- 著者
-
山本 健二
浅尾 哲次
赤峰 昭文
中西 博
TETSUJI Asao
浅尾 哲治
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1997
歯周病の主要な病原性細菌Porphyromonas gingivalis(以後ジンジバリス菌)は自身の生存戦略に必須の物質として2つの主要なシステインプロテアーゼArg-gingipain(Rgp)とLys-gingipain(Kgp)を産生している。両酵素は細胞内外に存在し多様な機能を果たしている。細胞外にあっては、両酵素は歯周組織を直接したり、宿主の生体防御機構を破壊したりして歯周病原性を発現する一方、菌体にあっては自身の成長・増殖に必須のヘムやアミノ酸の獲得や菌体表層蛋白質の具プロセシング、血球凝集素活性やヘモグロビン結合活性などに強く貢献していることが明らかにされた。本研究の目的は、両酵素のこうした多様な機能の詳細な機能の解明を通じて、これらを薬物標的とした創薬研究を推進することにあった。とくに本研究では、Rgpに対する特異的な天然ならびに人工の阻害剤が探索され、それらの有効性を検定するとともに歯周病治療薬として実用化していくための具体的な方法論が検討された。天然の阻害物質としては、土壌の放線菌FA-70株の培養物中に本酵素活性を阻害する物質(FA-70C1と命名)を同定・単離し、構造を決定した。本物質は構造式C_<27>H_<43>N_9O_7で表され、分子量606の新規物質であった。またヒト唾液中にRgpを阻害する物質としてヒスタチンが同定された。ヒスタチンを含む宿主蛋白質のRgpによるペプチド結合の切断特異性に基づいて10種類以上のオリゴペプチドが合成され、その中から、Rgpを強く阻害するトリペプチド化合物(KYT-1と命名)を見出した。FA-70C1およびKYT-1はともにRgp活性を10^<-8>Mで80%以上阻害するのに対し、宿主のシステインプロテアーゼのカテプシンB、L、K、Sは同じ濃度で50%以下の阻害しか示さなかった。また、両阻害剤はRgpがもつコラーゲン分解能や免疫グロブリン分解能を強く阻害した。