著者
春日 範樹 小川 祐二 本多 靖 谷口 礼央 酒井 英嗣 今城 健人 日比谷 孝志 米田 正人 桐越 博之 大橋 健一 中島 淳 斉藤 聡
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.504-512, 2020-10-01 (Released:2020-10-08)
参考文献数
16

症例は45歳女性.急性骨髄性白血病に対して同種骨髄移植が行われ,移植後はタクロリムス,ステロイドによる免疫抑制療法を18カ月継続した.移植前はHBV既往感染の状態であったが,移植から38カ月後に肝機能障害,HBs抗原陽転化,HBV-DNA量上昇を認め,HBV再活性化と診断した.同種骨髄移植前後に赤血球濃厚液の頻回の輸血によりヘモクロマトーシスを合併していた影響もあり,血清フェリチン値は著明高値であった.肝生検では過剰な鉄沈着と急性肝炎の所見を認めた.ラミブジンにより治療を開始し,その後テノホビルアラフェナミドへ切り替えた.HBV再活性化とヘモクロマトーシスの関連性は不明であったが,HBV治療と鉄キレート剤により血清フェリチン値も漸減した.HBV既往感染状態での同種骨髄移植では,長期間にわたりHBV再活性化への注意が必要である.
著者
谷口 礼央 永井 康貴 千田 彰彦 鈴木 洸 髙橋 宏太 川村 允力 田村 哲哉 友成 悠邦 後藤 駿吾 岩崎 暁人 武内 悠里子 斯波 忠彦 厚川 和裕
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.470-477, 2020-09-01 (Released:2020-09-09)
参考文献数
15

症例は58歳男性.黄疸,肝機能障害,腹痛にて近医より紹介受診.採血では,黄疸,肝機能障害,好酸球の増多を伴う白血球上昇を認めた.CTでは,肝臓両葉に多発する不整形の低吸収域,十二指腸球部の浮腫性の肥厚を認めた.上部消化管内視鏡では,球部にびらんや粘膜炎症所見を認めた.内視鏡による生検,肝低吸収域の生検を実施したところ,双方共に悪性所見はなく,著明な好酸球の浸潤を認めた.好酸球性胃腸炎診断基準(腹痛等の症状,内視鏡生検での好酸球浸潤,末梢血中の好酸球増多,等)を満たし,同症と診断した.肝低吸収域もこれに伴う好酸球性の炎症性腫瘤と診断した.ステロイドによる治療を開始したところ,開始数日で採血,画像所見の改善を認めた.その後,ステロイド漸減を進め,現在は,プレドニゾロン5 mg/日にて外来管理を続けている.発症2年を経て,再発は一度もなく,内視鏡・CTなどの画像所見も正常化している.
著者
岸 岳宏 塩野 康裕 佐伯 桂 谷口 礼 森川 和政 牧 憲司
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.458-466, 2017-11-25 (Released:2018-11-25)
参考文献数
34

咬合誘導や矯正治療の領域において,口腔周囲の軟組織の客観的な評価方法については一般的な手法として普及している評価方法は確立されていない。そこで我々は客観的評価の確立や臨床病態把握への応用を目的として,正常咬合児と上顎前突児の口唇閉鎖力について多方位的に測定を行った。あわせて舌圧にも着目し比較検討を行った。また,齲蝕の罹患状況とアンケート調査による患児の日常的な口唇閉鎖習慣状況についても評価を行った。調査の対象は九州歯科大学付属病院を受診した8 歳から11 歳までの小児期の患者から正常咬合者15 名,上顎前突者15 名とした。多方位口唇閉鎖測定装置の結果から,正常咬合児の方が総合的な口唇閉鎖力が上顎前突児に比較して有意に大きいことが分かった。両群間に多方位的な口唇閉鎖力の有意な差は認められなかった。舌圧の測定からも両群間に有意な差は認められなかった。舌圧と口唇閉鎖総合力の相関についても相関関係を認められなかった。齲蝕の罹患状況については正常咬合児と上顎前突児に有意差を認めなかった。総合口唇閉鎖力と齲蝕の罹患状況の相関関係は正常咬合児が相関関係を認めなかったのに対して,上顎前突児では負の相関関係が認められた。質問紙調査による口唇閉鎖習慣の評価では,上顎前突児は日常的に口が開きやすいことが分かり,アレルギー体質と上顎前突の関連は認められなかった。以上の結果から,上顎前突児の口唇閉鎖力は上口唇と下口唇の多方位的な口唇閉鎖力の不釣合いよりも,口唇全体の総合的な口唇閉鎖力の脆弱さにより関連していることが今回の研究より示唆された。また,上顎前突児は口唇閉鎖力の脆弱さが齲蝕の罹患原因の一つになっていることが示唆された。質問紙調査では上顎前突児が必ずしも鼻閉による口唇閉鎖不全を伴わない事が示唆された。