- 著者
-
谷 孝之
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.77, no.2, pp.221-230, 1981 (Released:2007-03-09)
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
-
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formaldehyde(HCHO)の血管平滑筋に対する弛緩作用について,ウサギの胸部大動脈条片標本を用いて検討し,以下の成績を得た.K+ 25mM 適用による標本の収縮に対して,HCHO 6.6×10-4M の前処置は抑制を生じたが,K+ 収縮後の添加は抑制をひき起さなかった.すなわち,HCHO は前処置によってのみ K+ 収縮を抑制するが,抑制の強さは処置時間に依存する傾向にあった.Ca2+ 除去 K+ -脱分極筋における Ca2+ の収縮に対して HCHO は著明な抑制を示したが,Ca2+ 除去液(EGTA 無添加)中での高 K+(50mM)の収縮に対しては抑制を示さなかった.また,Ca2+ 除去液(EGTA 添加)中での Ba2+ 2.2mM の収縮に対しても HCHO は抑制を示さなかった.以上のことから,HGHO は細胞内 Ca2+ の遊離もしくはその利用能には影響を及ぼさず,Ca2+ の細胞内への流入を抑制することが示唆された.また,一方,HCHO は NE による筋収縮を抑制した.しかし,NE は HCHO と37°C の栄養液中で化学反応してかなり急速にその濃度の減少することが高速液体クロマトグラフィーでの測定の結果,認められた.このことから,NE の収縮に対する HCHO の抑制作用の主な原因の一つは,NE のHCHO による不活性化にあると思われる.以上の成績から,HCHO の血管平滑筋に対する弛緩作用には,NE の不活性化と Ca2+ 流入阻止の両作用が関与しているものと思われる.