著者
平島 由美子 鈴木 淳史
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.601-618, 2008 (Released:2008-10-24)
参考文献数
38

ヒドロゲルは水を含んで膨潤した希薄で複雑な三次元網目構造をもつ固体であり,それを構成する分子間に働く複雑な相互作用に起因して多様な物性を示す.さまざまな外的環境の無限小の変化によって,その体積を不連続にかつ可逆的に変化させることができる.30 年前にこの体積相転移が発見されてから多くの研究成果が報告されてきたが,水素結合が関与する系は複雑な相挙動を示し,その原理は現在でも十分に理解されているとは言えない.本報では,熱応答性のポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)ゲルの相転移を基礎にして,純水溶媒の繰返し交換によるヒドロゲル内での水素結合の形成と温度変化による体積相転移について,筆者らの最近の研究成果をまとめて考察する.
著者
覧具 博義 合田 正毅 新田 英雄 三沢 和彦 箕田 弘喜 平島 由美子
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

初中等から大学にわたる20名ほどの教員からなる研究グループで,「物理教育の研究」についての調査と検討を進めた。調査研究を進める上での主要なリファレンスとしてE. F. Redishの著書"Physics Education with the Physics Suite"を選択した。特に注目したのは,認知科学などの急速に発展している関連領域の成果も取り入れながら,「物理教育」を科学的な研究の対象としてとらえるそのアプローチで,教育の改善や改革の方向をカンや信念からではなく,科学的な裏付けをもとに導き出すものである。この「物理教育の研究」は初中等から大学にわたる様々な段階の物理教育に関わる教員達が交流し議論する上で共通の視点と言語を提供し,この研究課題が目的とした教員連携の形成に非常に有効であった。特に,active-learningや,学習者自身の活動をうながす実習教材,CADAA(computer-assisted data acquisition and analysis)などの日本の教育現場への導入について検討し,その有効性を,複数の高校および小学校の授業場面で試行により検証した。小学校から大学にわたる広いスペクトルにわたる教員がこれらの試行を見学しその内容について討議に参加した。さらに,京都・和歌山地域で物理教育研究を続けているアドバンシング物理研究会メンバーや,認知心理学をベースにした教育学の研究を推進している東京大学大学院の市川伸一教授を講演会(2007年12月に開催)に招聘して交流した。現実の教育現場での状況は多様な側面を持っており,著作や講演による紹介だけではうかがいきれないところが多々ある。そこで,研究グループの中から2名が2007年10月に米国出張を行い,メリーランド大学のRedish教授およびディケンソン・カレッジのLaws教授を訪問して,物理教育の世界的な指導者である彼らが開発し実施している物理授業を複数日にわたって実地に見学し、その調査結果を2008年春物理学会春季講演会等で発表した。