著者
石野 麻衣子 堀本 ゆかり
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.419-425, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
19

〔目的〕理学療法士のメンタリング行動特性に関する行動指標を作成し,信頼性と妥当性を検証すること.〔対象と方法〕臨床業務に従事し,かつ職員指導経験がある経験年数5年以上の理学療法士を対象に,web形式の無記名アンケートを実施した.探索的因子分析により尺度の信頼性,因子的妥当性を検討後,得られた因子モデルを基に確認的因子分析を行った.〔結果〕有効回答401件を分析した結果,「効果的な教育支援」,「精神的支援」,「専門職のモラル」,「モデル機能」,「キャリア支援」の5因子が抽出され,一定の信頼性,妥当性が確認された.〔結語〕理学療法士の育成過程で,心理的・社会的側面への支援とメンター育成の必要性が示唆された.
著者
堀本 ゆかり 山田 洋一 山下 淳一 丸山 仁司
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.303-310, 2022 (Released:2022-06-20)
参考文献数
16

〔目的〕本研究では,管理業務に携わる理学療法士のコンピテンシー要素を明らかにし,理学療法士のための臨床管理能力尺度の信頼性と妥当性を検証することを目的とした.〔対象と方法〕対象は,臨床業務に従事し,管理業務に携わる理学療法士200名とした.方法は自由参加によるWebアンケートで,基本属性および「看護管理能力を発揮するために必要なスキルと行動特性」68項目を用いた.〔結果〕管理業務に携わる理学療法士のコンピテンシー要素は,「組織開発力」,「管理者としての人柄」,「批判的視点」,「部門管理力」,「専門職観」,「状況対応力」が抽出され,信頼性と妥当性が確認できた.〔結語〕本研究では,理学療法士の管理業務に必要なコンピテンシー要素を臨床管理能力尺度として示し,信頼性と妥当性を検証した.
著者
石坂 正大 久保 晃 金子 純一朗 野村 高弘 堀本 ゆかり 韓 憲受 貞清 香織 黒澤 和生 大村 優慈 森田 正治 江口 雅彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.531-536, 2017 (Released:2017-08-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

〔目的〕円滑な就職活動の支援に向けて,理学療法(以下,PT)学生における就職決定要因を検討することとした.〔対象と方法〕対象は平成27年度PT学科学部4学年とし,アンケートの協力が得られた144名であった.〔結果〕就職決定因子のうち重要性の高いのは,PTの上司の理解,役職者のリハビリに対する理解,臨床での技術指導の充実であった.主成分分析の結果,5つの主成分が抽出され,人的地域的親和性,待遇,卒後教育環境,立地,自己実現に関する項目であると解釈できた.〔結語〕就職決定因子として,上司の理解による人間関係,および病院・施設での研修制度の充実が重要である.
著者
山下 淳一 堀本 ゆかり 千葉 淳弘
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.101-105, 2022 (Released:2022-02-20)
参考文献数
14

〔目的〕理学療法士の「働きがい」の構成要素と影響度を明らかにすることを目的とし調査を行った.〔対象と方法〕当院理学療法士61名を対象に5件法による全18項目のアンケート調査を実施し,重回帰分析およびパス解析を用い分析した. 〔結果〕「働きがい」の構成要素は,「評価」,「処遇」,「人間関係」,「能力向上」,「配置」,「達成感」で構成されていることが明らかとなった. そのうち「働きがい」と特に関係が強い要素は,「評価」,「処遇」,「人間関係」の順であることが明らかとなった.〔結語〕理学療法士に対する「働きがい」を向上させるための具体的取り組みとして,まずは「評価・処遇」の改善が必要であることが示唆された.
著者
神山 真美 堀本 ゆかり 高島 恵
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.635-638, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1

〔目的〕作業療法士および理学療法士の職業生活満足度に影響を与える要因を明らかにする.〔対象と方法〕本校卒業生で就業年数1年目から9年目までの作業療法士65名,理学療法士80名の計145名を対象に,WEBアンケートにて職業生活(11項目)の満足度を調査した.〔結果〕職業生活全体の満足度への影響を与える要因(標準化回帰係数)は,仕事に対するやりがい(0.279)仕事の内容(0.275),教育・能力開発のあり方(0.210),職場の人間関係・コミュニケーション(0.150),賃金(0.149),雇用の安定性(0.119)が採択された.〔結語〕自己成長・キャリアに意味付けされる要因が重要であることが示唆された.
著者
堀本 ゆかり
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Gc1038-Gc1038, 2012

