著者
西村浩樹 桑原 教彰
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.59-66, 2017 (Released:2017-06-30)

日本において、1980年代に提唱された「ゆとり教育」により、学習内容の削減や指導時間の大幅な削減が行われ、学校は、週5日制授業が導入された。OECD(経済協力開発機構)が、2000年から3年ごとに実施している学習到達度調査(PISA)では、読解力において2003年に8位から14位、2006年には15位に順位を大幅にさげ、数学的リテラシーにおいても、2003年には1位から6位、2006年に6位から10位に下げる結果になるなど、「ゆとり教育」におる削減された学習指導要領での指導の影響から日本の学力低下問題が指摘されるようになった。ゆとり教育を取り入れた背景として、それまでの「詰め込み教育」と呼ばれ、1970年代までに実施されていた知識重視の増大した学習量が、創造力の欠如やテストが終わると忘れてしまう剥落学力と言われる問題があるとされたこと、また、学習内容を理解し、知識として取り入れていくことができず、授業についていけないことが原因で生徒間の学力格差が広がり、不登校や落ちこぼれなどの問題があったことが要因としてある。このため、2008年の「脱ゆとり教育」と称された学習指導要領では、「生きる力」を育むとし、学習面では、主に「基礎的な知識・技能の習得」を目的に改訂され、授業時間数は増加し、学習内容も増加させるなど大きく方向転換が図られた。また、基礎学力以外にも思考力、表現力を身につける必要性が指摘されている。この学習指導要領の改訂により、読解力では、2012年には15位から7位、数学的リテラシーでは、10位から7位に順位を上げる結果となった。つまり、基礎学力を習得することは、思考力・応用力・表現力を育成する上で必要な力であると言える。そこで本研究は、学習者が、学習をする際の認知過程に焦点をあて、学習材料と自身の知識を関連づける学習方法を検討するため、文字に着色することによる視覚的効果によって学習効果を向上させる目的に使用される蛍光マーカーペンを用いた学習方法が、学習時の認知過程、特に視線移動回数や視線停留時間にどのような影響を及ぼすかを検証し、その評価システムの開発を目的とした。