著者
西村 史子
出版者
共立女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、諸外国の非就学型の義務教育と公的支援について調査確認し、日本の義務教育の形態及び無償性の枠組みを柔軟化する試みである。米英仏ではホームエデュケーションとして制度化され、立法府で再三論議されながら、障害教育を除き、国家から家庭への経済的支援は殆ど無い。地方政府や民間奨学団体による支援は認められる。米国では、家庭の負担に対し、所得税の控除等を配慮している州はある。途上国では、ノンフォーマルエデュケーションを通じて、義務教育を拡充してきたが、近年は就学義務を徹底しつつある。政府はホームスクーリングの支援制度、登録制や監督強化、高等教育機関への進学保障を通じて、公教育への包摂化を進めている。
著者
西村 史子 Fumiko Nishimura
雑誌
共立国際研究 : 共立女子大学国際学部紀要 = The Kyoritsu journal of international studies
巻号頁・発行日
vol.33, pp.117-130, 2016-03

The purpose of this study is to make it clear how homeschoolers can get the financial assistance from the government in the U.S., focusing on the state tax deduction and tax credit. Only in four states, Minnesota, Illinoi, Louisiana and Indiana, the home schooling families are benefited from the income tax breaks for their education expenses. These states have a couple of characteristics in common. The first is the state church separation clause does not have the sentences to prohibit the tax allowance for the education expenses. The second is 'homeschool' is defined as private school in the state laws. Finally the federal supreme court decisions have tended to support the state financial aid policies such as school vouchers to the k-12 students who choose private or sectarian schools. Based on these cases, there occurs possibilities for the parents who homeschool their children, to get the federal income tax deduction, one of which is known as "Educator Expense Deduction" in the IRC. The teachers working for the public or private schools certified by the states have been eligible for this deduction since 2002. Although the HSLDA has lobbied in the Congress and the Senate, the federal government never admits the homeschoolers can get it.
著者
西村 史子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.43-54, 2008-03

1951(昭和26)年に導入された大学入学資格検定は、高等学校に代わる唯一の高等教育機関へのバイパスであった。勤労青年に励みを与えるための制度は、1980年代に高等学校への全入時代に突入して高等学校中途退学者が増加し、1990年代の小中学校での不登校児童生徒の増加と社会的ひきこもりの顕現化により、その目的と意義を変えた。すなわち、学校教育の非適応者に社会への復帰を果たすための救済装置となって、大学受験を自明とする富裕層出身の少年達が同試験を受けるようになっている。さらに2005(平成17)年に高等学校卒業程度認定試験に名称を変更し、受験資格を大幅に緩和して迎えた新たな段階では、高等教育への多様なアクセスが可能になる中で、新たな意義づけと具体的な制度保障が求められている。
著者
西村 史子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.2, pp.79-91, 2009-03

日本の義務教育制度は、就学義務を原則としてきたが、近年の規制緩和の動向の中で、これは揺らぎつつある。1967(昭和42)年に導入された「義務就学猶予・免除者等の中学校卒業程度認定試験」は、当初は養護学校での教育もままならない病弱・虚弱の児童生徒に高等学校進学の希望を与えるための例外的措置であったが、養護学校の義務化、不登校生徒児童生徒や外国人子女への対策が講じられて、教育選択の自由を保障する一制度となっている。しかしながら現在では、むしろ日本の義務教育学校を利用できない、あるいはそれから除去された裕福ではない外国人子女に後期中等教育機関への進学を保障する救済機能を果たしつつあり、その教育費用の支弁の在り様を、日本国憲法の「義務教育の無償」規定を改めて見直しながら検討する段階を迎えている。