【はじめに、目的】 理学療法業界の質の低下が言われるようになり久しいが、臨床教育でも対応に難渋する学生が増え、相応の対応に迫られている。これまで学生の心理テストを実施し、生活指導や臨床実習の情報提供等に活用してきた。しかしいわゆる「氷山モデル」で示される通り、水面下である人格は後天的な変化が期待しにくい部分であり、行動変容の手掛かりには成り難かった。相原によるとコンピテンシーは「それぞれの仕事において、高いパフォーマンスに結びつく行動」と定義され、物事の考え方や仕事に対する姿勢、行動特性を明確に観察・測定できるツールとして、人材マネジメントに活用されている。今回、知識やスキル向上のベースとして必要な行動特性に着目し、この先臨床実習に臨む学生を対象にコンピテンシー診断を行ったので報告する。【方法】 対象は本学の3年生43名である。内訳は男子23名 女子20名(平均年齢21.65±3.27歳)である。方法は集合調査法で文化放送キャリアパートナーズ社製コンピテンシー診断「SPROUT」を使用した。質問項目は66で、A・B2つの質問に対して4つの選択肢が設定されており、そのうち1つを選択するものである。所要時間は概ね15分程度である。診断は社会人基礎力に対応した小項目18項目を総括する6領域に集約され、10段階で評価される。これらは「能力、興味・関心、こだわり」といった社会人基礎力を構成する要因とも強い関係があるものが抽出されている。出力は自己啓発支援書として、学生個々に手渡し、面談や臨床実習情報提供書に活用する。統計処理は日本科学技術研修所製JUSE-StatWorks/V4.0を使用し、危険率p<0.05で解析した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象には事前オリエンテーションを実施し本診断の内容及び利用について説明し、署名にて同意を得た。また、個人情報の運用については保護者にも書面で同意を得ている。本診断は、本学倫理規定に則りヘルシンキ宣言を遵守し、個人情報の管理には十分配慮し実施した。【結果】 「SPROUT」6領域の平均得点は5.39で「SPROUT」全体平均5.5よりも低い値となった。相手の悩みや相談にのり手助けをするといった"コンサルテーション"、新しい環境に応じて自分の行動や考え方を切り替える"適応力"は良好な結果であった。一方、自分のやり方を実現するための"戦略策定"、状況を鑑み正しく状況を理解する力である"分析的思考"は課題となった。各要因に関して性別による統計的有意差は認められなかった。領域に関して主成分分析の結果、第三主成分までの累積寄与率は0.762であり、コンピテンシーが発揮されたものとそうでないものとは約90度の位置関係であった。データを総括した6領域のうちコンセプト形成・情報指向性・分析的思考で構成される"新しい価値を創る力"の平均得点は4.77と特に低い傾向がみられた。【考察】 Goncziらによれば「コンピテンシー(臨床能力)」とは医療専門職としての実践に必要な知識・技術・態度などの組み合わせであるという。専門的な仕事をする際に、認知・感情やその他のリソースを連携させ、自らすすんでそれらを活用する事に意味がある。J.A.DentやR.M.Hardenらは患者が抱く期待、医療制度、学生の要求などの変化に応じ、新しいカリキュラムの開発が必要であると述べている。理学療法分野における質の向上に関しては、ハイパフォーマーと呼ばれる人材の行動特性をモデルとして、標準化する必要がある。今回は、その前段階として理学療法士を目指す学生を対象に、社会人に求められる要因の評価より"強み""弱み"を明確にし、実習前の課題認識を促す手掛かりとして使用した。今回の結果を社会人基礎力に置き換えてみると情報収集と現状把握、複数のものや考え方を組み合わせて解決策や新しいものを構築する能力、自分の意見を他者にわかりやすく伝えるプレゼンテーション力、その内容を十分に理解して他者に伝える論理性に課題がある事がわかった。これらの"弱み"は企業採用活動調査でも重要視されており、臨床実習を通じて、社会人の中でトレーニングされる要因であることから、"強み"である傾聴力・柔軟性を発揮する事により改善することが期待できる。一方、これらの要因は指導者の教授能力に大きく影響される事が予測される。そうすると、優れた臨床実習指導者の行動特性が明らかになれば、ハイパフォーマーとの補正を行う人材育成プログラムを構築する事である程度の質の保障は期待できると考える。今後、理学療法士の職能特性を加味したコンピテンシーモデルを構築し、人材育成の手掛かりとしたい。【理学療法学研究としての意義】 理学療法業務をヒューマンサービスと位置付けると、知識・技術を発揮する核となる能力を明確にすることは、学内教育に留まらず、卒後の人材育成にも寄与できると考える。
著者
堀本 ゆかり 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.687-691, 2010 (Released:2010-11-25)
参考文献数
13
被引用文献数
8 4

