著者
西田 かおり 大瀧 雅寛 荒巻 俊也
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.362-371, 2016

<p>&emsp;途上国の成長等により工業用水需要量の急増が懸念され,今後の需要量予測のための様々な予測モデルが提案されている.本研究では,国内総生産(GDP)及び水利用効率改善率<i>η</i>を独立変数としたモデル(高橋ら,2000)にて,より正確な予測を目的として<i>η</i>決定方法を検討した.解析対象61カ国を国毎の各業種占有割合を考慮したクラスタ分析により,それぞれ,産油国,先進国~中進国,中進国~発展途上国,発展途上国が主に属す4クラスタに分類した.クラスタ毎に<i>η</i>に関連すると考えられた因子(GDP成長率,水資源賦存量等)と<i>η</i>の相関を検討した.決定因子はクラスタ毎に異なり,産油国中心,中進国~発展途上国中心の2クラスタで相関は高くなった.また<i>η</i>は変化すると仮定し,国毎に<i>η</i>差分(&Delta;<i>η</i> )と一人当たりGDP<sub>PPP</sub>や<i>η</i>との相関を調べた結果,一人当たりGDP<sub>PPP</sub>で分類できた.一年当たりの<i>η</i>差分(&Delta;<i>η</i>/year)は一人当たりGDP<sub>PPP</sub>が14,000 $ よりも大きい国では0.00345 の定数となり,14,000 $ 以下は国毎にばらついた.以上の結果を利用した<i>η</i>の推定により,より正確な工業用水需要量予測ができると考えられた.</p>