著者
谷川 孝弘 松井 洋 小林 泰生
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.495-501, 2009 (Released:2009-10-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

夏秋ギク‘精雲’の開花期の遅延と貫生花を発生させる温度要因を明らかにし,計画的出荷および貫生花発生率の減少対策を確立するため,昼/夜温および高温に遭遇する花芽発達時期が開花と開花時の形質に及ぼす影響について検討した.夏秋ギク‘精雲’の発根苗を栽培箱に定植し,温室内で暗期中断を行って花芽分化を抑制した.6月18日に電照を打ち切り,翌日から栽培箱をファイトトロンに移し,昼(6:00~18:00)/夜温(18:00~6:00)をそれぞれ替えて6区設定し,自然日長下で栽培した.また,短日下で2週間の高温処理を(35/25℃),①電照打切り直後から,②電照打切り2週間後から,③電照打切り4週間後から,および④電照打切り6週間後からの4処理区を設けた.頭花内の総苞片数が25枚以上ある株を貫生花として算出した.その結果,‘精雲’の開花は昼温30℃以上または夜温20℃以上になると遅延するようになり,貫生花は,短日処理開始2週間後から2週間,昼温35℃以上または夜温25℃以上の高温に遭遇すると発生することが明らかとなった.貫生花発生の防止対策として,電照打切り直後から3週間,遮光率50%のダイオネットを用いて遮光することにより貫生花発生率を減少させることができた.
著者
山田 明日香 谷川 孝弘 巣山 拓郎 松野 孝敏 國武 利浩
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.296-303, 2008
被引用文献数
5

トルコギキョウの初秋出し栽培における切り花品質の向上を目的として,4 種類の赤色光(R; 660 ± 30 nm):遠赤色光(FR; 730 ± 30 nm)比の高い光源を用いた長日処理について検討した.赤色蛍光灯,カラー蛍光灯(R-type),電球型赤色蛍光灯および電球型昼光色蛍光灯の R:FR 比はそれぞれ 62.0,100.0,8.8 および 8.5 であった.'ダブルピンク'の苗を 7 月 11 日に定植し,定植直後から発蕾まで上記の光源を用いて暗期中断を行った.その結果,平均発蕾日は無処理の 8 月 11 日と比較して光源の種類により 2~5 日間遅れた.いずれの光源を用いた暗期中断も,無処理と比較して開花時の主茎の節数,側枝数および花蕾数が増加し,切り花長が長くなった.カラー蛍光灯(R-type)および電球型赤色蛍光灯を用い,トルコギキョウの 3 品種に対して暗期中断を行った.'キングオブスノー'の暗期中断区での平均開花日は無処理と同じであったが,'ダブルピンク'および'ピッコローサスノー'の平均開花日は,カラー蛍光灯(R-type)または電球型赤色蛍光灯で無処理よりも 3~6 日間遅れた.さらに,これらの光源により 3 品種とも無処理と比較して主茎の節数が増加し,茎長および切り花長が長くなった.'ダブルピンク'を供試し,実用上最も使用しやすい電球型赤色蛍光灯を用いた長日処理を日の出前 6 時間,日没後 6 時間,暗期中断 6 時間および終夜電照で行い,併せて無処理区を設けた.平均発蕾日と平均開花日は,すべての処理の中で終夜電照により最も遅れた.しかし切り花長は,日の出前電照により他の処理よりも長くなった.以上の結果から,定植直後から主茎の発蕾まで,電球型赤色蛍光灯を用いた午前 0:00 から明け方 6:00 までの長日処理により,初秋期出し栽培での切り花品質を向上させることができる.<br>
著者
山田 明日香 谷川 孝弘 巣山 拓郎 松野 孝敏 國武 利浩
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.407-412, 2008-07-15
参考文献数
15

トルコギキョウの冬春出し栽培における白熱灯を用いた効果的な長日処理方法について検討した.10品種を供試し2004年10月8日にガラス温室に定植し定植から開花まで4時間の暗期中断を行い,対照として無処理区(自然日長10-12時間)を設けた.10品種の暗期中断区における第1花の平均開花日は無処理と比較して22日から49日,平均で35日早くなった.'ネイルピーチネオ'を供試し5時間の暗期中断を定植から雌蕊形成期まで,雌蕊形成期から開花まで,発蕾から開花まで,花芽分化開始期から開花まで,定植から開花までの5つの発育ステージで行った.定植から発蕾までの期間は,無処理の66日に対し暗期中断を定植から開花まで行った区では50日,定植から雌蕊形成期まで行った区では53日と大幅に短くなった.雌蕊形成期以降に暗期中断を開始した区では無処理との差が認められなかった.発蕾から開花までの期間は,暗期中断を定植から雌蕊形成期まで行った区で47日と短くなったが,そのほかの区では無処理の54日と有意な差が認められなかった.暗期中断による開花促進により,第1花までの主茎の節数が減少した.5時間の長日処理を暗期中断,日の出前電照,日没後電照の3つの時間帯で行った結果,定植から発蕾までの期間は,無処理の65日と比較して,暗期中断と日の出前定照でいずれも52日と最も短くなったが,日没後電照では58日と開花促進効果が劣った.以上の結果から,トルコギキョウの冬春出し栽培における開花促進には,白熱灯を用いた暗期中断または日の出前電照を定植直後から雌蕊形成期まで行うと効果が高いことが明らかになった.
著者
松野 孝敏 國武 利浩 谷川 孝弘
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.483-487, 2009-10-15

ヒペリカム'エクセレントフレアー'の挿し穂および鉢上げ後の苗に低温処理を行い、定植後の成長と開花に及ぼす影響を調べた。15℃で加温した鉢上げ苗は、10月15日〜3月9日までの自然低温に遭遇した苗と比較して着花節位が高くなり開花が遅れた。挿し穂を2.5、5および10℃でそれぞれ1、2、5および7週間低温処理し、その影響を調べたところ、5℃以下で5週間低温処理することで発根数が多くなった。また、最低13℃、暗期中断4時間とした温室で栽培し、開花に及ぼす影響を調べたところ、5℃で5ないし7週間の低温処理で開花までの日数が短くなった。挿し木苗を2.5、5、10および15℃で1、3、5および7週間低温処理してその影響を調べたところ、2.5℃で7週間、5℃で5もしくは7週間の低温処理で開花までの日数が短くなった。また、5℃で5週間の低温処理により開花節位が低くなった。これらの結果から、ヒペリカム'エクセレントフレアー'の挿し穂を低温処理することで発根が促進され、挿し穂または鉢上げ苗を低温処理することによって開花が早まることが明らかになった。