著者
谷内 透
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.145-152, 1974-12-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
17

3種のシュモクザメが本邦西南海域に分布している, それらはヒラシュモクザメ, Sphyrma mokarron (Rüppell), シロシュモクザメ, S.zygaena (Linnaeus), アカシュモクザメ夢S.lewini (Griffth and Smith) である.なお, 上述の和名は本研究で改めて提唱するものである.また, 3種の同定のための検索表を作成した.3種の浮延縄による漁獲データからみると, アカシュモクザメが最も数が多く, ついでシロシュモクザメで, ヒラシュモクザメが一番少なかった.釣獲率でみた密度分布によると, 調査海域では3種ともほぼ分布が九州の南端, 南西諸島, 台湾を結ぶ線より浅い海域に限られているのがわかった.また, 密度分布の季節変化からみて, 3種とも大規模な南北回遊をしている徴候が認められなかった.いろいろな証拠から夢3種の集団の主力はほぼ東支那海域に棲息しているものと推定された.
著者
谷内 透 柳沢 践夫
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.465-468, 1983-03-10 (Released:2010-06-28)
参考文献数
21

和歌山県太地沖の熊野灘で採集されたコギクザメEchinorhinus cookei Pietschmaniを簡単に記載した。本報が西部太平洋域における本種の初記録である。本種はキクザメE.brucus (Boiiaterre) と形態的には区別が困難であるが, 皮歯が小さくて (直径4mm以下) 数が多く, 吻部腹面や口の周辺を除く全身にほぼ均一に分布することが特徴である。既往の文献を検討した結果, 本種は西部太平洋域では日本のほか台湾にも分布すること, また, 従来日本で記録されていたキクザメは本種である可能性が強いことを指摘した.
著者
谷内 透 立川 浩之
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.57-60, 1991-03-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
13

原記載の比較に基づいて, 台湾産のシロカグラHexanchus nakamuraiはバハマ諸島産のH.vitulusの上位同物異名であることを検証した.本種は近縁種のカグラザメH.griseusとは下顎に櫛状の大きな歯が1列に5個並ぶこと (カグラザメでは6個), 胸鰭後縁が凹むこと, 尾柄が長く臀鰭基底の少なくとも1.5倍はあること, 背鰭は尾鰭から少なくともその基底長の2倍離れていることで区別される.本種が小笠原諸島周辺, 高知沖に分布することを明らかにした.本報が本種の日本初記録である.
著者
谷内 透
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1984

フトツノザメは成長,繁殖,食性を検討した。成長については銚子産,小笠原産,ハンコック海山産に違いがみられた。どの海域も雄の方が雌よりも成長が悪かった。性成熟の大きさも海域間で異なり、雌雄とも銚子産,小笠原産,ハンコック海山産の順となった。成熟年齢も同様に雌雄ともにこの順となった。交尾器長も精巣重量は性成熟の開始と共に急激に増大した。1腹あたりの胎仔数と大型卵巣卵数は親の大きさと共に増加した。成熟の大きさが異なるため、胎仔数と卵数は海域間で異なるが、種としての統一性は保持されているものと推測された。平均大型卵数は胎仔数よりも少なかった。食性についてみると、どの海域でも魚類の出現が高く、次いで頭足類,甲殻類の順となった。しかし、出現種が海域間で異なるため選択性は小さかった。小型ツノザメ類は銚子産の繁殖と食性を調べた。性成熟の大きさや最大体長は雌の方がかなり大きく、性差が著しかった。みかけの胎仔数よりも大型卵巣卵の方が実際の胎仔数を正確に反映していると判断された。胎仔の体長組成,卵径組成から判断して特定の繁殖周期はないものと推測された。食性については3種とも空胃率が著しく高いのが特徴であった。また、胃内容物重量の体重に対する割合はほとんどの場合3%以下であった。3種ともにイカ類と魚類の出現率が高かった。トラザメとニホンヤモリザメは銚子産の繁殖と食性を調べた。成熟の大きさと最大全長は雌雄でほとんど差がみられなかった。トラザメは周年卵殻をもつ雌が存在することから特定の繁殖周期はないものと推測された。2種とも空胃率はきわめて低かった。餌生物に大きな分類単位では重なりは認められるが、組成比が大きく異なること、また下位の分類単位で出現する餌生物が異なるので、両種は食い分けをしているものと推察された。