著者
赤壁 善彦
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.323-328, 2013-09-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
16

鮎は,“香魚,キュウリ魚”ともいわれ,体表面から発せられる独特のにおい成分により,「キュウリ様」,「スイカ様」と評価される一方で,海魚と比べ川魚特有の生臭さがあると言われている.そこで,この生臭さのイメージを解消し,より嗜好性の高い鮎の開発を目指し,柑橘果皮残渣を利用して養殖を行ったところ,誰もが柑橘の風味を知覚することのできる鮎の開発に成功し,「柑味鮎(かんみあゆ)」と命名した.また,「柑味鮎」と天然や通常の養殖鮎の試食のアンケート結果とにおい識別装置により,においに関する正の相関が確認でき,各鮎のにおいの質を明確に区別できることが分かった.この開発した「柑味鮎」はブランド化され,地元で食材として提供されているのみならず,全国展開され,贈答用商品も流通している.
著者
足立 収生 赤壁 善彦
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

タミフル製造に重要な原料であるシキミ酸の製造法において、有機合成法は不可能である。最も多用されているグルコースを初発とする発酵法には克服し難い幾多の隘路があった。2002年以来、研究代表者はこれらにブレークスルーを求めて、クロロゲン酸を高濃度に含む南米特産のマテ茶(Ilex paraguarienses )から、麹菌を固定化触媒としてキナ酸やカフェ酸を効率よく安価に大量に調製する方法の開発行った。得られたキナ酸は、既に研究代表者が確立している新規な酢酸菌触媒によって、高速・高効率にシキミ酸へ変換できる系へ連結させることができた。
著者
梶原 忠彦 川合 哲夫 赤壁 善彦 松井 健二 藤村 太一郎
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

最近"磯の香り"(マリンノート)はアメニティー機能を有する海洋系複合香として注目されている。例えば、そのタラソテラピー(海洋療法)における機能性芳香剤としての利用、あるいは水産食品への香味香付与によってみずみずしさを増強し、商品価値を高めるなど種々の用途開発がなされようとしている。ここでは高品質のマリンノートを安定供給できる最新の遺伝子組み換え技術と伝統的養殖技術を両輪とし化学合成を組み込んだ、未利用植物材料(沿岸汚染藻類、野菜クズなど)を利用する生産システムの技術開発を目指した研究に於て、次のような研究成果を得た。(1)紅藻ノリより、不飽和脂肪酸に酸素を添加しオキシリピン類(ヒドロペルオキシド)を生成する機能を有する新規のヘムタンパク質をはじめて単離することができ、このものはグリンノート生産に極めて有用であることが分かった。(2)ヤハズ属褐藻の特徴的な香気を有するディクチオプロレン、ディクチオプロレノール及びそのネオ一体の両エナンチオマーを酵素機能と合成技術を併用して、光学的に純粋に得ることに成功し、絶対立体位置と香気特性との関連を明らかにした。また、ネオ-ディクチオプロレノールから生物類似反応により、オーシャンスメルを有する光学活性ディクチオプテレンBに変換することに成功した。(3)緑藻アオサ類には、(2R)-ヒドロペルオキシ-脂肪酸を光学特異的に生成する機能を有することを実証した。また、このものはマイルドな条件下で海藻を想起する香気を有する長鎖アルデヒドに変換できることが分かった。(4)アオサ類に含まれる不飽和アルデヒド類を立体選択的に合成し、熟練したフレーバーリストにより香気評価を行った結果、これらは海洋系香料としての用途が広いことが分かった。