著者
栗栖 聖 齊藤 修 荒巻 俊也 花木 啓祐
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.307-324, 2017-09-30 (Released:2017-09-30)
参考文献数
31

東京都八丈島を対象に,島への訪問意図を規定する因子の構造をモデル化を通して検討した。特に自然および旅行への態度が,自然環境や地熱発電所といった島の各地域資源への訪問意図を通じて,どのように島への訪問意図に影響を与えているかを明らかにすることを研究目的とした。東京都民を対象にオンラインアンケートを実施し,29,616名のサンプルを得た。八丈島を訪問したいと思うかを尋ねた「八丈島訪問目標意図」では,全体として「やや思う」を少し超えた値となった。同意図は男性の方が女性より有意に高く,50代以上になると年齢とともに有意に意図が上がっていた。同意図へ影響を与える意図としては,自然環境探索意図と温泉訪問意図が高く,また島全般への訪問意図も大きく影響していた。自然への態度としては,「脅威をもたらす存在」「癒しを得る存在」「人により支配される存在」という自然観の3因子が抽出された。また,旅行への態度としては,「健康回復欲求」「文化見聞欲求」「自己拡大欲求」「意外性欲求」の4つの因子が抽出された。これらの因子得点は,性別および年代によって大きく異なっていた。これらの中で,八丈島への訪問意図へ影響を与えるものとしては,自然への態度の中では,「脅威をもたらす存在」および「癒しを得る存在」としての自然観がモデル内に組み込まれたが,その影響は大きくはなかった。一方,旅行に対する態度の中では,「健康回復欲求」と「文化見聞欲求」がモデルに組み込まれ,特に後者が訪問意図に与える影響が大きかった。
著者
西田 かおり 大瀧 雅寛 荒巻 俊也
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.362-371, 2016

<p>&emsp;途上国の成長等により工業用水需要量の急増が懸念され,今後の需要量予測のための様々な予測モデルが提案されている.本研究では,国内総生産(GDP)及び水利用効率改善率<i>η</i>を独立変数としたモデル(高橋ら,2000)にて,より正確な予測を目的として<i>η</i>決定方法を検討した.解析対象61カ国を国毎の各業種占有割合を考慮したクラスタ分析により,それぞれ,産油国,先進国~中進国,中進国~発展途上国,発展途上国が主に属す4クラスタに分類した.クラスタ毎に<i>η</i>に関連すると考えられた因子(GDP成長率,水資源賦存量等)と<i>η</i>の相関を検討した.決定因子はクラスタ毎に異なり,産油国中心,中進国~発展途上国中心の2クラスタで相関は高くなった.また<i>η</i>は変化すると仮定し,国毎に<i>η</i>差分(&Delta;<i>η</i> )と一人当たりGDP<sub>PPP</sub>や<i>η</i>との相関を調べた結果,一人当たりGDP<sub>PPP</sub>で分類できた.一年当たりの<i>η</i>差分(&Delta;<i>η</i>/year)は一人当たりGDP<sub>PPP</sub>が14,000 $ よりも大きい国では0.00345 の定数となり,14,000 $ 以下は国毎にばらついた.以上の結果を利用した<i>η</i>の推定により,より正確な工業用水需要量予測ができると考えられた.</p>
著者
大塚 佳臣 中谷 隼 荒巻 俊也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.II_109-II_116, 2015 (Released:2016-06-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1

荒川流域をモデルとして,流域圏全体を対象とした水利用システムに対する環境・社会・経済面にわたる様々な属性を網羅的に扱い,それらに対する住民の個人別選好をACBC(Adaptive Choice Based Conjoint Analysis)を用いて計測した上で,その多様性を評価するのと同時に,それらの選好を持つようになった背景について考察を行なった.その結果,属性間のバランス(41%),事業コスト(23%),地盤沈下(24%),水道水安全性(12%)をそれぞれ重視する4つの住民グループの存在が認められた.これらのグループは,性別,年齢層,居住地との関連はなく,環境問題全般,身近な水辺,水道水に関する意識といった心理的側面の特性を背景にそれぞれの選好を形成していることが明らかになった.
著者
大塚 佳臣 荒巻 俊也
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.III_365-III_372, 2014
被引用文献数
2

パーソナル・コンストラクト理論に基づき,水辺経験の履歴が都市河川に対する意識に与える影響について,アソシエーション分析を用いて確率論的に評価を行った.その結果,日常生活で河川と関わりの深い経験をすることで,80%以上の確率で普段目にする河川(近隣河川)に対して人より肯定的な意識を持つようになる一方で,幼少時代に学校から水辺で遊ぶことを制限され,かつ現在の近隣河川がきたないと感じる経験を経ると,65%以上の確率で近隣河川に対して人より否定的な意識をもつことが明らかになった.近隣河川への肯定的な意識を高める上では,水辺に親しむこと経験を増やすこと,否定的な意識を持たせないようにするためには,学校や保護者が子供の水辺遊びを制限せず見守る姿勢を持つことが必要である.
著者
西山 悠介 中谷 隼 栗栖 聖 荒巻 俊也 花木 啓祐
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.II_1-II_10, 2011 (Released:2012-03-16)
参考文献数
25
被引用文献数
3

持続可能な社会の実現に向けた都市構造の再構築において住民の選好を反映していくために,住民選好を考慮した居住地選択行動の解析を行った.宇都宮都市圏に住む10年以内に移転を行った人を対象にアンケート調査を行い,選好の多様性及び特徴を分析した.まず,居住地属性26項目について移転時における重視尺度を尋ねる質問の回答結果に因子分析を使い,居住地属性選好因子を3因子抽出した.そしてこの因子得点にクラスタ分析をかけることで,同質な居住地選好を持つ6つのグループに類型化を行った.続いて各クラスタの移転傾向や,クラスタに属する人の特徴の分析を行った.さらにコンジョイント分析によって,代表的な7つの居住地属性について定量的な解析を行い,クラスタ間で特徴の比較を行った.