著者
山口 淳
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.457-460, 2011 (Released:2012-01-17)
参考文献数
35

NGF(Nerve growth factor)は, 元来, 感覚神経や交感神経の発達・増殖や機能維持に必須の因子として同定された. 近年, NGFは炎症性・炎症性疼痛などの慢性疼痛に深く関わることが明らかとなってきた. NGFの阻害薬は, 既存の治療薬が効かない多くの患者に対する新規の治療法と期待されている.本概説では, NGFが疼痛を惹起するメカニズムやその治療応用についてこれまでの研究報告をまとめる.
著者
金山 洋介 新垣 友隆 尾上 浩隆 渡辺 恭良
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.328-334, 2013-09-25 (Released:2013-12-26)
参考文献数
18

生体分子イメージング技術は、薬剤開発における重要な技術となってきている。特にPET(Positron Emission Tomography)は高い感度と定量性、プローブの多様性から、病態の分子医学的把握による疾患診断、薬効評価を可能にし、合理的な薬物送達システム(DDS)の評価を行うことに役立つ。脳は高度な機能と複雑な構造を有し、薬剤や毒物の移行を制限する血液脳関門によって恒常性が保たれている。脳を標的とした薬剤の開発においては、非侵襲的に薬剤の脳内分布を解析可能な分子イメージング技術の必要性が高い。本稿ではPETを用いた血液脳関門における薬剤トランスポーター機能の解析、薬剤の脳内移行の視覚化と薬効評価の例を通して分子イメージングの有効性について概説する。
著者
小林 久隆
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.274-284, 2014-09-25 (Released:2014-12-25)
参考文献数
17

より特異的な癌イメージングは、より正確な治療を可能にし、さらに超特異的癌治療は、癌に対しては強力でありながら、患者の体に対してはやさしい治療になりうるはずである。より良い癌の臨床を追い求める医学研究者として、さらなる「病気に厳しく、患者の体に優しい」方法の開発が、究極の目標である。この稿では、私たちの研究室で行ってきた特異性を重視した次世代のイメージング方法論、さらに造影薬剤作成と利用の基本理念と方向性を解説したい。加えて、次世代のイメージング技術の新たな進化形である、超特異的癌治療「近赤外光線癌治療」の開発理念と特徴、さらにそのさまざまな応用法についても触れたい。
著者
井上 貴雄
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.10-23, 2016-01-25 (Released:2016-04-25)
参考文献数
35

アンチセンス、siRNA、アプタマーに代表される核酸医薬品は、抗体医薬品に続く次世代医薬品として注目を集めている。現在、製薬業界では創薬シーズの枯渇が問題となっているが、核酸医薬品は従来の医薬品では標的にできなかった新規分子をターゲットにできる点において魅力的である。また、薬効本体がオリゴ核酸で構成されるという共通の特徴を有すること、有効性の高いシーズ(配列)のスクリーニングが他の医薬品と比較して容易であることなどから、1つのプラットフォームが完成すれば短期間のうちに新薬が誕生すると考えられている。本稿では、新たな局面を迎えている核酸医薬品の基本的性質と開発動向について概説する。
著者
清宮 啓之
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.24-31, 2006 (Released:2006-08-18)
参考文献数
25
被引用文献数
1 or 0

染色体末端におけるテロメアの短縮は, DNA損傷応答を惹起して細胞老化を誘導することから, 発がん予防の一翼を担うと考えられている. がん細胞の無限増殖性はテロメラーゼによるテロメア長の維持に依存しているため, テロメラーゼ阻害剤は新たながん分子標的治療薬となりうる. テロメラーゼのテロメア会合を促進すると考えられるタンキラーゼ1もまた, 有望なテロメア分子標的である. テロメラーゼ阻害剤の制がん効果はテロメアの短縮に依存すると考えられてきたが, 最近ではテロメア非依存的な作用メカニズムの存在も示唆されている.
著者
東田 陽博
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.310-317, 2013-09-25 (Released:2013-12-26)
参考文献数
19
被引用文献数
1 or 0