〔目的〕本研究の目的は青年期の立脚期歩行パターンを測定し,足圧中心軌跡は踵から第5中足骨付近まで進みその後第1趾に向かうという先行研究と比較し,その特徴を調査することである。〔対象と方法〕対象は調査・計測に関して同意の得られた専門学校学生17例とし,身体計測と10 m歩行計測に加え,立脚期の足底圧中心軌跡の特徴について検討した。〔結果と結語〕その結果,足底圧中心軌跡が中央型となる傾向があり,荷重応答期から立脚終期に時間要因が延長する傾向を認めた。特に初期接地以降の距骨下関節の動きおよび足長,足幅(横アーチ機能),中足趾節関節背屈角度等が足底圧中心軌跡を調整する機能として寄与することが示唆された。
著者
山田 洋一 堀本 ゆかり 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.589-595, 2013 (Released:2013-11-09)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

〔目的〕理学療法非熟達者の視線を測定することで,動作探査能力を分析し技能指標の手がかりを模索する.〔対象と方法〕対象は養成校4年生12名.腱板断裂術後の肩挙上を投影し,プロフィール告知前後の停留点の測定と,「疾患名」「注目点」「注目点の変化」「動作分析の注目点」を回答させ視線特性を検討した.〔結果〕疾患名の正答者は1名で,告知前後の停留回数は肩関節・肩甲骨周囲・肘部で有意な差があった.注目点は,全員が肩関節,肩甲骨周囲を注目していると回答し,計測による結果と一致していた. 告知後,視点ポイントが変化したと回答した者は,停留点が絞られ,停留回数は減少していた.〔結語〕非熟練者にとって容易な課題を提示することで,視線は分析に必要なポイントに視点をコントロールでき,情報収集が可能になると考える.
著者
西郡 亨 今井 祐子 堀本 ゆかり
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.53-58, 2021 (Released:2021-02-24)
参考文献数
23

〔目的〕本研究は,リハビリテーション専門職(リハ職)の認知する組織風土類型ごとに職務満足度と職業性ストレスを比較することを目的とした.〔対象と方法〕総合病院に勤務するリハ職102名を対象に,組織風土尺度と職業性ストレス調査票を用いて調査を実施し,組織風土の類型ごとに職務満足度や職業性ストレスを比較した.〔結果〕回答者は89名であった.職務満足度,環境ストレス,仕事裁量度,職業適性度,働きがい,上司サポート,同僚サポートの因子と組織風土類型間で有意な差を認め,イキイキ型の組織風土が他3類型と比べ職業性ストレスが低かった.〔結語〕組織風土は職務満足度と職業性ストレスに関連することが明らかとなった.職業性ストレスや職務満足度への対応は個人のみならず,組織風土を考慮する必要がある.
著者
浅香 貴広 米山 恭平 高橋 麻美 堀本 ゆかり
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.159, 2017

<p>【背景】</p><p>平山らは、患者の抱える障害や環境など問題点が多様化していることを指摘し、堀本らは対人援助職として理学療法士には理学療法技術のみではなくコミュニケーション能力が必要だと述べている。コミュニケーション能力の重要性は認識されているが、具体的な対応策に言及している論文は少なく、臨床現場の努力に依存しているのが現状である。</p><p>【目的】</p><p>理学療法士及び理学療法学生(以下、学生)が医療面接でどのように情報収集しているか検証する。</p><p>【対象】</p><p>臨床経験年数が5 年以上の理学療法士6 名と、臨床実習中の学生10 名とした。対象者には研究の趣旨を説明し、同意を得た。</p><p>【方法】</p><p>模擬患者を相手に医療面接を行い、その様子をデジタルビデオで撮影した。撮影した動画から音声記録を文字記録に起こし、その内容を1,自己紹介2,現病歴3,訴えや症状4,現在のADL5,以前のADL及び社会的情報6,今後について7,医師のコメントの7つに分類し、所要時間と比率を算出した。</p><p>【結果】</p><p>面接全体の所要時間は理学療法士平均258.8 ± 123.8 秒、学生平均196.4 ± 60.5 秒であった。質問内容の構成比率では、</p><p>5, 以前のADL 及び社会的背景が最も多く(理学療法士34%学生33%)3, 訴えや症状が次に多かった(理学療法士27%学生</p><p>30%)。</p><p>【考察】</p><p>今回、理学療法士及び学生において模擬患者を対象に医療面接を行う様子を分析した。その結果、双方の質問内容の構成には大きな違いは見られず、それぞれ以前の生活スタイルと現在の症状についての質問が多く聞かれた。中平らは臨床実習前の学生に医療面接を行なった結果、質問内容の構成の中で「現在のADL」の比率が大きかったと述べている。本研究の対象は最終学年の臨床実習生であり、学内教育のまとめの段階である。これまでの実習で退院後の生活の重要性について指導され、定着した結果の表れであると推察できる。動画を用いた振り返りは、コミュニケーション能力の向上に寄与できると考える。</p>
著者
千葉 哲也 堀本 ゆかり 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.803-806, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
6

