著者
半沢 嘉基 西郡 亨 原 泰裕 久住 治彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1726, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】現在,医療現場において安全管理への取り組みが積極的に行われている。某リハビリテーション科(以下リハ科)も平成26年度よりインシデント対応・対策係り(以下係り)を発足した。現状の報告書は,アクシデント中心の報告様式であり,インシデントを把握するには不十分であり,提出は所属する病棟・チームの役職者,所属長へ内容の確認をしていた。事故事例の提出はあるがヒヤリハットレベルでの提出件数は少ない状況である。現状では件数が少なく,ハインリッヒの法則を下にヒヤリハット件数を増やすことを係りの課題とした。また,管理されていない点も問題としシステムの修正を行った。科内独自のヒヤリハット報告書(以下報告書)を作成し,個人で記入し所定の箱へ提出する様に変更した。報告書は係りで月ごとに分析し病棟・チームごとにフィードバックを行った。報告書導入後スタッフへ意識調査を行い,提出件数と併せて今後のリハ科の安全管理について検討したので報告する。【対象および方法】平成27年度4月から報告書を作成し,リハ科全スタッフ(PT49名,OT16名,ST10名)へ報告過程の変更,報告書の活用方法を指導し提出を促した。報告書は無記名で,日付,事例内容,可能であれば対応策を記載させた。対象期間は平成27年4月1日~9月30日で,スタッフに対し意識調査を無記名選択記述方式,自由記載にて実施した。アンケートは報告書導入後ヒヤリハットが増加した・安全への意識が高まったか,報告書の提出方法,自己意識についての9項目の二項選択形式とした。統計学的処理は報告書の提出の有無で2群に分け,各設問に対してx二乗検定を用いて比較した。解析にはR2.8.1を用い有意水準は5%とした。【結果】アンケートの回収数は70名(回収率93.3%)で,報告書を提出したスタッフが56名であった。報告書総数は76件,月平均は12.7件。アンケート調査で「報告書導入後安全に対する意識は高まった」と回答したのが全体で59名(84.3%)。提出をしていない14名の内11名も意識は高まったと回答した。「報告書を書くのは面倒」と答えたのが全体で31名であった。各設問の二群比較の結果は「報告書導入後にヒヤリハットすることが増えたか」で有意差はみられた(p<0.05)。その他の質問には有意差はみられなかった(n.s)。【結論】全体的に安全に対する意識は高まった結果となり,科内へのフィードバックにより各スタッフが安全に対して考える一助となったと思われる。報告書の提出の有無で安全に対する意識の変化に有意差はなかった。しかし,「報告書を書くのは面倒」という回答もあり,報告書の運用方法を再検討する必要があることが分かった。また,インシデントを精査する為に報告書の記載内容の検討も必要である。今後は科内でのフィードバックと共に知識・技術を高めるように講義を行い,安全管理能力・意識の向上が望ましいと考える。
著者
西郡 亨 今井 祐子 堀本 ゆかり
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.53-58, 2021 (Released:2021-02-24)
参考文献数
23

〔目的〕本研究は,リハビリテーション専門職(リハ職)の認知する組織風土類型ごとに職務満足度と職業性ストレスを比較することを目的とした.〔対象と方法〕総合病院に勤務するリハ職102名を対象に,組織風土尺度と職業性ストレス調査票を用いて調査を実施し,組織風土の類型ごとに職務満足度や職業性ストレスを比較した.〔結果〕回答者は89名であった.職務満足度,環境ストレス,仕事裁量度,職業適性度,働きがい,上司サポート,同僚サポートの因子と組織風土類型間で有意な差を認め,イキイキ型の組織風土が他3類型と比べ職業性ストレスが低かった.〔結語〕組織風土は職務満足度と職業性ストレスに関連することが明らかとなった.職業性ストレスや職務満足度への対応は個人のみならず,組織風土を考慮する必要がある.