著者
豊川 好司 山田 和明 高安 一郎 坪松 戒三
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.572-577, 1978

しょ糖10%液浸漬稲わら,またはハスクマシンにより磨砕した稲わらを,それぞれメン羊に自由摂食させ,稲わら乾物摂取量を高めた場合の第一胃内滞留時間と消化管内充満度を測定して,稲わらの低い摂取量の原因が何であるかを明らかにしようとした.供試メン羊は前報1)の2頭に1頭をかえた3頭であるが,基礎飼料も前報1)と同一のふすまを同量与え,飼養条件も同じであった.試験区は,原料稲わらを5cm前後に細切した対照区に対し,処理区は同稲わらをしょ糖10%液浸漬したしょ糖区,および同稲わらを機械的に圧縮磨砕した磨砕区である.その結果,(1) 稲わら乾物摂取量は対照区まりもしょ糖区28%,磨砕区18%高かった.またW0.75当たり全乾物摂取量は,しょ糖区が16%,磨砕区が11%多かった.(2) ふすまを含めた全飼料の消化率は,磨砕区では粗繊維が他2区より,セルロースが対照区よりも有意(P<0.05)に高く,しょ糖はNFEが他2区より,乾物と可消化エネルギーが対照区よりも有意(P<0.05)に高かった.(3) 全飼料の消化量の差は,繊維成分の有意差は認められなかったが,しょ糖区のNFE,可消化エネルギーおよび乾物は前記同様有意差を示した.(4) 稲わらの反芻胃内滞留時間は,対照区と磨砕区とがほとんど同じ程度であったが,しょ糖区がやや長かった.(5) 全消化管内充満度は,対照区よりもしょ糖区16%,磨砕区10%高かったが有意差はなかつた.(6) 以上のように対照区の第一胃内滞留時間が磨砕区と大差ないのに,全消化管内充満度が最も低く差があることは,対照区稲わらの摂食抑制が,稲わらの反芻胃内滞留に起因しないことを示した.