著者
西野 友紀 西川 潤 佐竹 真明 松本 俊彦 赤司 景子 木藤 朋子 中村 弘毅 沖田 極
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.69-74, 2005-06-30
被引用文献数
1

プロトポンプ阻害薬(PPI)を一定期間投与しても治癒しない潰瘍の存在が明らかになり, 注目され始めている.H_2受容体拮抗薬(H_2-RA)の静注により, 一旦止血したにもかかわらず, PPIの内服薬を開始後に再出血を来たした出血性胃潰瘍の2例を経験した.症例1では, H. pylori陽性で胃潰瘍の再発を繰り返したために胃角が著明に短縮しており, また再発性十二指腸潰瘍による幽門輪の変形も認めていた.症例2では, 幽門狭窄を来たしており, 再出血時の緊急内視鏡検査時には内服中のオメプラゾールが錠剤のまま胃内で確認された.幽門狭窄は進行性に強くなり, 最終的には胃癌の確定診断がついた.これらの2例は, 胃排出能が低下していたことにより, 胃内で長く酸性環境下に曝露されたPPIの吸収低下が起こり, 十分な胃酸分泌抑制は得られず, 再出血を来たしたと考えられた.このような胃排出能低下によるPPIの吸収不良がある場合は, H_2-RAへの変更や胃運動改善薬の併用などが効果的であり, 本2症例でもH_2-RAの内服薬へ変更したところ, コントロール良好となった.小弯の著明な短縮や幽門狭窄などで胃排出能が低下している場合, PPI内服薬の効果が十分に得られないことがあるので注意を要すると考えられた.