オキシトシンは脳内に放出され、扁桃体をはじめとする「社会脳」領域を介して社会性行動、特に信頼を基礎とするあらゆる人間相互間活動に影響を与える。オキシトシン遺伝子や受容体、オキシトシンの脳内分泌を制御するCD38などがそれらの機能を司る。オキシトシンの鼻腔単回投与により健常人、自閉症スペクトラム障害者ともに、目を見るなどの対人関係行動の改善や促進があり、連続投与により、社会性障害症状の改善が報告されている。オキシトシンの末梢投与により、オキシトシンは脳脊髄液中や脳内へ移行すると思われるが、まだ十分な証拠はなく、移行の分子メカニズムを含めて、今後の研究が待たれる。
著者
坪井 義晃 澤田 雅人 大塚 隆信 澤本 和延
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.46-49, 2017-01-25 (Released:2017-04-25)
参考文献数
24

体内に存在する組織幹細胞の研究が進み、それを用いた再生医療の開発が期待されている。内在性幹細胞を利用することができれば低コストで安全な治療が可能になると考えられるが、その実現のためには再生能力を促進する技術が必要である。内在性幹細胞の分化・誘導因子を局所に供給するドラッグデリバリー技術の有効性が種々の研究によって明らかにされ、臨床応用がなされているものもある。こうした取り組みの現状を紹介する。
著者
東岸 任弘 石井 健 堀井 俊宏
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.37-45, 2010 (Released:2010-04-28)
参考文献数
12

熱帯熱マラリアは熱帯・亜熱帯地域を中心に流行し,抜本的な対策としてマラリアワクチンの開発に期待が寄せられているが,いまだ著効を示すワクチン実用化の目処はたっていない.本稿では,世界で実施されてきたマラリアワクチン開発のレヴューとともに,筆者らが発見したマラリア原虫のアキレス腱と考えられるSERA5抗原から開発したSE36マラリアワクチン臨床開発の現状を報告する.また,最近筆者らが見いだした防御エピトープと自然免疫アジュバントの一つであるCpGを組み合わせることにより,より抗原性を改良した第二世代SE36マラリアワクチンの展望について述べる.
著者
辰巳 佐和子 金子 一郎 瀬川 博子 宮本 賢一
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.408-416, 2014-11-25 (Released:2015-02-27)
参考文献数
26

無機リン酸(以下リン)は、細胞膜構成、エネルギー代謝、酵素反応を含むさまざま生理学的機能に必須な栄養素である。血中リン濃度の維持は主に腎臓、腸管および骨が担っている。そしてリンを輸送するトランスポーターの働きによって厳密に制御されているのである。このトランスポーターの発現調節は、古典的にはリン調節ホルモンである副甲状腺ホルモン(PTH)、1,25-dihydroxyvitamin D3によって知られてきた。近年、最初に同定されたフォスファトニンであるfibroblast growth factor 23(FGF23)のリン利尿作用についての研究が飛躍的に進んだ。FGF23は骨細胞から分泌され遠隔臓器である腎臓に作用しリン排泄を制御することから、リン代謝における骨腎連関が重要であることが認識された。本稿では多臓器にわたる生体内リン恒常性維持機構について最近の知見を加えて概説する。
著者
和田 和洋 森下 竜一
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.579-589, 2010 (Released:2011-02-25)
参考文献数
37

近年,核酸医薬品が次世代の分子標的薬として注目され,様々な疾患の分子レベルでの機構解明を目的とした研究に基づき,その有効性が検証され臨床応用への期待が高まっている.DDSを適用し,目的とする臓器・組織へ送達,標的分子に作用させることにより,治療できる対象疾患が拡大されうるが,核酸医薬品の開発には,安全性および品質の確保という観点で,低分子化学合成品にはない留意点があり克服しなければならない.本稿では,NFκBデコイオリゴヌクレオチドの開発を中心に,核酸医薬品の開発上の課題とDDS技術適用の試みを紹介する.
著者
菊池 寛
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.51-63, 2014-01-25 (Released:2014-05-29)
参考文献数
47
被引用文献数
1 or 0

