著者
豊田 優
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.814, 2018 (Released:2018-08-01)
参考文献数
5

食を通じた健康改善志向が高まりをみせる今日,メディアを通じて「ケトジェニックダイエット(ケトン食)」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないだろうか.一般にケトン食とは,摂取エネルギー(カロリー)の大半を脂肪でまかなう食事法のことで,高脂肪・低タンパク質・低炭水化物を特徴とする.糖質制限に伴い体内の主要なエネルギー源である糖質が枯渇すると,その代替源を得るべく脂肪が分解(代謝)されケトン体の合成が促進(Keto- genic)される.すなわち,β-酸化で生じたアセチルCoAをもとに肝臓で生合成されたケトン体(アセト酢酸やβ-ヒドロキシ酪酸)が血液中に放出され,脳を含む肝臓以外の臓器で新たなエネルギー源として使われるようになる.現代社会で脂肪はとかく悪者扱いされがちだが,ケトン食には,減量・抗肥満のための食生活支援ツールとしてのみならず,糖尿病に代表される幾つかのヒト疾患における食事療法としての効果が期待されており,その潜在的な健康増進作用が近年注目を集めている.今回,動物実験を通じて,ケトン食の継続的な摂取が寿命と脳機能や運動機能の維持に効果があることが示されたので紹介したい.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Augustin K. et al., Lancet Neurol., 17, 84-93(2018).2) Roberts M. N. et al., Cell Metab., 26, 539-546(2017).3) Johnson S. C. et al., Nature, 493, 338-345(2013).4) Newman J. C., Verdin E., Annu. Rev. Nutr., 37, 51-76(2017).5) Dehghan M. et al., Lancet, 390, 2050-2062(2017).
著者
豊田 優 高田 龍平 松尾 洋孝 市田 公美 Blanka Stiburkova 鈴木 洋史
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-5, 2021 (Released:2021-06-04)
参考文献数
25

ATP-binding cassette transporter G2(ABCG2)は,尿酸排泄臓器において体外へ尿酸を排泄する生理的に重要な尿酸輸送体であり,痛風・高尿酸血症の主要病因遺伝子である.最近我々は,日本人のみならず,世界的に見ても高尿酸血症・痛風の発症率が高いチェコ人症例にも着目し,ABCG2変異と尿酸関連疾患との関連を検討することで,その病態生理学的重要性を明らかにしてきた.また,in vitro機能解析を通じて,ABCG2の機能低下/欠損をもたらす変異を新たに20種類以上同定することにも成功している.ABCG2が重要な薬物動態規定因子のひとつでもあることを踏まえると,本研究を通じて得られた成果は,ファーマコゲノミクスの観点からも有益であるといえる.本稿では,個別化医療や予防医学への応用が期待されているこれら一連の研究成果について,最新の知見を交えて紹介したい.