著者
秋山 進午 田 広金 高浜 秀 山本 忠尚 宮本 一夫 大貫 静夫 TIAN Guangjin 郭 治中 郭 素新 谷 豊信 岡村 秀典
出版者
大手前女子大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

〔研究成果概要〕我々は中国内蒙古文物考古研究所(代表:田広金)と共同して、内蒙古涼城県にある湖"岱海"において"遊牧騎馬民族文化の生成と発展過程の考古学的研究"を行った。"岱海"は内蒙古の南東部に位置し,万里の長城の北,僅か10Kmにある。いわゆる"内蒙古長城地帯"のただ中である。湖の南岸の丘陵上には仰韶文化遺跡,北岸には龍山文化とオルドス青銅器文化遺跡が並び,農耕文化と牧畜文化が入り交じる"農牧交錯地帯"である。我々はこの,研究テーマに対する絶好の地点を選び,中国で最初の"地域研究"を行った。[平成7年度]初年度には先ず仰韶文化後期の「王墓山上遺跡」の発掘調査を行い,住居址15基ほかの遺構と土器,石器,骨角器など多数の遺跡を発見した。調査によって,この原始聚落が層位的に2時期に分かれ,また,遺物の研究によって,第2期をさらに前・後に細分することが出来た。[平成8年度]二年目には石虎山I・II遺跡の発掘調査を行った。石虎山遺跡は仰韶文化前期の遺跡で,黄河流域の仰韶文化が北方へ拡大して,この地に初めて農耕をもたらした重要遺跡である。発掘調査によってII遺跡から14基の住居址や多数のピット,墓等を発掘し,後岡一期文化期の聚落の状況を初めて明確にした。II遺跡では聚落を巡る環濠とその中から多数の獣骨を発見し,当時の生活環境研究に貴重な資料を得た。[平成9年度]三年目には飲牛溝遺跡においてオルドス青銅器文化期の墓地を発掘し26基の土坑墓を発掘し,副葬品や犠牲畜骨を発見した。併せて龍山文化期の板城遺跡の考古測量調査と住居址2基を発掘した。以上のように,3か年の調査期間において,この地域における農耕の始まりから,その展開過程,続いて牧畜を主たる生業とするオルドス青銅器文化の牧畜民への交代の様相を追求することが出来た。発掘調査と平行して,東は遼寧省から西は寧夏回族自治区,甘粛省に到る万里の長城に沿って関係遺跡と遺物の調査を行い,研究資料の蓄積に務めた。
著者
早乙女 雅博 谷 豊信 藤井 恵介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究の目的は、東京大学建築学専攻所蔵の戦前に蒐集された朝鮮考古資料の全体像を明らかにし、それを集成しデジタル化して活用することと、資料がもつ画像そのものの保存をめざすことである。達成された成果は、次の3点であり、これにより研究者のみではなく多くの人に考古資料を公開することができ、研究に活用することもできるようになった。1,ガラス乾板を箱ごとに集成し、総数728箱、乾板は11,286枚、フィルムは2,550枚、紙焼きは276枚、総数14,112枚であり、その内容は日本、朝鮮、中国、東南アジア、中央アジア、西欧にわたることをあきらかにした。このうち朝鮮関係の2,500枚の乾板から四切紙焼きを2部ずつ作成し、撮影者、画像内容や参考文献などを調査しデータベースを作成した。2,紙焼きの1部は永久保存とするため、1枚ずつ中性紙保存封筒に入れ、さらにそれを30封筒ごとに中性紙保存箱に収納した。封筒と箱は、ISOの規格にもつづく現在考えられる最高の基準をもちいた。閲覧用の1部は有害な可塑剤を含まないポリプロピレンファイルに入れ、ファイルとして綴じた。3,拓本・図面・模写は、総数1,144件あるが、そのうち朝鮮関係は340件である。これについては、『朝鮮建築・考古資料基礎集成』と題して、画像を含めたデータベースをCD-ROMで作成した。