さまざまなDDS(Drug Delivery System)技術が存在し、実際にすでに多くのDDS医薬品が世界で上市され、医療に貢献している。DDS技術は創薬の重要なツールの1つとしての地位を確立したといっても過言ではないし、新薬をなかなか創出しにくくなった昨今では、その重要性がますます高まっている。それぞれのDDSはその特徴に基づいて、長所とともに限界も持っている。DDS医薬品開発を効率的・効果的に進めるためには、各DDS技術の特徴を十分に理解することが重要である。
著者
牧野 公子 Mack Eric. J. 岡野 光夫 Kim Sung. Wan.
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.191-195, 1992

Hydrophilic nylon microcapsules containing concanavalin A and succinyl-amidophenyl-glucopyranoside insulin (SAPG-insulin), whose average diameter was 70 <I>γ</I>m were prepared to achieve a self-regulating insulin delivery system. The microcapsules were enclosed in polymer membranes for <I>in vitro</I> assessment and the release of SAPG-insulin was evaluated under a flow condition of glucose solution. The amount and the rate of SAPG-insulin released from this pouch were dependent upon the external glucose concentration around the pouch. Also, SAPG-insulin was quickly released from a pouch in response to the change of the external glucose concentration. In addition, to optimize this self regulating insulin delivery system, we studied the kinetics of solute permeation through a membrane separating two compartments : donor and receiver under the condition that the receiver compartment was continuously eluted.
著者
井上 智彰 八杉 健司
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.622-627, 2011-11-30 (Released:2012-02-29)
参考文献数
27

バイオ医薬品では,薬理作用に種特異性が高い場合が多く,安全性評価には薬理作用が認められる動物種を用いることが望まれる.毒性の特徴として,医薬品自体に対する免疫反応の誘導,抗体医薬の一部に認められるサイトカイン放出などがあり,ヒト細胞を用いたin vitro評価法などが検討されている.DDSによるバイオ医薬品の毒性への影響の例として,PEG化による免疫原性の改善,PEG化リポソームにおけるABC現象,徐放性製剤における皮膚刺激性について解説する.
著者
江藤 浩之 中内 啓光
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.553-559, 2008 (Released:2008-12-18)
参考文献数
15

さまざまな出血性疾患や易出血病態において,血小板輸血が唯一の有効な治療法である.しかしながら,血小板は冷蔵保存ができず供給不足状態にある.また,献血者由来血液製剤を介した感染症は近年増加傾向にある.代わって献血者ドナーに頼らない輸血用血液のソースとして,無限に試験管内で増殖可能であるヒト胚性幹細胞(ES細胞)が提唱されている.筆者らはヒトES細胞からの血小板産生培養法を開発した.近年,樹立された誘導性多能性幹(iPS)細胞はES細胞同様の特性を持つため,患者由来iPS細胞からの輸血製剤産生も実現することが期待される.
著者
中島 進 阪田 功 竹村 健
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.105-110, 1996-03-10 (Released:2009-02-23)
参考文献数
14
被引用文献数
3 or 0

One of the “dreams” of cancer treatment is missile therapy targeted specifically to cancer tissues. At first, monoclonal antibodies were expected to play primary roles in this therapy and were studied globally at a number of institutions. However, the practical use of monoclonal antibodies is hampered by their poor accumulation in tumor tissues and side effects such as the human antigen-murine antibody reaction (HAMA) phenomenon. Porphyrin derivatives are low-molecular-weight agents that accumulate in tumor tissues and have recently attracted much attention as possible substitutes for monoclonal antibodies We have synthesized about 750 porphyrin-related derivatives since 1980, when we first became interested in the tumor tissue accumulating property of porphyrins, and have studied them in many respects. The mechanisms of tumor tissue accumulation of porphyrins as we speculate at present are followings ; Important factors are the strong affinity of porphyrins to proteins because of their high π electron contents and the amphipathicity to water and oil due to the stacking phenomenon. As for the tumor tissue, active endocytosis associated with enhancement of LDL and transferrin receptor activities and the immaturity or lack of lymphatic tissues in tumor are important factors. The increased permeability of tumor vessels, which has been discussed for years, is also considered to be a factor in tumor tissue accumulation of porphyrins. In this issue, recent knowledge about the mechanism of accumulation of porphyrins in the tumor tissues and the prospects of their application to the diagnosis and treatment of cancer are discussed.
著者
高橋 元次
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.433-441, 2007 (Released:2007-10-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1 or 0

