- 著者
-
谷口 博昭
- 出版者
- 日本小児血液・がん学会
- 雑誌
- 日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.3, pp.187-193, 2017 (Released:2017-12-08)
- 参考文献数
- 15
核酸創薬は標的分子に対する柔軟性や製剤化に係る経費が比較的廉価であり,さらに低毒性といった優位性がある.一方で,核酸医薬品として臨床現場で使用される製剤は現状では乏しい.原因として,核酸創薬の抱える問題点が存在する.具体的な問題点として,核酸配列設計の不備,標的分子の選択の誤り,病変局所に核酸を送達するドラックデリバリーシステムの欠如等が挙げられる.我々は,核酸医薬品単独,もしくは抗がん剤等の他剤併用による相乗効果や副作用の軽減を目指して,核酸創薬のハードルを克服するために工学系・理学系の研究室の共同研究者と共に学際的な研究を展開している.核酸医薬品はその特性から,小児腫瘍において認められる融合遺伝子,遺伝子変異や遺伝子増幅を標的とする上で適した剤型であり,腫瘍治療に新たな選択肢を与えるとともに,殺細胞性では無いことから抗がん剤による晩期障害の克服に繋がると考える.今回,核酸医薬品の概論,及び我々が成人の乳がん,膵臓がんを対象に展開している核酸創薬の実例を紹介し,小児固形腫瘍を対象とした核酸医薬品開発への展望としたい.