著者
中辻 敏朗 丹野 久 谷藤 健 梶山 努 松永 浩 三好 智明 佐藤 仁 寺見 裕 志賀 弘行
出版者
北海道農事試驗場北農會
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.440-448, 2011 (Released:2012-12-03)

地球温暖化が本道の水稲、畑作物および飼料作物の生育や収量、品質等に及ぼす影響を2030年代を対象に予測した。現在よりも高温・湿潤な2030年代の気候下では、豆類・飼料用とうもろこしの増収、秋まき小麦・ばれいしょ・牧草の減収、水稲の食味向上、てんさいの根中糖分低下、小豆の小粒化などが見込まれ、耐病害・耐障害性育種の強化、作期等の変化に応じた栽培技術の見直し、夏季の多雨への対応等が必要である。
著者
谷藤 健 金子 成延 松倉 潮
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.333-338, 2003-08-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
23
被引用文献数
6 5

小麦デンプンのアミロース合成を支配するWx遺伝子型について3通りに分類される5品種・系統,およびオーストラリア産銘柄ASWの小麦粉からデンプンとグルテンを単離し,その特性を比較するとともに,これらを再構成した粉でゆでめんを調製し,破断特性および動的粘弾性を比較した.デンプン特性では,特にアミロース含量とセットバック(SB)の差異がゆでめんのテクスチャーに影響し,アミロース含量およびSBが低いことは,ゆでめんの破断時荷重Fおよび粘弾性指標値Vを有意に高め,動的弾性率G'を減少させた.一方,グルテンインデックス(GI)の高かった材料から単離したグルテンはこれらの両方を増加させた.したがって,G'とF,またはG'とVの関係は,デンプンの置換によって負の相関(各々r=-0.85*,-0.91*,*:p<0.05),グルテンの置換によって正の相関(各々r=0.96**,0.42,**:p<0.01)を示した.アミロース含量が低いデンプンの場合,GIが高いグルテンと組み合わせることによって,高いVと中程度のG'を示すゆでめんが得られたが,GIが低いグルテンとの組合せではG'は低くなり,粘弾性も低下した.すなわち,低アミロース小麦の優れた粘弾性を発揮させるためには,低アミロースによって生ずるG'の低下を抑制しうるグルテンの共存が重要であると考えられた.
著者
谷藤 健 三好 智明 鈴木 千賀 田中 義則 加藤 淳 白井 滋久
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.74-82, 2009
被引用文献数
2

北海道内全域で栽培されたダイズのイソフラボン含量を調査したところ, 同一品種でも栽培地によって含量は変動し, 登熟期間の平均気温(以下, 登熟気温)との間に有意な負の相関が認められた. また, 同一栽培地での明らかな品種間差も確認され, 「ゆきぴりか」および「音更大袖」の含量が最も高かった. ゆきぴりかは, 各適応地帯において標準品種(トヨコマチ)比1.3~1.5倍の高含量を示す一方, 栽培地間の変動係数は年次間変動を含めても標準品種より低かった. また, ゆきぴりかの高イソフラボンは, 登熟後半におけるダイズイン類の蓄積が一般品種より顕著であることに起因しており, ダイズイン類のゲニスチン類に対する比率(D/DG率)も高まっていたが, 品種間および交雑後代系統間にイソフラボン含量とD/DG率の有意な相関は認められず, これらは, 独立した遺伝形質であると推察された. 一方, D/DG率は同一品種でも栽培地によって変動し, イソフラボン含量と同様に登熟気温と有意な負の相関が見られたことから, イソフラボン蓄積を促進する条件は, D/DG率の決定にも何らかの影響を及ぼしていると考えられた.