著者
佐藤 俊一 川内 聡子 奥田 航 西館 泉 苗代 弘
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.447-453, 2016-12-15 (Released:2016-12-15)
参考文献数
7

近年爆弾テロの頻発により,頭部爆傷(bTBI),とりわけ通常の画像診断で陰性所見であるにもかかわらず様々な高次脳機能障害を来す軽症頭部爆傷(mbTBI)の受傷者が急増し,世界的に大きな問題となっている.しかしmbTBI は病態や発生メカニズムに不明な点が多く,診断・治療法の研究は進んでいない.著者らは,レーザー誘起衝撃波(LISW)をラット頭部局所に適用するモデルを対象に各種リアルタイム診断を行い,mbTBI のメカニズム解明を進めている.これまで,全身性に大きな影響が出ない曝露条件においても,脳のLISW 適用部位において拡延性脱分極(SD)が発生し,その伝搬に伴って皮質内に低酸素血症が発生することがわかった.このとき乏血(血管収縮)も起き,低酸素血症と乏血は長時間持続 した.これらの現象が神経細胞変性を引き起こす可能性が考えられる.