皮膚の生理学的性質を非侵襲的に測定する方法は皮膚計測工学の分野において数多く開発されてきた.それらは角層水分量,肌理,TEWL(経表皮水分蒸散量),皮膚色,血流,皮脂などであるが,最近,無侵襲で皮膚内部を観察する生体顕微鏡が開発され,物質の経皮吸収測定に活用されている.本稿では,in vivo共焦点ラマン顕微鏡と多光子顕微鏡を用いた測定例について述べる.
著者
谷本 武史
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.15-21, 2010 (Released:2010-04-28)
参考文献数
18

従来のインフルエンザワクチンの接種経路は皮下・筋肉内のいずれかであり,その接種目的は,血清に液性免疫を誘導することによる重症化の予防に重点を置いたものである.これに対して感染防御を念頭に置いた場合,インフルエンザの感染経路は粘膜であることから,粘膜に免疫を誘導する手段として,経鼻・経口などのルートで粘膜へワクチンを接種し,局所免疫系を刺激することが有望と考えられる.そのなかでも,抗原の変性のリスクが少なく,接種抗原量を少なくできる経鼻吸収型ワクチンが注目されている.
著者
長田 篤史
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.143-148, 2017-03-25 (Released:2017-06-25)
参考文献数
11

薬品開発におけるDrug Delivery System(DDS)の活用は以前から行われており、すでにさまざまな疾患領域で多様なDDS製剤が開発・上市されてきた。オンコロジー領域では、これまでに3剤のAntibody-Drug Conjugate(ADC)が上市され、現在、多くの新規ADCが臨床試験中である。そのほかにも最新のテクノロジーを活用した新たなDDS技術を応用した医薬品が世界中で研究・開発されており、DDS製剤の開発競争は今後も続くであろう。筆者の所属するナノキャリア株式会社ではミセル化ナノ粒子技術を応用した抗がん薬を研究・開発しており、3つの化合物が臨床フェーズに移行している。本稿では筆者のナノキャリア株式会社における臨床開発経験から、新規ミセル製剤の臨床開発における特徴について概説する。
著者
夏井 謙介
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.229-234, 2016-07-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
6

シダトレン®は日本初の舌下免疫療法薬であり、日本の国民病ともいえるスギ花粉症に対して、長期寛解または根治が期待できるアレルゲン免疫療法(Allergen Immunotherapy:AIT)薬として2014年に承認を取得した。本剤の特徴は、舌下投与という用法や、アレルギー性の副作用発現の低減を目的として実施される増量期の設定などがあげられる。また、アレルゲンエキスの安定性を保持するための容器材質の選定や、増量期を含めた投与プロトコールを簡便に実施するための容器形状にも特徴がある。一般的にAITは、3~5年間の治療期間が推奨されるが、より多くのスギ花粉症患者がシダトレン®による治療を選択し、根治へ向かう患者が増えることを期待している。
著者
山西 弘一
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.151-158, 2008 (Released:2008-06-18)
参考文献数
20

新型インフルエンザなどの新興感染症の出現が危惧されている現在,新たなコンセプトに基づくワクチンの開発が要望される.従来のワクチンは小児を対象としたものが主であったが,最近では思春期を対象としたパピローマに対するワクチンや,成人や高齢者を対象とした帯状疱疹ワクチンも開発されてきた.今後は遺伝子組換えワクチン,DNAワクチン,ポリペプチドワクチンの開発とともに,投与法の改良として粘膜ワクチン,免疫をより効果のよいものにし,副反応の少ないアジュバントの開発が急がれる.