著者
結束 貴臣 今城 健人 小林 貴 本多 靖 小川 祐二 米田 正人 斉藤 聡 中島 淳
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.152, no.4, pp.187-193, 2018 (Released:2018-10-05)
参考文献数
14

肥満・メタボリックシンドロームの増加に伴い非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)はわが国に2,000万人程度と患者数が多い.NAFLDのうち1~2割が非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)へ,さらに肝硬変や肝蔵がんに至るとされておりその対策は非常に重要である.患者数は増加の一途を辿っているが,その病態は多岐にわたり有効な治療はいまだ食事・運動療法が中心である.NASHの組織像は,好中球浸潤が主体であり,その病態進展にはグラム陰性桿菌由来のエンドトキシンの関与が推察されてきた.NASH進展におけるエンドトキシンを介した腸肝連関における肝臓側の要因として肥満を呈する高レプチン血症がNASH患者のエンドトキシンに対する過剰応答は重要なファクターである.さらに腸管側の要因として腸管バリアー機能の低下による腸管透過性の亢進が問題となっており,これらによって門脈中のエンドトキシンの増加をきたす.次世代シークエンサーの登場により,NAFLD/NASHにおける腸内細菌叢が解明されつつある.腸内細菌の乱れが引き起こす腸管透過性亢進よる血中エンドトキシン上昇はNASH病態に重要であり,腸管透過性亢進の制御はNAFLD/NASH治療に新たな可能性を秘めているとわれわれは考えている.
著者
春日 範樹 小川 祐二 本多 靖 谷口 礼央 酒井 英嗣 今城 健人 日比谷 孝志 米田 正人 桐越 博之 大橋 健一 中島 淳 斉藤 聡
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.504-512, 2020-10-01 (Released:2020-10-08)
参考文献数
16

症例は45歳女性.急性骨髄性白血病に対して同種骨髄移植が行われ,移植後はタクロリムス,ステロイドによる免疫抑制療法を18カ月継続した.移植前はHBV既往感染の状態であったが,移植から38カ月後に肝機能障害,HBs抗原陽転化,HBV-DNA量上昇を認め,HBV再活性化と診断した.同種骨髄移植前後に赤血球濃厚液の頻回の輸血によりヘモクロマトーシスを合併していた影響もあり,血清フェリチン値は著明高値であった.肝生検では過剰な鉄沈着と急性肝炎の所見を認めた.ラミブジンにより治療を開始し,その後テノホビルアラフェナミドへ切り替えた.HBV再活性化とヘモクロマトーシスの関連性は不明であったが,HBV治療と鉄キレート剤により血清フェリチン値も漸減した.HBV既往感染状態での同種骨髄移植では,長期間にわたりHBV再活性化への注意が必要である.
著者
野中 敬 君塚 善文 坂口 隆 今城 健人 千葉 秀幸 岡田 和久 斯波 忠彦 厚川 和裕 高橋 久雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.1556-1562, 2009 (Released:2012-07-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は62歳女性.心窩部痛を主訴に来院し,精査加療目的で入院した.上部消化管内視鏡検査で幽門前庭部に浅い地図状の潰瘍を認め,胃体部から胃底部では特異な扁平隆起性病変が多発していた.酵素抗体法にて胃生検組織中にTreponema pallidumを証明し胃梅毒と確定診断した.本例では駆梅療法開始前に胃病変の部分的な自然緩解がみられ,第2期梅毒においては皮疹と同様,胃病変も自然緩解する事が推察された.
著者
中島 淳 本多 靖 結束 貴臣 小川 祐二 今城 健人
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.11, pp.1966-1972, 2015-11-05 (Released:2015-11-05)
参考文献数
6

腸内細菌はNASH病態の1st-hitである単純性脂肪肝において,リポ蛋白リパーゼの活性化などを介して肝臓や脂肪組織に脂肪蓄積を増加させ,脂肪肝の形成に重要な役割を果たす.また,NASH病態の2nd-hitである肝炎の病態形成では腸内細菌は,1)腸内細菌の質的量的異常,2)腸管透過性亢進,3)肝臓におけるエンドトキシン応答性亢進,の3つの機序で重要な役割を果たすと考えられている.治療においては種々のプロバイオティクス,プレバイオティクスの投与が有効であることが臨床試験で示されている.今後はNASH病態に強く関与する腸内細菌の同定と治療への応用が求められている.
著者
中島 淳 本多 靖 結束 貴臣 小川 祐二 今城 健人
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.11, pp.1966-1972, 2015

腸内細菌はNASH病態の1st-hitである単純性脂肪肝において,リポ蛋白リパーゼの活性化などを介して肝臓や脂肪組織に脂肪蓄積を増加させ,脂肪肝の形成に重要な役割を果たす.また,NASH病態の2nd-hitである肝炎の病態形成では腸内細菌は,1)腸内細菌の質的量的異常,2)腸管透過性亢進,3)肝臓におけるエンドトキシン応答性亢進,の3つの機序で重要な役割を果たすと考えられている.治療においては種々のプロバイオティクス,プレバイオティクスの投与が有効であることが臨床試験で示されている.今後はNASH病態に強く関与する腸内細菌の同定と治療への応用が求められている.