLCのCGGリピート伸長を認め,神経核内封入体病と診断した.本症は物忘れを主訴とすることが多いが,失調による歩行障害で受診することもあり,特徴的な頭部MRI所見を手掛かりに皮膚生検や遺伝子診断で精査を進めることが重要である.
著者
蒔田 直輝 尾原 知行 永金 義成 村西 学 田邑 愛子 武澤 秀理 小泉 崇 山本 康正
出版者
京都第二赤十字病院
雑誌
京都第二赤十字病院医学雑誌 = Medical journal of Kyoto Second Red Cross Hospital (ISSN:03894908)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.113-117, 2011-12

症例は37歳の女性。突然左頸部から肩にかけて痛みが出現し、その数日後から喉頭の違和感、ものの飲み込みにくさが出現し声が嗄れるようになった。発声は鼻声、嗄声を認めた。発声の持続は5秒程度と障害されていた。左軟口蓋挙上不良、左咽頭感覚低下、咽頭反射低下、左声帯傍正中固定を認め、左舌咽神経および迷走神経の障害が考えられた。血液検査、髄液検査は正常、ヘルペスのウイルス抗体価は既感染パターンであった。頭部MRIガドリニウム造影で左舌咽・迷走神経の走行と一致する部位に造影効果を認めた。Bell麻痺で顔面神経の造影効果がみられる報告があり、類似のメカニズムで、何らかの炎症性ニューロパチーが考えられた。ステロイドパルスと後療法により、いずれの症状も完全に改善した。また頭部MRIで造影されていた左舌咽・迷走神経の造影効果も消失した。下部脳神経麻痺の鑑別に、造影MRIが有用である。