〔目的〕厚生労働省は2015年より50人以上の規模である事業所にメンタルヘルスチェックを義務付けした.当院は外部委託し年 2回実施している.近年管理者間に連携不足を感じ2018年12月の集団分析で管理者と一般職員に分類したところ,管理者の健康リスク値が高値であった.健康リスク値の改善を目的にDonabedianの考えに基づき構造改革を行った.〔対象と方法〕リハビリテーション科44人に対し介入前後の健康リスク値等を比較した.〔結果〕健康リスク値の改善はみられなかったが,離職率は改善した.管理者への対策が一般職員の離職予防の一助になったと考える.〔結語〕多くの施設でメンタルヘルスチェックを活用し,組織分析を行い組織運営改善の一助となることを希望する.
著者
堀本 ゆかり 山田 洋一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.G0043, 2007

【目的】<BR> 理学療法士の需要拡大に伴い、養成校は急増している。判によると臨床能力は知識・情報収集能力・総合的判断力・技能・態度とある。卒前教育の流れをよくし、臨床実習を経て、臨床能力のある理学療法士を育成することが早急に望まれる。そこで、特に認知領域に着目し、学力の定着に寄与する性格的指標を検討する目的で、主要5因子性格検査を用い、学力テストの総合得点から傾向を分析したので報告する。<BR>【方法】<BR> 対象は常葉学園静岡リハビリテーション専門学校1期生(2クラス編成)84名(男性46名・女性38名)平均年齢19.6±3.0歳とクラス担任2名(男性2名・平均年齢41.5歳)である。<BR> 方法は各クラスで一斉に主要5因子性格検査を実施した。また、各クラス担任は受け持ちクラス全員に対して同様の検査を実施し、いずれも5因子ごとに総点を算出し比較した。また、学力テストの総合得点と5因子の関係の検討を行い、特性を検討した。<BR> 統計解析は日本科学技術研修所製 JUSE-StatWorks/V4.0を用いて処理した。<BR>【結果】<BR>1.学生自己評価とクラス担任の評価の相関関係<BR> 学生の自己評価とクラス担任の評価という2変数間の相関係数では外向性0.788・協調性0.719・勤勉性0.779・情緒安定性0.652・知性(開放性)0.709と5因子いずれも高い相関が得られた。<BR>2.学力テスト総合得点に影響を及ぼす因子<BR> 次に数量化1類を用い、学力テスト総合得点に影響を及ぼす変数を抽出したところ重相関係数0.709で外向性と勤勉性が選ばれた。特に勤勉性は5因子の中でも分散比が大きく特に強い影響を示している。また、主成分分析でも総合得点と勤勉性は関係が強いことがわかった。<BR>3.勤勉性を修飾する因子<BR> 勤勉性では、気まぐれ-計画性のある・いい加減-徹底的・怠惰-勤勉・浪費的-節約的といった項目が特に勤勉性を強く修飾していた。<BR>【考察】<BR> 情意領域・精神運動領域・認知領域をリンクさせた問題解決手法の導入に先立ち学生の性格を把握し、学力を定着させることは重要である。主要5因子性格検査は、文章の意味が大体理解できれば実施できる評価ツールであるため性格の基本的な特徴が把握し、学生指導に用いるには簡便といわれている。<BR> 今回の調査で学生の自己評価とクラス担任の評価の強い相関は、担任の評価にある程度の信頼がおけることがわかる。また、学力テスト総合得点に関しては、勤勉性・外向性の影響が強く、情緒安定性・協調性・知性に関係はなかった。この結果より学生は主体性を持ち計画性のあるくり返し学習を徹底的に行うことが重要であると思われる。<BR> 本校ではこの傾向を臨床実習の情報提供や縦割り少人数授業(ゼミ授業)活用している。<BR><BR>
著者
石坂 正大 久保 晃 金子 純一朗 野村 高弘 韓 憲受 貞清 香織 堀本 ゆかり
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.627-630, 2017 (Released:2017-10-23)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

