著者
加瀬 ちひろ 寺師 楓 森岡 杏月 豊田 英人 植竹 勝治
出版者
Japanese Society for Animal Behaviour and Management
雑誌
動物の行動と管理学会誌 (ISSN:24350397)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.137-145, 2021-12-25 (Released:2022-01-12)
参考文献数
19

動物園でのふれあいがテンジクネズミの行動と生理に及ぼす短期的影響を評価するため、埼玉県こども動物自然公園にて10頭を対象に調査した。調査対象個体は15:00から15:30のふれあいイベントに用いられた。コルチゾル濃度を測定するため、各個体からふれあい開始10分前、終了10分前の2回唾液を採取した。また、ふれあい後1時間の行動を3分間隔の瞬間サンプリングで評価した。ふれあい前後の唾液中コルチゾル値差には、ふれあい実施の有無による差はみられなかったが(z=−0.06, P=0.953)ふれあい持続時間と摂食には負の相関(rs=−0.29, P=0.028)が、ふれあい回数と身繕いには正の相関(rs=0.30, P=0.021)がみられた。これらの結果からふれあいは極端な生理的ストレスを与えることはないが、時間と頻度の増加により軽度のストレスと関連する行動に短期的に影響することが明らかになった。したがって、長時間のイベントでは1頭あたりのふれあい時間に制限を設けることが推奨される。
著者
豊田 英人 江口 祐輔 古谷 益朗 植竹 勝治 田中 智夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.57-65, 2012

本研究では、ハクビシン被害の対策を実施する上での基礎的知見として、捕獲ハクビシンを用いて、体型と繁殖状態について調査を実施し、それらに性差や季節性、地域差があるか否かについて検証した。調査は、埼玉県で捕獲された168頭(雄:74頭、雌:94頭)の成獣ハクビシンを対象として、体の各部位の計測値と、繁殖季節、受胎数、経産率を求めた。体サイズの測定では、冬期に捕獲した個体の体重、胸囲、腰囲が他の季節に捕獲した個体に比べ増加することが示された。繁殖季節は少なくとも1-9月と推定されたが、10-12月に関しては捕獲個体数自体が少なく、ハクビシンがこの時期に繁殖可能か否かは不明であった。受胎数は2.9±0.9で、経産率は57.4%であった。また、体型や受胎数、経産率に都市部と農村部で地域差は認められなかった。本研究の結果から、移入種といわれているハクビシンが、日本の気候に順応しており、高い繁殖能力を有し、都市部のような人の生活に密接した地域でも繁殖できる状態で生息していることが示唆された。このようなハクビシンの特性が、現在、我が国で増加しているハクビシン被害の一因となっている可能性が考えられた。