著者
谷 孝之
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.221-230, 1981 (Released:2007-03-09)
参考文献数
21
被引用文献数
3 8

formaldehyde(HCHO)の血管平滑筋に対する弛緩作用について,ウサギの胸部大動脈条片標本を用いて検討し,以下の成績を得た.K+ 25mM 適用による標本の収縮に対して,HCHO 6.6×10-4M の前処置は抑制を生じたが,K+ 収縮後の添加は抑制をひき起さなかった.すなわち,HCHO は前処置によってのみ K+ 収縮を抑制するが,抑制の強さは処置時間に依存する傾向にあった.Ca2+ 除去 K+ -脱分極筋における Ca2+ の収縮に対して HCHO は著明な抑制を示したが,Ca2+ 除去液(EGTA 無添加)中での高 K+(50mM)の収縮に対しては抑制を示さなかった.また,Ca2+ 除去液(EGTA 添加)中での Ba2+ 2.2mM の収縮に対しても HCHO は抑制を示さなかった.以上のことから,HGHO は細胞内 Ca2+ の遊離もしくはその利用能には影響を及ぼさず,Ca2+ の細胞内への流入を抑制することが示唆された.また,一方,HCHO は NE による筋収縮を抑制した.しかし,NE は HCHO と37°C の栄養液中で化学反応してかなり急速にその濃度の減少することが高速液体クロマトグラフィーでの測定の結果,認められた.このことから,NE の収縮に対する HCHO の抑制作用の主な原因の一つは,NE のHCHO による不活性化にあると思われる.以上の成績から,HCHO の血管平滑筋に対する弛緩作用には,NE の不活性化と Ca2+ 流入阻止の両作用が関与しているものと思われる.
著者
山崎 孝 伊藤 直之 石田 登貴代 三谷 孝之 菅野 智也 中川 哲朗 松井 文昭 増田 真代 加畑 昌弘 大谷 尚之 堀 秀昭 山門 浩太郎
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, 2007-04-20

【目的】甲子園大会でのメディカルサポートを皮切りに、高校野球地方大会において各県士会でのメディカルサポートの取り組みが報告されている。しかし、中学生を対象としたサポート報告は少ない。今回福井県理学療法士会は、中学ボーイズリーグの大会期間中に選手のメディカルチェックを実施し、スポーツ障害予防の啓蒙活動を試みたので報告する。<BR>【方法】大会は日本少年野球連盟公認の福井大会で北陸・東海・関西地区から28チーム、906名の選手が参加した。平成18年7月22日~24日に行われ、試合会場は初日が10会場、2日目は4会場であった。サポートは初日と2日目の土・日曜日に、1会場で実施した。その会場で試合があるのは初日が6チーム、2日目が4チームで、メディカルチェックは当日に希望があったチームに試合の合間を利用して実施した。今回サポートに参加したPT は福井県アスレチックリハビリテーション研究会に参加しているPTで、初日9名、2日目13名であった。メディカルチェックの実施項目について、握力測定はOG技研社製デジタル握力計にて行い、肩関節外旋・内旋筋力は2nd肢位にてアニマ社製ミュータスF-1を用いて測定した。ROMは肩関節2nd内旋・外旋、肘関節屈曲・伸展、前腕回内・回外、SLR、股関節内旋の可動域とし、ゴニオメーターを用いて5°単位で両側測定した。FFD、上体おこしは1cm単位で測定し、腸腰筋と大腿四頭筋のタイトネスの有無と、しゃがみ込み動作の可否を調査した。実施方法は筋力・上肢ROM・下肢ROMの3セッションにPTを配置し、所要時間の短縮を図った。選手には測定中に値を伝え、投球側に機能低下がみられた場合は投球障害との関連性について説明し、測定後に集団でストレッチ指導を行った。また、大会参加全チームにストレッチ方法を記載した冊子とオーバーユースによる投球障害ついて説明したリーフレットを開会式の日に配布した。<BR>【結果】1.メディカルチェックを実施できたチーム数は初日4チーム、2日目が2チームで、両日での選手数は76名であった。2.メディカルチェックの結果では肩関節内旋(投球側38°、非投球側56°)、肘関節屈曲(投球側144°、非投球側148°)、肘関節伸展(投球側0°、非投球側4°)、前腕回内(投球側81°、非投球側88°)の可動域が非投球側に比べ、投球側が有意に低下していた。また、投球側の肘関節に-5°以上の伸展制限のある選手が26%にみられ、その半数は投手であった。<BR>【考察】選手・指導者・父兄が多く集まる大会期間中を利用してスポーツ障害予防の啓蒙を行った。甲子園出場を目指して中学から硬式野球をしている選手の4人に1人の割合で投球側の肘関節拘縮がみられていた。これは少年期からのオーバーユースが原因と考えられるため、少年期からの投球障害予防の啓蒙が求められる。今後はスタッフ数を増員し、より多くのチームに啓蒙していくことが課題である。<BR><BR><BR><BR>