〔目的〕理学療法学科学部生における興味を持つ専門分野の縦断的変化を明らかにすること.〔対象と方法〕平成28年度理学療法学科学部4学年98名とした.アンケートは7専門分野と23専門領域から最も興味のある領域を選択させた.アンケート実施は,2学年前期,3学年前期,3学年後期,4学年後期に行った.〔結果〕興味のある専門分野は,基礎,神経,内部が縦断的に増加した.専門領域は,2学年前期ではスポーツが49名(55%)と最も人気が高いが,4学年後期では運動と脳卒中に続いて3番の順となった.〔結語〕スポーツ領域に興味のある学生は,3学年前期で神経系に,4学年になると内部障害に興味が移る傾向にある.
著者
堀本 ゆかり 山田 洋一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.G3P1576, 2009

【目的】学力向上は理学療法実践能力の獲得のために必要不可欠な要因である.先の報告で、学生の認知領域を修飾する要因は勤勉性であり,学習にあたっては抑うつが伴うが,効率を高めるためには活力が必要であることがわかった.今回は,Goldbergのチェックリストより勤勉性を観測変数として構造方程式モデリングを用い,関係の深い性格的特性の抽出を目的に分析したので報告する.<BR>【方法】対象は本校在学生290名で,平均年齢は20.69歳(±2.78)である.今回は特にI期生75名のデータを中心に解析した.<BR> 知識・技能面の指標は定期試験総合得点とし,情意領域の指標はGoldbergのチェックリストを使用し,共分散構造分析を実施した.情動の指標は気分プロフィール検査(POMS),抑うつに関する指標はSDSを使用した.<BR> 対象には、研究の主旨・方法について事前に説明し、同意を得た上で調査を開始し,統計処理に関しては個人情報の扱いに十分留意した.<BR> 統計処理は日本科学技術研修所製 JUSE-StatWorks/V4.0 SEM因果分析編を使用し解析した.<BR>【結果】まず、POMSデータより各学年の項目の分布と、4年生の定期試験成績が上位・中位・下位に分類し同様に分布を確認したところ,抑うつが高く,活力が低い傾向を示した.成績分類下位群は抑うつが高く,特に活力が低い傾向がみられた.<BR> 次にI期生のデータより観測変数である勤勉性に対するチェックリスト7項目(プラス方向の形容詞を採用)を指標として因子構造を分析した.カイ二乗検定での検定推定値は17.29,P値は0.24である.作成されたパス図の適合度判定ではAGFI0.88,CFI0.97,RMSEA0.06と比較的良好な適合度が得られた.直接効果を示すパラメータ推定値は勤勉0.84,計画性のある0.69,徹底的0.62,責任感のある0.61は比較的大きな値を示したため,最終学年への進級群と非進級群で同様にパス図を作成した.結果,勤勉は両群とも最も高い関係性を示した.進級群に対して非進級群は責任感のあるでは高く計画性のあるでは低いパラメータ推定値を示した.特に徹底的では進級群0.68に対して非進級群0.09と低い値を示した.非進級群のSDSデータでは抑うつ状態は低い傾向であった.<BR>【考察】臨床能力向上にあたっては,問題解決能力は不可欠である.臨床実習を実りのあるものにするために学内で基礎学力を向上しておくことは大きな課題である.非進級群の勤勉性に関する性格的因子では,課題を遂行しなければならないという責任感はむしろ進級群より大きかったが,計画性や徹底性の因子では勤勉性に対する関係性が弱くなっている事がわかった.この項目が低い値の学生に関しては,細かな目標設定と都度進捗状況の管理が必要であると考える.正規のカリキュラムとは別に個別指導の重要性が示唆された.
著者
山田 洋一 堀本 ゆかり
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.GbPI1476-GbPI1476, 2011

