著者
森田 龍義 西野 貴子
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

東アジア産タンポポ属の2倍体種の種分化について、日本列島において分化したケースと、日本列島以外の地域において分化した後、移住してきたケースが考えられる。この問題を解く手がかりを得るため、台湾のタカサゴタンポポの5つの自然集団からサンプリングを行い、12酵素14遺伝子座の酵素多型を用いて、日本列島の2倍体分類群との遺伝的距離を測定した。調査した日本産2倍体は、カンサイタンポポ5集団、カントウタンポポ2集団、トウカイタンポポ1集団、シナノタンポポ5集団、オキタンポポ2集団、ユウバリタンポポ1集団である。分子系統樹作成のプログラム(PHYLIP)を用いて系統樹を作成した結果、(1)台湾のタカサゴタンポポ5集団が1つのクレードを作り、最初に分岐すること、(2)次いで、隠岐のオキタンポポが分岐すること、(3)カンサイタンポポとカントウタンポポの各分類群及びユウバリタンポポが1つのクレードを作り、その中ではカンサイタンポポと他の群が分岐することが明らかとなり、日本産2倍体分類群が日本列島内で分化した可能性が高いことを示唆する結果が得られた。2.シロバナタンポポ(5倍体種)は1クローンであり、カンサイタンポポを種子親とし、未知の4倍体種を花粉親とする雑種起源の可能性が高いことがすでに明らかにされている。そこで花粉親の4倍体種を明らかにする目的でアイソザイム分析を行った。調査した種は、西日本に分布する4種:キビシロタンポポ、ケンサキタンポポ、クシバタンポポ、ツクシタンポポ及び、韓国の2種:ケイリンシロタンポポ、コウライタンポポである。花粉親としての条件は、(1)シロバナタンポポによりカンサイタンポポにない対立遺伝子(SKDH-D、MDH-C)を持つこと、(2)シロバナタンポポにない対立遺伝子を持たないことであるが、これらの条件を満たす種は、ケイリンシロタンポポであることが判明した。
著者
中山 祐一郎 西野 貴子 渡邉 修 渡邉 修
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

白山(石川県)の高山帯・亜高山帯には,12種(群)の雑草性植物が侵入していた。そのうち,オオバコでは,自生種ハクサンオオバコと雑種を形成していた。スズメノカタビラでは,高山の環境に適応した生活史特性をもつ個体が定着していると考えられた。外来タンポポでは,低地~山地に生育する様々な種や雑種の型のうち,一部の種や型が亜高山帯や高山帯に侵入していた。これらの知見に基づき,侵入雑草への対策について「白山国立公園生態系維持回復事業検討会(環境省中部地方環境事務所)」等で提案した。