著者
覧具 博義 合田 正毅 新田 英雄 三沢 和彦 箕田 弘喜 平島 由美子
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

初中等から大学にわたる20名ほどの教員からなる研究グループで,「物理教育の研究」についての調査と検討を進めた。調査研究を進める上での主要なリファレンスとしてE. F. Redishの著書"Physics Education with the Physics Suite"を選択した。特に注目したのは,認知科学などの急速に発展している関連領域の成果も取り入れながら,「物理教育」を科学的な研究の対象としてとらえるそのアプローチで,教育の改善や改革の方向をカンや信念からではなく,科学的な裏付けをもとに導き出すものである。この「物理教育の研究」は初中等から大学にわたる様々な段階の物理教育に関わる教員達が交流し議論する上で共通の視点と言語を提供し,この研究課題が目的とした教員連携の形成に非常に有効であった。特に,active-learningや,学習者自身の活動をうながす実習教材,CADAA(computer-assisted data acquisition and analysis)などの日本の教育現場への導入について検討し,その有効性を,複数の高校および小学校の授業場面で試行により検証した。小学校から大学にわたる広いスペクトルにわたる教員がこれらの試行を見学しその内容について討議に参加した。さらに,京都・和歌山地域で物理教育研究を続けているアドバンシング物理研究会メンバーや,認知心理学をベースにした教育学の研究を推進している東京大学大学院の市川伸一教授を講演会(2007年12月に開催)に招聘して交流した。現実の教育現場での状況は多様な側面を持っており,著作や講演による紹介だけではうかがいきれないところが多々ある。そこで,研究グループの中から2名が2007年10月に米国出張を行い,メリーランド大学のRedish教授およびディケンソン・カレッジのLaws教授を訪問して,物理教育の世界的な指導者である彼らが開発し実施している物理授業を複数日にわたって実地に見学し、その調査結果を2008年春物理学会春季講演会等で発表した。