【目的】理学療法士(以下PT)養成校での教育目標は、「ある程度の助言の下で基本的理学療法が行えるレベル」とされ、卒業後、所謂「一人前」と言われるレベルまでの教育は、所属施設を中心に行われている。しかし、臨床現場における教育方法に、決められた手法はない。養成校教育での教育目標はブルームによる「認知領域」、「精神・運動領域」、「情意領域」の3つの領域「Taxonomy」に分けられているが、卒後教育ではあまり使用されることはない。特に、「情意領域」は、臨床実習で重要視されている反面、卒後教育では個性として解釈されるように思われる。今回の調査では、多項選択肢、自由記載等による無記名「自己認識アンケート」と「PRESIDENT版ゴールドバーグ性格検査」を医療施設に勤務するPTに行い、臨床現場で働くPTの意識調査を行い、「性格特性」との関連に知見を得たので報告する。<BR>【方法】静岡県内の医療施設を無作為に抽出し、そこに勤務するPTに郵送で調査を行った。調査期間は平成22年10月18日から10月22日までとし、5施設67名から回答を得た(回収率:100%)。対象者の内訳は、平均年齢29.5±6.5歳、平均経験年数6.4±5.7歳(男性42名、女性25名)最終学歴は、大学院1名、大学6名、短大1名、4年生専門学校23名、3年生専門学校36名である。統計解析は(株)日本科学技術研修所 JUSE StatWorks Ver.4.0を使用し、数量化1類で解析した。<BR>【説明と同意】ヘルシンキ宣言に準拠し、対象者には本研究の意義を説明し、同意を得たうえで実施した。<BR>【結果】まず、「免許取得後、一人前と判断する経験年数」は、経験年数に関係なく、概ね10年前後と回答しているものが多かった。「自己意識で治療技術と学術面のいずれの重要度が高いか」の質問では、経験年数が低いほど「治療技術向上」の重要度が高いと回答した。さらに「論文等への興味の有無」で層別化したところ経験年数が上がるにしたがい、「興味がない」と回答した者は「治療技術向上」の重要度が増加し、「興味がある」と回答した者は「学術的向上」が増すという傾向を示していた。<BR>「PRESIDENT版ゴールドバーグ性格検査」の結果では、「神経症傾向」が高い者のほうが「治療技術」の重要度が高い傾向がみられた。また、今後の自己課題の内容を問う設問では、臨床能力・問題解決能力・教育力・折衝力・リーダーシップ力・マネジメント力のうち「外向性」が低い者ほど「問題解決能力」が課題であると回答していた。さらに、目的変数を「一人前と判断する経験年数」とし、相関係数行列で関係性の強い変数を選択し数量化1類で解析したところ、今後必要とされる要因では「教育力」、「治療技術」、「マネジメント力」、性格特性では「外向性」が選ばれた(重相関係数 0.752)。選ばれた変数の中でも特に「教育力」の分散比が大きい傾向であった。<BR>【考察】ノーマンは人間の性格特性を「神経症傾向」、「外向性」、「開放性」、「調和性」、「誠実性」の因子に収斂されるとした。この性格特性と職業適性の間には高い相関性があるとしている。我々の業務の中心は患者と向き合い、理学療法を通して医学的側面から患者の社会適応性を高めることである。しかし、それ以外に日常的にそれぞれのポジションによる管理業務や調整、採算の効率化、教育なども行っていかなければならない。今回の回答で、解析上、PTが「一人前」になるための条件として「教育力」が選択されたことは、治療技術向上だけではPTとしての完成形ではないという意識の現れであると思われる。卒後教育に多くを依存する治療技術の習熟にはある程度のトレーニング期間が必要である。日常業務の中で上質な治療技術を提供し、患者貢献に役立てたいと思う若手の焦りは当然であろう。しかしながら、専門理学療法士制度にも垣間見るように理学療法は科学的根拠に基づく治療技術のスタンダード化を求められている。根拠のある治療技術の習得の基盤は学術的実績の積み重ねであることを認識することが重要と思われる。<BR>また、若手の教育では性格特性を踏まえて、教育法を選択しキャリア構築することが重要と思われる。中堅職員の育成に向け、早期に臨床的技術・学術・性格という3要素を考慮し、職場内教育を展開することは、組織の戦略上重要な課題であると考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】専門理学療法士制度では、臨床技術・学術の双方の能力が求められている。この数年急増している若手職員の教育の如何では、PTの質の低下は加速する事が懸念される。さらにそれは彼らが教育する臨床実習生にも波及していく。若手のリテラシーの低下が懸念されるなか、より効率的な若手教育に向け意識や要因を分析し、教授方法を検討することは急務であると考える。